デジモンクレイドル プロローグ 前編

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    水月 凪水月 凪
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      プロローグ      前編
       

       

       

      その世界には平和があった。
      神が見守り慈しむ、揺りかごのように穏やかで温もりに溢れた世界。
      生まれ落ちる生命いのちは皆、世界と共に成長していく。
      世界がより良くなるように、取り零されるモノが一つでも多く無くなるように。

       

      神の慈愛あいは息づく全ての生命いのちに注がれている。

       

      神は世界を愛している、神は遍く生命いのちを愛している。

       

       

       

       

       

       

      その”瞬間”が訪れるまでこの世界は確かに平和だった。

       

       

       

       

       

      デジモンクレイドル

       

       

       

       

       

       

      『──ぐぅ…っ!まさか…これほど、とは…っ!』

       

      『フ、フフフフ…!アハハハハッ!無様!ナンテミットモナイ姿ナノデショウ』

       

       

      “ソレ”が現れたのは一体何時であったのか。
      もし少しでも早くこの異常事態に気付けていたのなら被害が此処まで大きくなることはなかったのかもしれない。

       

       

      この世界《デジタルワールド》を管理する神イグドラシルは未曽有の危機に陥っていた。
      突然の襲撃者に不意を突かれた。

       

       

      それまでと同じように世界を見守り、必要であればそっと手助けをする。
      それが神であるイグドラシルの役目だったのだがこの瞬間、デジタルワールドの穏やかな日々が終わりを告げた。

       

       

      襲撃者の一撃によってイグドラシルを構成する本体とシステムに甚大な損傷が刻まれる。
      既に八割に至る所までの大きな損傷を負い、砕かれた箇所からはジワジワと内側へ得体の知れない禍々しい”ナニカ”がイグドラシルを蝕んでいく。

       

       

       

       

      『──イグドラシルッ!くっ、貴様ァッ!!』

       

      『無様デスネ、ロイヤルナイツ。護ルベキ神ヲ護レナイトハ、ネェ?』

       

       

      襲撃者である異形のモノは爛々と緑の双眸を輝かせてケタケタと嗤っている。
      神を嬲り、駆け付けるも寸前で間に合わなかった騎士を嗤い続ける。

       

       

       

      『──オメガモン…我に、触れてはならない…。そなたも汚染されてしまう…』

       

      『しかしイグドラシル!このままでは御身が保ちません!!』

       

      『ソウデスヨ?ソノ毒ハ特別製。神ノ力スラ削ギ落トスモノ、最早アナタハ神デスラナイノデスカラ…』

       

       

       

       

      襲撃者はそう言ってニィと口元を歪ませる。
      待ち望んだその瞬間に歓喜で震えが止まらない。

       

       

      天に在る神を混沌に満ちた地に引き摺り降ろす。
      大いなる野望の為に最高位の神を屈辱と汚泥に塗れさせる。
      その得難い愉悦感に襲撃者の表情が歪んでいる。

       

       

       

       

      『──神たる我を辱めんとする者よ…、我は貴様に屈したりはせぬ…』

       

      『アハハハハッ!コレホドノ醜態ヲ曝シテ何ヲ今更…!』

       

      『確かに我が本体とシステムは八割以上が失われた、最早神としてこの世界を管理し続けるのは難しかろう…』

       

      『ソウデス、アナタハ既ニ神デハナイ!アナタハ地ニ堕チタノダ!』

       

       

       

       

      襲撃者はボロボロになっているイグドラシルを指差しながら詰る。
      その間にもイグドラシルは禍々しい猛毒に犯され、純白の本体には大きな亀裂が走り音を立てて崩れていく。

       

      しかし、どんなに襲撃者に詰られてもイグドラシルの声色から冷静さが失われることはなかった。
      神としての矜持プライド、それを堂々と襲撃者に対して示してみせた。

       

       

       

       

      『我は間もなく機能停止するだろう…イグドラシルというホストコンピュータは…、神は此処で終わる──。
      だが、それが世界の終わりとはならぬ…我が旧き時代の神ならば次世代の神が誕生するまでのこと…』

       

       

      『──ッ!?ナン、デスッテ…?』

       

      『我が喪われる程度でこの世界は終わらぬとも。より優秀な我が後継機がこのデジタルワールドを護るのだからな…』

       

      『イグ、ドラシル…ッ!』

       

       

       

       

       

       

