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おまけその1
冷香「貴方は私達をガキ、ガキ、と呼ぶけれど、もしかすると案外年が近い可能性もあるんじゃないかしら」
バアル「年が近かったら何なんだよ。俺が何歳でも、てめえらがガキである事には変わりねえだろうがよ」
優香(それは……そうなんですが……)
冷香「ワターシ13サーイ。ハウ・オールド・ア~ユ~?」
バアル「四捨五入して250だバーカ」
冷香「ふっ。オイラの負けだぜ~!」
摩莉「完全に返り討ちじゃん。………にゃひゃくぅ!?」
優香(え!? 人間とパートナーデジモンって、同時に生まれるって話だったような)
ドゥル「デジタルワールドと現実世界の時間の流れが異なるから起きる現象だな。ちなみに私の方がバアルモンより少し若い」
バアル「一言余計なんだよ! それなら年長者の俺に従えよ!」
優香(え!? 私と冷ちゃんは三つ子だからほぼ同時に生まれてる筈なのに、年齢差が!?)
摩莉「200歳って、人間からしたらジジイ通り越して化石じゃん!!」
バアル&ドゥル「「種族的には若い方ですぅ~!!ジジイじゃありませ~ん!!」」
冷香「彼らの年齢を弄るよりむしろ、私達はデジモン的に赤ちゃんである事をアピールすべきではないかしら。おぎゃばぶ!赤ちゃんなので優しくしてほしいばぶ!」
バアル&ドゥル「「や、13歳は普通に子ども」」
優香(デジモン、わかんねぇ……)
フレイヤ「ねえねえ! わたしって何才なのかなあ?」
摩莉「それは……会ったばかりで聞かれてもちょっと分かんないかな……」
その2
摩莉「デジモンってデジタルモンスターなのに、言うほどデジタル感無くない?」
優香(誰もが思ってても言わなかった事を……)
ドゥル「ふむ。例えばだな、君達の世界にはテレビゲームがあるだろう」
優香(逆にテレビゲーム知ってるんだ……)
ドゥル「その中にはファンタジー世界が舞台のRPGもあるだろう?」
冷香「ドラ◯エとかフ◯イナルフ◯ンタジーね」
優香(せっかく伏せてくれてたのに言っちゃった……)
ドゥル「その世界の中に『デジタル感』はあるかな?」
摩莉「無いけど……」
冷香「でもファ◯ナルファン◯ジーってわりとSF感あるわよね」
優香(ああ、今ので脱線した……)
バアル「要はデジタル技術を使ってファンタジー世界を再現したのがデジタルワールドって話だろ!」
優香(ちゃんとまとめてくれた……流石だ……)
おまけその3 ボツにしてしまったけど非公開にするのは惜しい会話
「てめえもガキの自己満足に付き合わされて災難だな。マミーモンなら使える死霊の数が多い方がいいだろ?」
「俺はいいんだ。愛した女の命を守るのに、死霊任せにしちゃいられねえ」
「はっ!カッコつけ! あたしは生き残るためならコドクグモンだって何だって利用するけどね」
○ここからあとがき
馬鹿長え!!(大反省)
はい……書き直すにあたり、キャラクター性の強調や後々重要になる要素の追加など色々盛り込んでいたら、書き直し前に比べてこんなに長くなってしまいました……。
6話からは1万字前後に戻せるよう頑張ります……。
ちなみに今までの話含めて書き直す前のバージョンはここから読めます。高校生羽化石の全力がここにあるぞ!!
という訳でトラウォリメイク版も遂に5話。
アニメ要素リスペクト要素をいっぺんにノルマクリアしようという画期的な回でしたね!! こっちのマミーモンとアルケニモンは無事にゴールインできるのでしょうか!!!??? レオモンは生きて帰れるのか! これはネタバレなんですがレオモンは生きて帰してもらえたらしいですよ。良かったね。
もちろん、トラウォ的に重要な要素も盛り沢山!
・冷香ちゃんは不殺主義
・冷香ちゃんはスーパードライビンッ゙テクニックの持ち主
・バアルモンは大卒
あれ、あんなに書いたのに箇条書きすると少ないな……まあ良いでしょう。小説は情報伝達のコスパなんか考えてたら書けませんからね。
大卒も大事な要素なんですよ。真面目に。
極めつけはそう!ラストに登場した彼ら!! 突然デジタルワールドに現れた彼らは一体何者なんでしょうか!? 今後のトラウォの展開に乞うご期待!
読んだ瞬間「あいつらじゃねえか!!」と思った方もいらっしゃるかと思います。実は書き直し前からずっと彼らだったんですね!
ちょっとぼかしすぎて誰か分かんなくなっちゃっただけです。
書き直し版トラウォは手紙屋チームも最初からクライマックスだ!!
……といった具合に書き直し版が盛り上がって来たところではございますが、次は数年間止まっているガチ最新話の22話に手をつけたいと考えています。
ガチ最新話ってなんだよ! とお思いの方向けに解説いたしますと、実はスクルドターミナルでの連載は加筆修整を加えた上でのリバイバル連載となっております。
トライアングルウォーの総本山である我が個人サイトでは、更に先までお話が進んでいるというわけです。
流石に書き直しばかり優先していると本編が永遠に進まないため、ここらでバシっと最新話を更新したいという訳ですね(そもそもいちいち書き直してたらドツボにハマるぞと言われると、あまりにもその通りです……)
最新話を書き直したら、必ずこちらに戻って参りますので、どうかお待ちいただければ幸いです……ごめんね……。
デジモンの進化段階は戦闘力へ如実に影響する。
ユニモンは成熟期であるのに対し、こちらの戦闘要員は全員完全体。不殺のハンデがあるとは言え、ユニモン達を全員無力化するのにそう時間はかからなかった。
後ろから追いかけて来る者が誰もいない事を確認すると、冷香は高らかに勝利を宣言する。
「いぇーい・いぇーい・大勝利~。Foo~!」
勝利の喜びを得てなおポーカーフェイスで喜ぶ冷香。ハイテンションな声と表情が合っていないので、少し怖い。
「てめえが余計な指図してなきゃもっと早く終わってたんだよ!」
そんな彼女をバアルモンが恨み節たっぷりで怒鳴りつける。
「すごーい! みんなで力を合わせたからだね!」
「うむ。殺し合いを目的としない闘いもたまにはいいものだ」
マタドゥルモンはトランクから後部座席側に身を乗り出して、フレイヤと顔を合わせる(そのせいでフレイヤを膝に抱いている摩莉とマタドゥルモンが急接近し、摩莉は嫌な気持ちになった)。
そして二人で「ねー」と声を合わせて意気投合する。
バアルモンはぐるんと首を曲げて、今度は隣にいるマタドゥルモンに向かって怒鳴りつけた。忙しい奴である。
「てめえらは何もしてねえだろうが! 特にブラックテイルモン!」
「『サウザンドアロー』は峰打ちに向いていないのだから仕方がないではないか。それに、ブラックテイルモンは飛び道具を持っていない」
マタドゥルモンとフレイヤは再び「ねー」と言い合い、バアルモンを更に苛立たせた。
間に挟まれている摩莉としては、居心地が悪い事この上ない。
(フレイヤ巻き込まないで二人だけでケンカしてくんないかな)
一方、一仕事終えたマミーモンは屋根から車内へ戻っていた。ただし、運転は引き続きアルケニモンが行っている。
「ったく、とんだ遠回りをさせられちまったよ。……調査によると、このまま進めば天使どもの基地に辿り着くらしい」
あてどなく森を彷徨っていた頃に比べると、なんて至れり尽くせりなのだろう。
少女たちの中で、まだ会ってもいない魔王・デーモンの評価がうなぎ登りだ。
「あたしらの目的地は別の場所だけど、分かれ道までは送ってやるよ。また面倒なのに見つかる前に、一気に突っ切――」
突然、アルケニモンが言葉を途中で切った。
彼女の言葉を遮ったものは何か。答えは少し遅れて少女達も耳にする。
優れた身体能力をもっとデジモン達は、いち早く音の波を捉える。
次に人間の少女達も、遅れて音を耳にする。
「なんか今、汽笛の音聞こえなかった?」
汽笛なんて、聞こえる筈がない。だってここは、一本道の道路以外は一面の草原が広がっているのだから。
線路なんて、どこにも走っていないのだから。
それなのに――汽笛を鳴らす汽車がどこまでも追いかけてくるなんて、おかしい。
バアルモンもマミーモンも、マタドゥルモンもこの状況を前に絶句しているという事は、これはデジタルワールドにおいても有り得ない状況なのだろう。
蒸気が噴き出す音。機構が擦れて発生する金属音。そして――本来は線路の上しか走らない筈の車輪が、ガリガリと地面を削る音。
線路の無い地面を走る黒鉄の機関車が、第二の追っ手として姿を現した。
「なんだお前!?」
マミーモン達は驚愕の眼差しを向けつつ、機関車が何者なのかを問う。
そう、何者かと聞いた。機関車の正面には人間のように二つの目があり、生命体であると推察できる。
名を問われて機関車はどこにあるか分からない口から名乗りを上げる。
「我が名はロコモン!」
「見りゃ分かんだよロコモンがなんで地面を走ってんだって聞いてんだ!」
機関車の姿をしたデジモンは「ロコモン」といって、割とポピュラーな存在である事。
そして、彼らは本来線路の上しか走れない事が今の会話から分かった。「デジモンの『有り得る』と『有り得ない』の境目が分かんなくなってきた」
摩莉がこっそりぼやく。
人間にとっては、そもそも「機関車の形をした生き物」の時点で有り得ないのである。
そうこうしている間に、デジモン達はロコモンに向かって激しくブーイングしていた。
レオモンに道を塞がれた時と全く同じ展開だ。
「ロコモンの癖に地面を走ってんじゃねえよ! 線路を走れ線路を! 地面めっちゃ削れてんじゃねえか!」
一際大きな声はバアルモンのものである。
「ロコモンが線路しか走れない時代はもう終わったのである。――いや、吾輩が終わらせたのである!」
列車が走るとただでさえ大きな音が出るが、地面をゴリゴリと削りながら走るロコモンが出す音はその比ではない。
ロコモン自身にもその自覚があるようで、相手に声が届くよう声を張り上げて身の上を語り始める。
「苦節三十五年。遂に線路の無い地面を走る技術を手に入れた吾輩は、荷運び“以外”で世界平和に貢献する道を走り出したのである! 始まりはそう、あの頃。今は遠き故郷・アカソックタウンを飛び出し客が多い都会を目指した吾輩――」
「イカれてんのか?」
「具体的な年数出すなよ何とも言えねえ気持ちになるだろ」
「上手い事言ったつもりのドヤ顔してるんじゃないよ!」
「グランドロコモンに進化したら特に何の意味もない特技になるが?」
口々に飛び出す罵詈雑言。打ち合わせも無しに一人一人が別内容の暴言を流れるように紡いでいく。嫌な職人技だ。
「みんな口が悪すぎる!」
流石に看過できなくなった摩莉は抗議した。
ロコモンは別に、そこまで気に障るような事は言ってないだろう。しゃらくさいとは思うが。
「その世界平和とは、貴様らダークエリアの侵略者を討ち倒す事で果たされるのである! 我が同胞、レオモンとユニモン達の仇討ちである!」
ロコモンの側面を構成するパーツの一部が「ガコン」と外れ、持ち上がる。
ネジ状の保持パーツ、或いは何らかの口を塞ぐ蓋のように見えていたパーツは、実際のところ見たまま円盤状のパーツであり更に変形してトゲ状の形態に移行する。
「ホイーーール! グラインダー!!」