      自らの最期を悟るイグドラシルは澄んだ双眸を襲撃者へと向ける。
      その瞳に浮かぶのは一種の憐憫の色であった。
      襲って来た者に対して被害を受けた者が向ける感情モノではない。

       

      襲撃者には全く理解出来なかった。
      相手は神としての力の殆どを失った死に体である筈だ。
      この世界の最高位の存在であるイグドラシルを自分が圧倒的な強者として嬲った。
      にも拘わらずどんなに嬲り辱めようとイグドラシルの矜持を襲撃者は一片たりとも穢すことが出来なかった。

       

       

       

       

      『我は神だ、この世界と息づく全ての生命を愛し護る為に在る。
      貴様の薄汚い欲望の為にこのデジタルワールドを、息づくデジモン達を一体たりとも犠牲にさせたりせぬ』

       

      『───!?シマッタ、イグドラシル…マダコノヨウナ力ヲ!』

       

       

       

      イグドラシルは遺された僅かな力を振り絞り、油断していた襲撃者を聖域から遠く離れたデジタルワールドの辺境へと強制的に転移させた。
      襲撃者はイグドラシルの力によって消え、その場にはイグドラシルとオメガモンのみが残る。

       

      既に思い通りに動かなくなりつつある本体を無理やり動かすとイグドラシルは遺された力を躊躇うことなく新たなプログラムとして構築し直し始めた。
      己と同じままではダメだ、あの襲撃者のように襲い来る脅威に対抗出来るようエンコードしていく。
      再構築されていくプログラムへイグドラシルは最も重要なデータを組み込んだ。

       

      本体とシステムを穢されてなお、襲撃者に奪われることなく手元に残ったもの。
      このデジタルワールドとデジモン達にとって最も大切な”存在データ“。

       

      この世界を支える要。
      全てのデジモン達が生まれ、全てのデジモン達が還る所《はじまりの街》
      このデータを汚染されていたらどんなに手を尽くしても手遅れであったと徐々に薄れていく意識の中でイグドラシルは思う。

       

      偶然であれ何であれ、得られたこの好機をみすみす逃す手はない。
      これらを全て後継機となる新たな神へ託す。
      その為に出来ることは今全てやり終えた。

       

       

       

       

      (ああ、我は終わる…終わるのだな…。この愛おしい世界をずっと見守っていたかったが──)

       

       

      イグドラシルはそっと隣に視線を向ける。
      膝をつき、己の無力さを責めるオメガモンが其処に居た。

       

       

       

       

      だが、イグドラシルは知っている。
      オメガモンは眠りについた抑止力の騎士と双璧をなすロイヤルナイツ最高の騎士だ。
      彼が今激しい後悔に苛まれて苦しんでいることは分かっている。
      だが、それでも全てを投げ出してしまうような無責任なことだけはして欲しくない。
      死にゆく自分の分も誉れの高いロイヤルナイツの一員としてこのデジタルワールドを彼に護って欲しかった。

       

       

       

       

       

       

       

      『我が忠義の騎士オメガモンよ…、あとは任せた──』

       

      『──ッ!イグドラシル~~ッ!!』

       

       

       

      我が忠義の騎士と呼び、必要な時はずっと側に置いていた最も信頼出来る騎士オメガモン。
      だからこそ、最後の希望を託すに相応しい存在。

       

      イグドラシルはオメガモンへプログラムを託し、そのまま眠るように機能を停止した。
      神々しかった純白の本体は穢され、無残な姿となり果てて所々が崩れ落ちている。
      襲撃者によって混入させられた禍々しい猛毒が砕けた箇所からドロドロと滴り落ちた。

       

       

       

       

       

       

       

       

      『──イグドラシル…イグドラシル…敬愛する我が主…貴方に託されたこの希望は私の全てを賭けて必ずや護り抜いてみせましょう。
      貴方をお護りすることが出来なかった無力な私ですが…。
      今度こそ、私の騎士としての誇りに賭けて…必ず、必ずです…』

       

       

       

       

       

       

       

      沈黙した亡き主君を見つめてオメガモンは誓う。
      もう二度と同じ過ちを繰り返すまいと。
      これから生まれるイグドラシルの後継機は何が何でも必ず護り抜く。
      デジタルワールドを守護するロイヤルナイツの一員として全てを賭けて。

       

      忠義に篤き白い騎士の青い双眸にはうっすらと涙が滲んでいた──。

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

      ── わ た し は 、 ま っ て る 。

       

       

      ず っ と ず っ と 、 わ た し は ま っ て い る 。

       