トゲはドリルのように回転し、車に向かってミサイルのように発射された。
車に当たればひとたまりもないだろう。
「どれ、私が蹴り飛ば――」
「カミウチ!」
マタドゥルモンが前に出るより速く、バアルモンが鞭を振るう。
ユニモンに放とうとして冷香に止められた攻撃の正体は、鞭から放たれる電撃だった。
一瞬の閃光が目を貫いたかと思うと、電撃は天から落ちる稲妻のようにドカンと大きな音を立ててドリルに直撃。
黒く焦げたドリルはごろりと地面に転がり、地面に置き去りにされたまま景色ごと遠ざかっていく。
至近距離で雷が落ち、驚いた摩莉の心臓は太鼓よりも激しく鼓動した。よく見るとフレイヤも全身の毛を逆立てている。
「やっぱ天使が相手じゃねえと効き目悪いな」
当のバアルモンは鞭をゆらゆらと振りながら、雷の威力に不満を述べていた。
ロコモンは変わらず走り続けている。あのドリルはあくまで攻撃用のオプションパーツであり、失われたところで走行に支障は無いようだ。
それでもロコモンは、感心したようにこう言った。
「ホイールグラインダーを撃ち落とす威力の雷であるか。中々のものであ――」
「バアルモン貴様、私の見せ場を邪魔したな?」
マタドゥルモンはロコモンの言葉を無視してバアルモンに抗議する。どう考えてもそんな事している場合ではない。
「そうだな、俺もミスったと思ったぜ。ほっときゃ腐れ吸血鬼が棘の餌食になってたのによ」
「私が競り負ける事前提で話を進めるでない」
「吾輩のセリフ遮ってまで喧嘩するのやめてくれないであるか?」
ロコモンにまで言われていたら世話はない。
バアルモンとマタドゥルモンはさておき、状況が悪化しつつあるのは、戦慣れしていない少女達の目にも明らかだった。
ユニモンが相手ならば拘束もできたが、ロコモンの大きく重い車体は、札や包帯では止められない。鉄の車体は銃弾も無数のレイピアも通さないだろう。蹴り技の蝶絶喇叭蹴は論外。何の面白みもなくマタドゥルモンが轢かれて終わるだけだ。
強いて言えば、バアルモンの電撃『カミウチ』が有効打になり得るかもしれない。だが、「かもしれない」以上の期待はできない。
(不正改造で)ボロボロの車はロコモンを振り切れるほどのスピードはもう出せない。
「ったく、よりによってロコモンに追いかけられるなんて面倒ったらありゃしない」
アルケニモンがストレスのためか頭を掻きむしる。ひとしきり「うー」と唸ってから、彼女は何かを決意したように上を向く。
「ああもう! あたしが出る!」
アルケニモンが決意表明すると同時に、彼女の身体から「みしり」と音がした。人間の少女達が口を出す間も無く、アルケニモンの身体に異変が起こる。
彼女のタイトなドレスがおよそ人体からかけ離れた形に膨れ上がったかと思うと、布を突き破って六本の棒が――蜘蛛の脚が、姿を現す。アルケニモンの服と同じ、目が覚めるような赤い脚だ。
脚が生えている胴は丸く膨れ上がり、破れたスカートを押しのけ、短い毛の生えた蟲の腹を晒す。
口はいつの間にか顔の端まで裂け、頭には牛のように曲がった二本の角を生やし、アルケニモンは人頭と蜘蛛の脚を組み合わせた怪物と化した。
「アルケニーってそっち!?」
大人しい優香が珍しく声を張り上げた。摩莉はアルケニモンが変身した事自体に驚きの声を上げようとしたのだが、興味が一気に優香の叫びに持っていかれてしまう。
そっちって何。「アルケニー」にあっちとそっちがあるのか。ってかアルケニーってなに?
一人で納得している優香は何も教えてはくれず、摩莉の疑問は消化不良に終わる。
アルケニモンは脚をカサカサと動かしてするりと車の天井に登った。見かけのみならず、身体機能もしっかり蜘蛛のものに変化しているようだ。
「ま、待ってくれよアルケニモン!」
「うそぉマミーモンも行くの!?」
一度は車内に戻ったマミーモンも、何故かアルケニモンを追いかけて屋根の上に登ってしまった。
「ちょっとぉ!? 誰が運転するの!?」
血相を変えて摩莉は叫んだ。
屋根の上からアルケニモンが顔を覗かせて、車内の少女達に呼びかける。
「嬢ちゃん達! あたしの代わりに誰か運転してくんな!」
「無理!」
摩莉は即答した。当然だ。まだ免許を取れる年齢にすらなっていないのに、人の命がかかった場面で運転などできない。
流石に彼女らに運転を任せる訳にはいかないと判断して、バアルモンがアルケニモンに進言する。
「ガキに運転させるくらいなら俺が運転する!」
「駄目だ! バアルモンが戦前から外れたら、ロコモンの攻撃を防御する手段がなくなっちまう!」
しかし、マミーモンはその進言を却下する。同様の理由でマタドゥルモンも運転はさせられない。
「案ずるな。私は元から運転経験が無い」
何が案ずるなだ。
事実、ロコモンは二発目、三発目と自身に備え付けられた「ホイールグラインダー」を発射し続けており、バアルモンとマタドゥルモンはその対処に集中せざるを得なかった。
「ほいほい、私が運転するわ」
摩莉の横からお手本のような二つ返事。言うまでもなく、冷香の声だ。
彼女は前の座席に向かって身を乗り出し、当たり前のように運転席に座り、当たり前のようにハンドルを握る。
摩莉は状況を理解するのに、3秒ほど時間を要した。
「ヒアウィーゴー!」
「待てーい!」
アクセルを全力で踏もうとした冷香をギリギリで制止する。
「もしかして冷香……外国で運転免許を取ってたりとか、秘密の運転練習とかしてたりする?」
「おおよそ日本国の常識と照らし合わせて判断してくれていいわ」
「つまりフツーに無免許って事!?」
隣の優香が青ざめた顔でゆっくり頷いた。
「やめろー!!!」
摩莉は恐怖のあまり絶叫する。
「大丈夫よ。別に難しい道を通る訳じゃないもの。このだだっ広くて何もない草原で、ロコモンに捕まらないように適当にハンドル切っとけばいいんだから」
バアルモンの詰めにも動じない冷香が、摩莉が叫んだ程度で止まる訳がないと言われればその通りだ。
「それに、ほら。私たちの苗字『風峰』ってなんかこう……猛スピードで峠を攻めてるような感じがしないかしら」
「しないけど」
「本当に? 胸に手を当ててもう一度考えてみて」
「そこに無いものを見させようとすな!」
摩莉はこの状況そのものを拒否したいとばかりに叫んだ。
しかし、たった今戦闘中のデジモンを一人でも呼び戻す事は現実的ではないと、摩莉にも分かっていた。同時に、無理矢理に冷香をハンドルから引き離して運転席を無人にする余裕も無いことも。
そもそも、冷香をよく知る優香が青い顔をしながらも冷香を止めないという事は、止められないのだろう。
「まっかせなサーイ。こう見えて私、乗り物には好かれやすいのよ」
どう見えていると思って言ったのだろうか。そもそも「好かれやすい」とはなんだ、好かれやすいとは。
この時、優香が僅かに顔を曇らせた理由を摩莉はまだ知らない。
◇
「運転やめてこっちに来たからには、ロコモンをどうにかするアテがあるんだろうな。意味もなくクソガキに運転任せてる訳じゃねえよな、な!!」
トランクの中からバアルモンが問いかける。己の命を冷香に預けている状況故に、声には焦りが混ざり、ただでさえ青白い顔面はもはや真っ白だ。
アルケニモンが返した答えはいたってシンプルなもの。
「マシーン型、それもノリモンの倒し方なんて。乗り込んで倒すって相場は決まってる」
せっかく体内に入れる仕組みがあるのだから、利用させてもらえばいい。
一方その頃、ロコモンはくつくつと笑っていた。自身に乗り込もうとするアルケニモン達を嘲るように。
「語るに落ちたであるな魔王の手先ども。吾輩を倒そうとするとはやはり、レオモンやユニモンに語った言葉は嘘だったであるな!」
「そうだが?」
もうここまで来たら別に隠す必要も無いだろう。
「悪の手先のばっちい尻を、吾輩の大事な客席に乗せる訳にはいかないのである。客車・パージ!」
ガシャン、と音がして、ロコモンの機関部と客車の隙間が広がっていく。どうやら自ら連結を外したらしい。
大事な客席がみるみる内に遠ざかっていく。そして、ロコモンのスピードが徐々に上がり始める。
「これで身軽になったのである! 引導を渡してくれるである!」
「大事な客席置き去りになってるけどいいのかよ!」
ロコモンは再びホイールグラインダーを発動させる。
「まずは、お前達を運ぶ足を破壊するである。吾輩と同じ乗り物とて、容赦は不要である」
冷香はホイールグラインダーを避けるために大きくハンドルを切る。
「させないわ」
車体も合わせてロコモンの反対側へギュンと曲がる。
素人のしかも咄嗟の判断故に、ハンドルの切り方は余りにも乱暴。車体は大きく揺れて、乗員は当然バランスを崩す。
脚が多く安定感のあるアルケニモンはそのまま車体にしがみついていられた。
「おい下手くそ! もっとマシな避け方ってもんがあるだろうが! 事故ったせいで死んだら化けて出るからな!」
車体の揺れで迷惑を被ったバアルモンが冷香をどやす。
「当然よ。何者も、私の前で交通事故死するのは許さないわ」
聞かれていないと分かっていても、冷香はバアルモンの言葉に言い返す形で、彼女自身の矜持を示した。
◇
(車を壊すのは大前提として、残しておくと厄介なのはやはり、マミーモンとアルケニモンである)
ロコモンは思案する。
(マミーモンは包帯、アルケニモンは蜘蛛糸を伸ばして吾輩に乗り移れてしまうである。マタドゥルモンは跳んで来ても轢けばいいからどうでもいいである。ターバンつけてるデジモンは、変な札は飛ばせてもあいつ自身が飛べる訳ではないようである)
ロコモンは今まで受けた攻撃から、「外側からの攻撃は最悪直撃しても耐えられる」、「よって優先すべきは体内への侵入を防ぐ事」と判断した。
(殺し方のパターンは色々と考えられるである。例えば今ここでスチームボムをぶつけるとか……!?)
その時だ。
ロコモンは分厚い鉄の装甲を貫き、電脳核さえも貫くほどの『何か』を――殺気を感じ取った。
「今、アルケニモンから殺すって言ったか?」
マミーモンからだ。並みの究極体ですら発せないほどの殺気が、完全体のマミーモンから発されている。
「まだ言ってないであるが!?」
本当だ。ロコモンはまだ、何も言っていなかった。
だが、マミーモンには分かったのだ。ロコモンがアルケニモンへ向けた確かな殺気が。
「どいつもこいつもアルケニモンを殺すアルケニモンを殺すってよぉ!! か弱いアルケニモンをよってたかってよぉ!!」
「か弱くはないと思うのであるが……?」
ロコモンの知識が間違っていなければ、アルケニモンは完全体だし、特別戦闘が苦手という事もなかった筈だ。
しかしマミーモンの中ではそういう事になっているらしい。「恋は盲目」を地で行っている。
「あ、アルケニモンはそこまで気にかけなくても、きっと大丈夫であるよ?」
「気にかけるわボケ!」
ロコモンはマミーモンの尋常ではない殺気を抑えるために彼を宥めようとしたが、火に油を注いで終わる。
そして、マミーモンは火がついた油を燃やし尽くす勢いで、天に向かって宣言したのだ。
「俺はこの戦争が終わったらぁ!! 故郷の街に帰って! アルケニモンと結婚するんだああああ!!!」
包帯男の愛の叫びが、天地を隔てるこの空間全てに木霊する。
場が、空気が、そして時が凍りついた。
(嘘でしょ、マミーモン)
「…………この後、死ぬキャラが言うセリフだよね、それ」
ここで場面はこの小説の冒頭へと戻ってくる。
「なっ、なんだい急に、こんな場所で……!」
突き放すように、しかし満更でもない風に。アルケニモンは顔を真っ赤に染めて、マミーモンに決して顔を見られないように目を背けながら言った。
目を逸らしたいのはこっちである。
超弩級の「死亡フラグ」。物語上で「死の暗喩」として使われる表現技法。
戦いが終わったら結婚するだなんて、死を意味する様式美のお手本ど真ん中だ。こんなコテコテの台詞を現実に言ってしまう者がいるのか疑わしかったが、意外と言っている本人は気付かず言ってしまうものらしい。
これはデジタルワールドにも存在する概念のようで、バアルモンもマタドゥルモンも唖然としつつ居た堪れない様子で目を背けている。
摩莉は「こいつらにすら、こんな顔をさせるなんて」という意味でも居た堪れなくなってきた。
摩莉は鉄面皮がどうなっているのか気になって、冷香の顔を見る。
冷香は無言で冷や汗をかいていた。
明らかに運転を代わってほしがっていた。流石の冷香も、ド直球の死亡フラグを前にしてはプレッシャーに耐えられなかったのだ。
しかし誰も代われない。これが冷香の選んだ道だ。
「頑張って冷香。フラグをへし折るくらいの超絶ドラテク見せて」
「わ、わわ、わかったわ」
顔に出ない分、声ではっきりと動揺しているのが感じ取れる。
「もうこれ逆に生存するパターンじゃないですかね」
優香は不安を処理しきれなくなったのか、一周回って冷静にこんな事を言い始めていた。
パターンも何も、生き残ってもらわねば困るのだが。
もちろんフレイヤは死亡フラグが立っている事は分かっていないし、なんなら皆が居た堪れなくなっている事も察せていない。
「そうだったんだ! マミーモンは、アルケニモンが好きだったんだ! 負けるながんばれ~!」
優しい子だ。
当然ロコモンも狼狽している。なんせ、向こうが勝手に死地に飛び込んできたのだ。