       

      ” あ な た ” が き て く れ る ひ を わ た し は ま ち つ づ け て い る 。

       

       

      お ね が い 、 ど う か は や く き て 。

       

       

      世界《デジタルワールド》を救って運命の子。

       

       

      宿命さだめの子、次代の希望よ。

       

       

      二つの世界の命運は、今”あなた”の手の中に──。

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

      ずっと何かに喚ばれているような気がしていた。
      物心ついた頃からずっと何かが胸の一番奥で引っ掛かるように残ってきて。

       

       

      学校へ行って勉強をして友達とお喋りをしたり、遊んだりしていてもずっと。
      心の中の何かがずっと”ソレ”を感じ取っている。

       

       

      誰かが私を待っている。
      ずっとずっと昔から私のことを待っている。

       

       

       

       

       

       

       

       

       

      そんな予感がしていた。

       

       

       

       

      4月。とある日の帰り道。
      星野優烏ほしの ゆえは友人達と談笑をしながら歩いていた。

       

       

       

      「──でよ、ソイツらにこう言ってやったんだ!漢なら1対1サシで勝負しろってなァ!」

       

      「君を相手にそれは無理だろう?君に喧嘩を売った方に同情するよ」

       

      「マサト相手じゃあ、その辺の不良なんて手も足も出ないでしょ~?
      喧嘩相手より舎弟の数のが多そうじゃないのよ」

       

       

      喧嘩っ早いが誰より正義感の強い八代雅斗やしろ まさと
      冷静沈着で成績優秀な野嶋透弥のじま とうや
      ムードメーカーで明るい藤本莉子ふじもと りこ
      個性豊かな三人の幼馴染達。

       

       

      優烏は彼らと過ごす、この何気ない日常が好きだった。
      これからも変わらずにずっと続くのだとこの時の優烏はそう思っていた。

       

       

       

       

       

       

       

       

      『──── 待っているよ、ユエ ──』

       

      「………っ!!」

       

       

      自分の名前を呼ぶ声に優烏はハッとして後ろへ振り返る。
      しかし、優烏の視線の先には誰も居ない。
      野良猫でさえも姿はなかった。

       

      いつもより少し挙動不審気味な優烏に雅斗達は首を傾げる。

       

       

       

       

       

       

       

      「ユエ~?どうしたんだよ?」

       

      「最近、上の空なことが増えたね?何か心配事でもあるのかい?」

       

      「そうそう!あたし達に出来ることなら何でもするし!相談してよユエ!」

       

      「──っ、ありがとう…みんな…」

       

       

       

      大切な三人からの温かい言葉に優烏は胸いっぱいになる。
      彼らはなんて優しいんだろう。
      出会うことが出来て友達になれて自分は本当に幸せだと心からそう思った。

       

       

       

       

       

       

       

       

      “───漸く見つけた、デジブラッドを持つ人間の子供達…”

       

       

       

       

       

       

       

       

       

      いつも通りの日常が非日常に変わる瞬間とき、異なる世界で生きている彼らと運命が交錯した。

       

       

       

       

       

       

       

       

       

      『───人間ひとよ、人間の子供達よ…』

       

      「な、なんだ!?」

       

      「この声は!?一体何処から…っ」

       

      「ユエ!あたしから離れちゃダメよっ!」

       

      「う、うん!ありがと、リコ…っ」

       

       

       

       

       

       

       

      帰り道の交差点に差し掛かった時、何とも言い難い奇妙な感覚がした。
      何かに視られている、背中の辺りがぞわぞわと寒気がするようだ。
      不思議な声は雅斗達以外には聞こえないようで他の人々は普段と変わらない喧騒の中で日常を送っている。

       

       

       

       

       

       

       

       

      「んなっ!景色が…!!」

       

       

       

       

       

       

       

       

      四人の周りの景色がぐにゃりと飴細工のように歪んだ。
      その光景に雅斗が驚愕の声を上げると周りの景色から色が消えて白黒に変わり、動いている車や人もゆっくりとスローモーションになっていく。
      雅斗達は立ち止まりキョロキョロと辺りを見渡した。

       

       

       

       

       

       

       

       

      『──人間の子供達よ、どうか我々の世界を救ってくれ…』

       

       

       

       

       

       

       

       

      一陣の風が吹き抜けると四人の目の前に透き通った白い大きな影が現れた。
      純白のマントを翻し、静かな眼差しで見下ろす影。
      一目で分かる、人ではない異形の存在。