「み、自ら死亡フラグを立てる事で、こちらが悪者になったかのような錯覚を与える作戦! 卑怯な心理戦に持ち込むとは、流石魔王の手先である」
摩莉はそろそろ「無意味に罵倒されたり死亡フラグに巻き込まれたりした事には同情するが、ロコモンもロコモンで口が悪いな」と思い始めた。
「アルケニモンを狙った時点で完全無欠の悪者じゃボケ!」
マミーモンはオベリスクを背中に背負う。これで彼の両手は自由になった。本格的にロコモンへ飛び移るための準備が始まった。
アルケニモンの手の周りにも、きらりと光るものが見え始める。細くとも光を反射する蜘蛛の糸だ。現実世界の小さな蜘蛛が生み出したものでさえ、同じ太さの鋼鉄を優に超える硬さを誇ると言われる優秀な糸だ。
アルケニモンとマミーモンは口々に運転手、即ち冷香に向かって指示を飛ばした。
「奴の心臓部に乗り込むぞ!」
「あいつの間合いに入らないで! でもギリギリまで寄って、並走して! 前には出ないで!」
「わかわかわかわかったわ」
冷香はマミーモン達の指示に従い、進路を僅かに横にずらす。ロコモンの前を走るのではなく、真横に並ぶために。
客車を捨て、身軽になったロコモンから「逃げながら並走する」という無理難題に冷香は必死で応えようとする。
応えなければ、死亡フラグが冷香のせいで成立してしまうのだ。必死にもなる。
「当然の権利として妨害させてもらうである。ホイール――」
「サウザントアロー!」
ホイールグラインダーの変形が終わるより先に、マタドゥルモンの袖からきらりと鋭い刃が飛んだ。
刃はパーツとパーツの隙間に突き刺さり、変形と回転を阻害する。ロコモンは苦い顔で舌打ちをした。ロコモンのどこに舌があるのかは不明である。
「今だ、姉君。車を寄せるのだ」
「どういうつもりで私を姉と呼んだのかしら? 場合によってはバアルモンに頼んで貴方を車から引きずり降ろすわよ」
今のマタドゥルモンの失言で、冷香は冷静な心を取り戻す。早口でマタドゥルモンを詰めつつ、車間距離もギリギリまで詰める。これだけ近ければ狙いは外さない、という距離まで近付いたところで、アルケニモンとマミーモンは動き出す。
アルケニモンはタイミングを見計らい、粘着質の糸を伸ばしてロコモンの車体に付着させた。
「あ! やりやがったであるな!」
アルケニモンの狙いに気付いたロコモンは更にスピードを上げた。しかし、粘着質かつ伸張性の高い糸は容易に剥がれない。
ロコモンと車の距離は再びぐんぐんと開いていくが、蜘蛛糸で繋がった今ならさしたる問題ではない。
「行くよ! 捕まんな!」
「あいよぉ!」
アルケニモンと彼女の胴を掴んだマミーモンが跳んだ。
糸でロコモンと繋がれた体は、まるで空中ブランコのように大きな弧を描いて宙を舞う。
弧の反対側の端には当然、ロコモンがいる。
一瞬、空中で止まった二人は、振り子のように反対側へ。タイミングを合わせて、ロコモンの側面にある窓へ足を差し入れる。
二人はロコモンの体内への侵入を果たした。
「ちぃっ、侵入を許してしまったであるか。しかしこの程度は予測範囲内。ノリモンは乗り込まれてしまってからが本番である」
負け惜しみなのか本当に策があるのが、ロコモンは何やら不穏な言葉を呟いた。
◇
マミーモンとアルケニモンは、ロコモンの中枢部にあたる機関室へ乗り込んだ。
目の前には、ロコモンの心臓部――即ち、燃料たる石炭を焚べる火室がある。
「で、『本番』って何だったんだよ」
マミーモンか未だ熱を持つ銃を構えながら言う。
「お前らがぶっ壊した迎撃装置と、車外に放り投げた用心棒の事であるが……!?」
狭い室内は、侵入者に備えて設置した迎撃装置と、ロコモンが雇った用心棒でひしめき合っていた。
ひしめき合いすぎて互いが上手に機能しておらず、ダークエリアで鍛えたマミーモンとアルケニモンの敵ではなかった。
「そうかいそうかい。じゃあ、今度こそあんたは丸腰ってワケかい」
アルケニモンはケラケラとロコモンの窮状を嗤う。しかし、その目は笑っていない。隣のマミーモンと同じ、ここで確実にロコモンを仕留めようという冷酷な戦士の目をしている。
「今度は吾輩の機関室を撃ち抜き、爆発させるつもりであるか。……愚か。愚かも愚か、愚かである」
「一回でいいだろ『愚か』は!」
「ここで吾輩が爆発したら、貴様ら二人とも巻き添えであるぞ?」
ロコモンは先程受けた嘲笑をそっくりそのまま返すかのように、にたりと笑った。
「なんだい、ここに来て情けない命乞いだねえ。それでもデジタルモンスターかい!」
アルケニモンの煽りも今のロコモンには通用しない。
「――逆に考えろである。吾輩が自爆すれば、貴様らを確殺できるという事である」
自爆。追い詰められたマシーン型が行う自決にして最大の攻撃。
結果は同じ、爆発による共倒れではあるが――
「死なば諸共! 殺されて死ぬくらいなら殺して死ぬ! それが戦闘種族デジモンの誉れである! さあ、吾輩の自爆と貴様の引き金を引く早さ、どちらが早いか……」
「ごちゃごちゃうるさいんだよ」
「御託は地獄で吐きやがれ!」
事前に示し合わせていた訳ではない。だが二人は自然と手と手を取るように、二人で一つの銃の引き金に指を掛けた。
ロコモンが自爆するより速く引き金を引く。瞬間、火の中に飛び込む鉄の弾。
めちゃくちゃに跳弾した弾は火室を、その奥にある蒸気機関をズタズタに傷つけ誘爆した。
◇
「やったのね」
冷香はその目を大きく見開いて驚愕した。思わずブレーキを掛けて、衝撃的な爆発を見届ける。後ろからバアルモンが「馬鹿野郎止まるな!」と叫んでも、気にも留めない。
ロコモンの隙間という隙間から、ほんの一瞬だけ眩い光が漏れる。直後、どす黒い煙が溢れたかと思うとその煙は一瞬で赤い火に塗り替わり、空気も機関車の壁も全て押し退ける爆風と共に吹き荒れた。
炎はすぐに消えたが、煙はその場に残って爆発の元たるロコモンを覆い隠している。辺り一帯は文字通りの焼け野原。焼けた草と石炭の臭いが漂っている。
「マミーモンとアルケニモンは? 無事?」
選ばれし子供達は、煙の向こうに生存者の姿を求めて注視する。
煙が晴れ始めると、そこには――
「俺はアルケニモンがいる限り死なねえよ!」
「バカ! あたしがいなくても死ぬんじゃないよ!」
爆発で多少包帯や毛の端が焦げているが、五体満足のマミーモンとアルケニモンが元気に立っていた。
「……死ぬと見せかけて生存するフラグの方を勝ち取ったわね」
冷香は心底ほっとした様子で、安心した拍子に力が抜けて椅子から半分ずり落ちた。
「おっと待たれい」
と思いきや大事な事を思い出し、椅子にしゃきっと座り直す。
「ロコモンの方はどうなったのかしら?」
我らがカップルは爆発から見事生還した。
では、自身が爆発の発生源であるロコモンは?