       

       

       

       

       

       

       

       

      「あな、たは───?」

       

      『私はオメガモン、デジタルワールドを護るロイヤルナイツの一員だ』

       

      「ロイヤルナイツ?そのロイヤル何とかが何の用だよ!」

       

      「ちょっと待ってくれ、ロイヤルナイツって言えばゲームに出て来るデジモンの……!」

       

      「そうよ…、ネットワークセキュリティの最高位って言う設定のキャラクターだわ!
      でも、どうして…?デジモンってまさか実在しているの!?」

       

       

       

       

       

       

       

       

      恐る恐る何者なのかと優烏が尋ねれば彼はオメガモンと名乗った。
      自分達にとっても馴染み深い育成ゲームに登場するデジタルモンスター、通称デジモン。
      その中でもロイヤルナイツ、オメガモンと言う存在は育成への難易度がとても高く滅多に現れないレアキャラクターだった。

       

       

      そんなオメガモンが実在していて今まさに自分達の目の前に居る──。
      突然のことに上手く状況を飲み込めない雅斗達。
      戸惑いを隠せない四人にオメガモンは落ち着いた声色で言った。

       

       

       

       

       

       

       

       

      『デジモンである私が実在していることに君達が困惑しているのは重々承知している。
      本当にすまない。私──否、我々には時間が残されていないのだ。
      どうか君達人間の力を貸してはくれないか?デジタルワールドを救って欲しい…』

       

       

       

       

       

       

      雅斗達の困惑ぶりはオメガモンにも伝わっているようだがそれを理解した上で改めてオメガモンは告げる。
      デジタルワールドを救って欲しいと。
      オメガモンの言葉からデジタルワールドに何らかの良くない異変が起きていることは容易に想像出来た。

       

       

       

       

       

       

       

       

      「俺達が、デジタルワールドを…?」

       

      「人間の私達に…それが出来るの…?」

       

      『ああ、君達ならば可能だ。デジブラッドが目覚めている君達になら──』

       

       

       

       

       

       

       

      キィィィンと耳慣れない奇妙な音がする。
      足下からふわりと風が吹いた。
      雅斗達の足下にはいつの間にか光を放つ幾何学模様が浮かび上がっている。

       

       

       

       

       

       

       

       

      「な、なんだぁ!オメガモン、一体何をしてやがる!」

       

      「まさか転移魔法陣!?こんなものまであるなんて…っ!」

       

      「リコ…っ!手を…!」

       

      「分かってるユエ!何があっても絶対離れないように!」

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

      『──本当に、すまない。まだ子供の君達を巻き込んでしまって…』

       

       

       

       

       

       

       

       

      オメガモンの申し訳なさそうに呟く声がすると同時に強い力で引っ張られる感覚がした。
      魔法陣から溢れる光が一際強くなり、一気に弾けると四人の体を包み込む。

       

       

       

       

       

      そして、光が収まり晴れた頃には其処に居た筈の雅斗達の姿は何処にもなかった。
      人間界の何処にも四人の姿はなかったのである。

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

      「───うっ、こ…こは…?」

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

      微かな振動を感じて雅斗は目を覚ます。
      側には透弥に莉子、優烏が同じように気を失って倒れている。
      雅斗は何とか体を起こして三人の側に歩み寄り、それぞれの体を揺すって声をかける。

       

       

       

       

       

      「トウヤ!ユエ、リコ!しっかりしろ、大丈夫か!」

       

      「───くっ、マサ…トか?」

       

      「トウヤ!良かった、目ェ覚ましたんだな!」

       

      「ああ…、僕はな…。はっ、ユエとリコは!?」

       

      「二人も無事だ!まだ目ェ覚ましてねぇけど…」

       

      「そうか……」

       

       

       

       

       

       

       

       

      よろよろと体を起こして座り込む透弥。
      雅斗も隣に腰を下ろし、自分達の置かれた状況を改めて考える。

       

       

       

       

       

       

       

       

      「俺達…デジタルワールドに喚ばれたのか…?あのオメガモンに…」

       

      「ああ…恐らく間違いない…。人間界では見たことのない植物にあり得ない景色…。
      あの魔法陣で僕らは此方側へ召喚とばされたんだ…」

       

       

       

       

       

       

       

      透弥はそう言って改めて周囲を見渡した。
      群生している植物は何処か人間界にある南国の熱帯林を彷彿とさせるがその少し奥、人間界に例えるなら短い一駅分ほどの距離しか離れていない所に巨大な氷山がある。
      熱帯風植物には合わない氷山、その他にもちぐはぐな光景が視界いっぱいに広がっている。
      現実離れしたこの景色こそ自分達が人間界ではない所に居る証拠になった。

       

       

       

       

       

       

       

       

      『目が覚めたか、子供達よ──』

       

      「──っ!!テメェは…っ!」

       

      「オメガモン…!」

       

       

       

       

       

       

       

       

      背後にふわりと何かが降り立つ気配がした。
      急いで振り返れば其処には先ほど出会ったオメガモンが立っていた。
      人間界で会った時と同じ静かな眼差しで雅斗達を見つめている。

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

      「全員、無事に此方側へ来られたようで何よりだ…。
      まともな説明も殆どなく無理やり連れてくる形になってしまってすまなかった」

       

      「オメガモン…」

       

      「この世界を護る神を、襲撃者によって殺されてしまった…。
      我々にはもう時間が無い…一刻も早く襲撃者を倒し新たな神を迎えなければならないのだ…」

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

      雅斗と透弥に向かって深々と頭を下げるとポツリポツリとオメガモンはこれまでの経緯を語った。
      この世界デジタルワールドのことと長年世界を見守ってきた神イグドラシルの存在。
      そのイグドラシルがつい先日謎の襲撃者の手によって殺されてしまい、今のデジタルワールドには世界を見守る神が居なくなってしまった。

       

       

      新たな神を迎える方法としてイグドラシルが死ぬ前に後継機となる神を創るプログラムを残したが襲撃者をどうにかしなければ同じことの繰り返しとなる。
      神を喪ったデジタルワールドは管理者となる神の不在が続けば少しずつ綻んでいき、やがては跡形もなく消滅してしまうということを教えてくれた。
      神の命を奪った襲撃者の目的は現段階でも明らかになっていないがそれでもロクなことではないと吐き捨てるように彼は言った。

       

       

       

       

       

       

       

       

      そして、その襲撃者に対抗するには人間の協力が必要不可欠であったのだとオメガモンは言う。

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

      「俺達の力…?」

       

      「そうだ、君達にはデジブラッドという特別な力が宿っている。
      それは人間だけが持つ力…テイマーとなってパートナーとなったデジモンに新たな力を与えてくれる…」

       

      「デジブラッド…そんなの初めて聞いた…」

       

      「──より詳しい話はもう少し長くなる、その前に此処から移動をしようか」

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

      オメガモンがそう言うと彼の背後に魔法陣が現れた。
      そして、魔法陣の向こう側から見慣れないデジモン達が姿を見せる。

       

       

       

       

       

       

      「おう悪ぃな、オメガモン。遅くなっちまった」

       

      「全くちゃんとしてくれガンクゥモンよ。
      シスタモン達も悪かった、この子達を頼む」

       

      「はい、オメガモン様!シエル、そっちはお願いね?」

       

      「OKよノワール、こっちの子はアタシがおんぶするわね」

       

      「ブ、ブランもがんばりますっ!しゅーいのけいかい、ですっ!」

       

       

       

       

       

       

      それぞれ黒猫やネズミ、白兎といった動物を彷彿とさせるヴェールを被った少女達。
      オメガモン達のやり取りから彼女達は人間ではなくシスタモンという種族のデジモンでガンクゥモンに同行しているのだと言う。
      シエルと呼ばれたシスタモンは別行動をしていたのだが非常事態であったことでガンクゥモンの要請を受けて駆け付けてくれたらしい。

       

       

      ノワールが優烏をシエルが莉子をそれぞれ背負うとオメガモンに促され転移魔法陣を使って移動を始める。
      転移魔法陣を潜り抜けると其処には水晶のような透明な結晶で出来た宮殿のような美しい建造物があった。
      神聖で厳かな空気が漂う空間だが雅斗がふと視線を向けると宮殿の奥の端の方の一角に多くの瓦礫が集められ小さな物はその近くに散乱していることに気付いた。

       

       

       

       

      (此処ってさっきオメガモンが言ってた神様の城だったのか─?)