『ゴホッ、ゴホッ……な、なぜ? なぜ吾輩は生きている?』
煙が晴れるとそこには――殆どのパーツが破損し、横倒しにされて涙目になってはいるものの、一命を取り留めたロコモンがいた。
「おのれ、これでは修理に何ヶ月かかるか分からないである……!」
何を言っているのかこちらまでは聞こえてこないが、どうやら恨み言を呟ける程度には元気なようだった。
「ったく。余計な仕事させやがってよ」
バアルモンが面白くなさそうに吐き捨てた。
バアルモンの手には、飛ばした札と同じものが一枚。
「別に札を爆発させても良かったんだけどよ。てめえらこういうオチにでもしねえと納得しねえんだろ」
◇
時は遡ること数分前。マミーモンとアルケニモンがロコモンの内部に乗り込んだ直後の事だ。
残された二体の完全体デジモン(※フレイヤは戦闘員に計上しないものとする)も今、後の身の振り方を考えなければならなかった。
引き続きロコモンと並走する車の中で、両雄は意見を交わす。
「ふむ。彼らを二人きりにしてはまとめて爆発死亡エンドになってしまうかもしれん。私も行こう」
「何言ってやがんだ、ここは二人きりで戦って愛の力的なアレで生き残るパターンだろ」
「死亡フラグの折り方でケンカしないでくんない?」
意見は交わるどころか見事に真っ二つ。この期に及んで喧嘩を始めるバアルモンとマタドゥルモン。
しかし、二人が喧嘩している間に死亡フラグが成立しても困るのだ。
「しゃーねーなぁ! 間を取って、こいつだけ寄越す」
バアルモンはそう言って、マントから剥がした札を二枚、ロコモンに向かって投げつけた。
札は途中まで投げられた勢いで進んでいたが、本来スピードが落ち始める距離に差し掛かったところで独りでに動き始める。窓の隙間をするりと抜けて、札はロコモンの体内に侵入した。
「耐火の護符だ。厳密には炎を操って勢いを弱めてんだが、まあ耐火って事でいいだろ」
バアルモンの札には、どうやら様々な用途があるらしい。
ユニモンから逃げる際に使った札はガムテープのように貼り付くだけの札だった。今回は炎を操る札だ。
この調子だと、他にも沢山の用途がありそうだと摩莉は思う。
「死なない程度に爆発を抑えるくらいなら札越しでも余裕だ」
もはや爆発する事前提で対策が進んでいる。
バアルモンが摩訶不思議な札を操る様子を見て、マタドゥルモンは感心したようにこう言った。
「ほう、魔術使いとは珍しい。もしや魔学術都市の出か?」
「あそこの魔術大卒ではある」
マタドゥルモンからの問いかけを、バアルモンは珍しく肯定した。
ウィッチェルニーという言葉の意味をまだ人間の少女達は知らない。ただ一つだけ分かった事がある。
「バアルモン、大卒なんだ……」
◇
爆発を抑える札はバアルモンの想定通りに機能し、見事ロコモンを含めた全員を生還させたのだった。
「これで心配事はもう無いわ。さよならミスター・エクスプレス。もう会うことはないでしょう。ボンボヤージュ」
冷香が運転する車は軽快に、そして爽やかに、涼しい風を伴って焼け野原から走り去った。
◇◇◇
戦闘が終わり、一行が再び二手に分かれるまでの、ささやかだが穏やかなひととき。
誰にも邪魔されず、再び草原を快走する喜びを謳歌する。
車はもはや見た目から車種が分からなくなった。しかも、油の臭いを漏らしながら「ぷすん、ぷすん」と鳴き声を上げている。
無茶な走りをさせたせいで、いよいよエンジンにもガタが来ているのだ。
しかし、一仕事終えた車はどんなにボロボロになっても誇らしげに見えた――そんな気がした。
そんな愛車を運転しながら、マミーモンが言う。
「目的地に着いたら、そうだな。……まず、車を修理してもらうよ」
果たして「これもう新車買った方がいいですよ」と言わずに修理してくれる店はあるのだろうか。
「修理代もガキ共とガキを喚んだバルバモンに請求すりゃ良いんじゃねえのか? 無駄な不殺主義のせいで余計に手間取ったんだしよ」
バアルモンが頭の後ろで手を組みながら、冗談めかしていう。
まだこの件で不貞腐れていたのか。摩莉の中では一周回って感心の域に入った。
マミーモンは一瞬、断りそうな雰囲気を出しかけてから、何かを思い出す。
「……そうだよな、お前らに請求した方がいいよな。トランク壊したのお前らだもんな!?」
バアルモンは「しまった」と焦った顔で目を反らした。
隣でマタドゥルモンがゲラゲラ笑っているが、彼は自身が共犯者だという事をすっかり忘れている。
「ところでアルケニモンは何で人間の格好してたの?」
墓穴を掘ったバアルモンは置いておく事にして、摩莉は、再び人間で助手席に座っているアルケニモンに訊ねた。
聞けば、アルケニモンという種族は人間に擬態できる能力を持っているらしい。
持っているからと言って、必ずしも人間の姿を取る必要はない筈だ。
「そりゃあんた、車の中であたしの脚広げてたら邪魔じゃないか」
「それはそう」
実にご尤もな理由が返ってきた。
やがて、ただひたすら真っ直ぐだった道の先が、二つに分かれているのが見え始めた。
「おや、そろそろお別れのようだね」
アルケニモンが名残惜しそうに言う。
ここまで摩莉達を連れてきてくれたのは彼女とマミーモンだが、彼女達自身も、騒がしくも愉快な旅を楽しんでくれたようだ。
厄介事に巻き込んでしまったと気を病んでいた摩莉だが、アルケニモンの態度に救われる。それ以上に、新たなる友人となれた事を嬉しく思った。
「そっか。もう、お別れなんだ……。ここで?」
嬉しく思うがそれはそれ、これはこれ。
このだだっ広い草原で放逐されるのは困る。一度快適な車移動に慣れてしまった身では、何もない場所をえっちらおっちら歩く事に耐えられない。きっと耐えられない。
「あんたらが行くのは天使型デジモンの里だろ? あたしらが行くのはナイツ軍の駐屯地だ」
残念だけど、これ以上は乗せて行ってあげられないよ。と、アルケニモンは申し訳無さそうに言う。
パラパラとページをめくる音がするので振り向くと、バアルモンが紅い本を渋い表情で見つめていた。
「……マジだ。ここで道が完全に分かれてやがる。クソッ」
バアルモンは本をバタンと閉じた。
バアルモンが言うなら、もうこれ以上は粘れないだろう。恩人の二人に、これ以上迷惑を掛ける訳にはいかない。摩莉達はぞろぞろと車を降りる。
「それじゃ、達者でね。気をつけなよ、天使どもは何考えてるか分かんないから」
「俺達からも『乗り物をください』ってバルバモン様に言っとくよ。……聞いてもらえるかは分かんねえけど」
アルケニモンもマミーモンも、わざわざ車から降りて見送ってくれた。
……ただ、バルバモンの話題に差し掛かると二人とも目を逸らした。バルバモンのケチ具合は他の魔王の部下が相手でも相当手強いらしい。
「乗り物が届くまで死んだら駄目だからな」
それでも、最後にはマミーモンは歯を見せて「にかっ」と笑ってくれた。勿論、アルケニモンも笑顔だ。「ここまでの厚い助力に感謝する。……貴殿らも死地に飛び込むのは同じ事。敵に素性がバレて殺される等という、つまらない死に方だけはせぬよう気をつけたまえ」
マタドゥルモンが大仰な仕草で一礼すると同時に忠告する。それも、今までの彼の態度とは一変して、おふざけの無い真剣な態度で。
死亡フラグという「単なる予感」など比ではない、正真正銘の危険地帯に飛び込むのだ。厳しささえ感じるほどの忠告をするのは相手の身を案じればこそ。
「あたしらが行くのはロードナイトモンの所さ。あいつなら少しはウィルス種に寛容だろうから」
ロードナイトモンというデジモンがどんなデジモンなのか、摩莉にはまだ分からない。それでも、ロコモンやユニモンがそうであったように、ダークエリアのデジモンを迫害するような相手ではないのであれば――それだけで、摩莉は安堵出来た。
別れは惜しいが、それでも時間は待ってくれない。
マミーモンとアルケニモンは再び車に乗り込み、反対側の別れ道に向かって発進する。
二人が手を振ると、誰からともなく感謝の声が上がり始めた。
「ありがとうー!」
「ありがとうございましたー!」
「ドライブ楽しかったわー!」
「“けっこんしき”するなら呼んでねー!」
「……バアルモンよ、貴様も何か言った方が良いのではないか」
「てめえに言われるまでもねえっての! おい! もう死亡フラグ立てんじゃねえぞ! もうフォローしてやれねえかんな!」
走り出した車の背に向かい、少女達は次々と別れと感謝の言葉を叫ぶ。それは、車の影が道の遥か向こうに消えて見えなくなるまで続いた。
蜘蛛女と木乃伊男の珍しいカップルの愛が、成就する事を願って。
「……結局、最後には徒歩かよ」
車の影が見えなくなった途端、バアルモンは誰よりも肩を落としてげんなりした表情でぼやいた。
「元気を出して。私達がついてるわ」
「てめえらも一緒に歩くんだよ」
ここで一緒にげんなりしないのが風峰冷香。彼女はどーんと胸を叩いてみせる。
「私、乗り物を惹き寄せる事に関しては他の追随を許さないわ。デジタルワールド一のヒッチハッカーを目指してみせましょう」
「それでロコモン呼び寄せてるんじゃ世話ねえよ!」
◇◇◇
「仲間達はやり遂げてくれただろうか。いや、絶対やり遂げたに違いない。今頃マタドゥルモンにも大勝利して、平和を取り戻している筈だ」
一方その頃。レオモンは仰向けになって空を眺めながら、仲間の勝利を信じていた。起き上がる元気も無ければ首も痛いので、空を見ている以外にやれる事がないのだ。マタドゥルモンに蹴られたせいでむち打ちになったらしい。
「しかし、魔王の手先がこんな場所でうろちょろしているとはどういう事だ。何か企んでいるのか? その企みを我ら自警団が止められたら、ひょっとするとロイヤルナイツから感謝状が贈られたりするのではないか? パレードの準備が必要か?」
勇者レオモンにも、ちょっぴり俗な欲望があるのだ。
「万が一止められなかったとて、多少は時間稼ぎになるはずだ。そう、天使軍とロイヤルナイツが戦の準備をするための時間稼ぎに! やはり、感謝状を入れる額縁を買っておいた方が……」
「でもそういう時って、大体賞状渡す方が額縁くれるよね!」
驚きのあまりレオモンの心臓が跳ね踊る。
独り言に合いの手を入れて来たのは、一体何者だ?
「そもそも全敗なんだから感謝状もパレードも無しだ、たわけ!」
更にもう一人の声が、レオモンの考えを否定しながら乱入する。――全敗、だと?
「き、貴様ら何者だ……。我が仲間達が負けた、とは、どういう事だ?」
レオモンは痛む首を無理矢理にでも曲げて、乱入者の正体を拝もうとする。
生憎、声の主の姿は逆光のせいではっきりとは見えない。ただ、大きな人型の身体が陽炎のように揺らめいているのは分かった。
「ボクらが何者かって? 人呼んで“天才”さ! キミもそう呼んでくれて構わないよ!」
初めの声は子供のように甲高く、自信に満ち溢れている。単に言いたい事を脊髄反射的に言っているだけのようにも聞こえる。
「『負けた』とはそのままの意味だ。貴様ら辺境の自警団如きが無謀にもダークエリアの手練れに挑んで負けて、無様を晒したという意味だ。他に何がある?」
二番目の声は早口で厭味ったらしい口調。こちらはレオモンら自警団の行動を、執拗に責め立てるような物言いだ。
「聞かれる前に『三番目』の問いにも答えてやろう。我々が貴様に接触したその目的はだな――貴様らの如き愚昧で矮小な三下共の無用な手出しのせいで、ほんの僅かではあるが我らの目的の達成が遅れたその腹いせだ」
ゆらりとゆれる影から、ずるりと細長い紐上の物体が八本、レオモンに向かって伸びる。
この後レオモンがどうなったのかは、彼らのみぞ知る。
4.5話投稿するの忘れてました(滝汗)
なんということだ。折角5話が書き上がったというのに……(早く読みたい君は、羽化石の個人サイトかクロスフォリオへGO!)さて、トラウォをもたもた書いている間に、色んな事がありました。
遂に発売されたタイストでウルカヌスモンをガン見したり
ウルカヌスモンの事を考えすぎて「人類は滅ぼすべき」になったり
シモンズ博士とウルカヌスモンが一緒に秋葉原に行くDLCが欲しくて暴れたり
とにかく色々な事がありました。
そんな羽化石ですが、次はトラウォの書き直しではなく、ガチ最新話を書く予定です。
ガチ最新話とは、第22話の事です。
という訳で、スクルドターミナルに投稿できるのはかなり先になってしまいますが……それまでに個人サイトまで読みに来ていただけたら、とっても嬉しいなぁ!!
- バカ長えですわ〜!!!(前中後編に分ける文量を一度に投稿したからです)
皆様ごきげんよう。タイストにコテモンもムシャモンも実装されてご機嫌の羽化石です。
長年、主人公なのに村正くんをサイハカやソシャゲで再現できない事が悩みだった私でしたが、この度見事再現できるようになりました。
個人サイトでトラウォをもう少し先まで読んでくださっている方はご存知かと思いますが、村正くんは完全体が鬼門です。もう書いてるこっちが困ってるレベルで鬼門です。
そしてこれは私しか知らない事ですが(10年も書いてるのに!?)、究極体も高めのハードルがあります。
是非とも村正くん進化ルート再現をやってみたいものです。
さて、いい加減本編について書きます。
以前サロンの方で投稿した際、ご感想で「もう村正の過去が開示されるの!?」と書いてくださった方がいらっしゃいました。
そうです。開示されちゃうんです。
そして、これからのトラウォ(というか村正を巡る物語)は、村正が前世のような力をどうやって取り戻して行くかが軸となります。
今回のようにタツキ&クラリネとの交流を経てだったり、強敵と戦ったり、エトセトラエトセトラ……。
見た目は子ども、中身はツンデレのおっさん村正くんをこれからも是非応援してあげてください。
ちなみにトラウォはありとあらゆる場面でツンデレのおっさんお兄さんのデジモンが出てきます。覚悟してください。
次回は魔王チーム(摩莉チーム)サイドのお話です。公式へのリスペクト・パロディノルマを一度に消化しようというすさまじい回です。
果たしてタイスト発売までに投稿できるのでしょうか!?
ごめんなさい。本当はこのあと4.5話があります。
お楽しみにね!!
神のあとがき・バージョンΩ
神の両腕・バージョンΩってなんだよ!!
失礼。取り乱しました。
ええ、この間のあとがきでは「自作のウルカヌスモンとタイストのウルカヌスモンがネタ被りしたら大変だにょ〜ん」などと抜かしておりましたが、タイストのウルカヌスモンが謎の兵器を持ち出してくれたため、ネタ被りの危機は去りました。
こんなもんネタ被りしてたまるか。
タイストのウルカヌスモンは果たしてどんな神様なのか、楽しみですね。
やりたい放題してくれると嬉しいですね。
さて、トラウォ3話です。魔王サイド顔合わせ会です。
リメイク前と併せて1〜3話はあちこちで何度も投稿しているので、そろそろ読者の皆様の頭の中でトラウォ3話が飽和し、破裂してしまうかもしれません。
4話以降もなるべく早くお届けできるよう頑張ります。
話を戻しましょう。トラウォは1、2話で紹介した「天使サイド(タツキサイド)」と、今回紹介した「魔王サイド(摩莉サイド)」の2つの軸で展開していきます。
この説明も1000回くらいしていますね。
1000回くらい聞かされた読者の皆様は、そろそろこう思い始めたのではないでしょうか。
「マタドゥルモンにバアルモンにブラックテイルモン……。魔王サイドに羽化石の推しが固まってない?」
と……。
ご安心ください!!
確かに種族単位では好きなモンが偏っていますが、みんな私の大事なキャラクターです。今後の展開では天使サイドも魔王サイドも平等に活躍させていきます!
もし平等になってなかったら「なってねえぞ化石ィ」と教えてやってください。
後ぶっちゃけ、進化すれば天使サイドも羽化石の推しに偏っていくからご心配めされるな。
1000回もトラウォ最序盤を読まされている方々向けにもう一つお得情報をお伝えしますと、風峰パパの事を少しでも頭に置いておくと、後の展開を読む時楽しいかもしれません。
え、天使サイド魔王サイドよりももっと羽化石の好みに偏ってる陣営がいるだろって?
なんの事ですの? 分かんないよぉ。ボクは天才だからね!!
あとがき
頑張りましたが疲れてしまったので、段落は下がっているものとして読んでください。(どうしても気になるお友達は、羽化石の個人サイトへGO!)
トラウォ2話がスクルドターミナルに投稿されたという事は、トラウォ5話書き直しが着々と完成しつつあるという事です。
正直(書き直しとか言ってないで、さっさと新しい物語を読者の皆様にお届けすればよかったぜ!)と後悔する気持ちが無いと言えば嘘になるのですが、一度自分から始めた事なので、なんとか頑張ります。
さて、このトラウォ2話のあとがきで書くことがもうなくなってしまいました。近況報告は1話でしてしまったし、2話の解説もあちこちでしてしまっているので書くことがありません!
ああ、そもそもトラウォ1〜3話を無限ループさせられてるから飽きたと言わないで……怒らないで……
いけません。これではあとがきがネガティブで終わってしまいます。もっとポジティブな話で終わりましょう。
デジモンエキスポ、クロスウォーズステージをありがとう……!!!!!
アト=グァキ(新しいクトゥルフの神様)
皆さん。タイストの情報は追っていますか。
タイツ&ストッキングのことではありません。
デジモンストーリー タイムストレンジャーのことです。
主人公チームにコロナモン&ルナモンを配置し、ウルカヌスモンを◯◯◯◯モン(トラウォをまだ先まで読んでいない方への配慮)の養父に配役した私としては、ここ最近のオリンポスフィーバーに胸を高鳴らせるばかりです。
マタドゥルモンもまた出るもんな。ガハハ。
特典のパブミラーのイラスト見ましたか?あんなにアグレッシブなウルカヌスモンを今後公式で見れるか分かりませんよ???
特典の設定集にはウルカヌスモンのイラストあるってことでしょ?やった〜!!
逆に言えば、これからはタイストとのネタ被りに怯える日々が始まるという事でもあります。
ウルカヌスモンが関西弁で喋って◯◯◯ブモンを養子にしててガンクゥモンと飲み友達だったら大分アウトです。
仮にネタ被りしてたとしても「ちっ、違うんです!偶然なんです!こっちの方が先に考えてたんです!」と言い張れるように、トラウォの更新速度を上げる決意を新たにしたのであります。
マタドゥルモンもまた出るもんな。ガハハ(2回目)。
という訳でトラウォのリバイバル連載が始まりました。
本サイトの前身となるデジモン創作サロンでは「5話」の「前編」までの投稿となっていましたが、後編を近日中に公開できそうと判断してのリバイバル連載です。
何卒応援よろしくお願いいたします。
マタドゥルモンもまた出るもんな。ガハハ(3回目)。
マタドゥルモンがまた出るもんなのを知らない君はタイストの発売日決定PVをチェックだ!!
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