       

       

       

       

      謎の襲撃者によって殺されてしまったデジタルワールドの神イグドラシル。
      イグドラシルの死がこの世界と息づくデジモン達に危機を齎しかけているのだとオメガモンは言っていた。

       

       

       

       

       

       

      『イグドラシルはデジタルワールドを支える最も重要な柱…彼の御方とはじまりの街、この二つが揃ってこそデジタルワールドは成り立つ。
      今はその柱の片方が喪われ、世界はとても不安定な状態になってしまった…同じ過ちを繰り返す訳にはいかない…。
      イグドラシルの後継となる神がヤツの手に掛かることなど無いように…もう二度とヤツに神を殺させたりしない。
      もう二度と、絶対に──私はそう誓ったのだ…騎士の誇りに賭けて必ず護り抜くと…』

       

       

       

       

       

      何処か痛みを堪えた表情で語るオメガモンを見て雅斗はオメガモンがイグドラシルのことを心から慕っていたのだと感じ取った。
      だからこそイグドラシルから託された最後の希望を彼は全力で護ろうとしているのだ。

       

      イグドラシルが心から愛したデジタルワールドとデジモン達を護る為にも──。

       

      宮殿に着いて程なくしてから優烏と莉子の二人も目を覚ました。
      目覚めたばかりの二人が落ち着くまでゆっくりとしていて欲しいとオメガモンに言われ、案内された客間で四人は各々がソファに座ったり窓から見える景色を眺めている。

       

       

       

       

       

       

       

       

       

      それから少しすると控えめなノックがしてティーセットを持ったシスタモン達がやってきた。

       

       

      「ごめんねぇ?休んでたところを。まともな物は用意出来なかったんだけどサ、アンタ達みんなお腹空いてるでしょ?」

       

      「オメガモンさまからみなさんにさしいれですー!あまーいおやつですの!」

       

      「緑茶がいい時は私に言ってね、因みに緑茶はガンクゥモン師匠からのよ」

       

      「えー!良いんですか!?」

       

      「嬉しいです…!緊張しっぱなしで実は喉がカラカラで…」

       

       

       

       

      オメガモン達からの温かい心遣いに優烏と莉子は目を輝かせる。
      慣れない異世界で言い出し難い状況ではあったのだがお腹がペコペコで喉も渇いていたのだ。

       

      シスタモン達が用意してくれたお茶やお菓子を食べながら漸く一息つくことが出来た四人。
      これを食べ終えればいよいよオメガモン達からより詳しい話を聞くことになるだろう。

       

      彼の言っていたデジブラッドとはテイマーとは何なのか。
      その詳細を知る時べきは刻一刻と迫っていた。

       

       

       

       

       

       

       

       

       

      休息を終えた四人はシスタモン達の案内で宮殿の廊下を歩いていた。
      向かっているのは元々ロイヤルナイツがイグドラシルと会う為に作られた謁見の間だという。
      ロイヤルナイツ達は今その謁見の間を仮の拠点とし、襲撃者がデジタルワールドの各地で多くのデジモン達を巻き込みながら引き起こしている暴動を鎮圧しているらしい。

       

       

       

       

       

      「長いこと歩かせちゃって悪いねェ、此処が謁見の間だよ」

       

       

       

       

       

      シエルはそう言って目の前の大きな扉を指差した。
      紋章のようなレリーフが装飾として幾つも施された純白の扉。
      ブランとノワールが扉を開くと其処にはオメガモンとガンクゥモン以外にもロイヤルナイツだろうデジモン達が居た。

       

       

       

       

       

      「──オメガモン、彼らがそうなのか?」

       

      「ああ、そうだクレニアムモン。彼らがデジブラッドに目覚めている人間の子供達だ」

       

      「──想定より幼いな…」

       

      「言うな、重々承知している──」

       

       

       

      重苦しい空気が漂う中、騎士達の間からひょこひょこと動く影が見える。
      ソレは四人の姿を捉えると一目散に駆け出し突撃してきた。

       

       

       

      『『『『やっと来たーー!!待ってたんだよ(んだぜ)!!!』』』』

       

      「うわっ!な、なんだぁ!」

       

      「き、君達は──?」

       

      「わぁ、ちっちゃい!可愛い!」

       

      「この子達って成長期のデジモン達じゃない…!
      オメガモン、どうして…?」

       

       

       

       

       

       

       

       

      雅斗の所には赤いベルトを付けたアグモン、透弥の所にはガオモン。
      そして、優烏の所にはパタモンと莉子の元にはフローラモン。
      それぞれ四体の成長期デジモン達が一斉に飛びついてきたのである。
      嬉しそうに満面の笑顔を浮かべて一様に待っていたと話した。

       

       

       

       

       

       

       

       

      『───待ちたまえ君達。全く…まだ自己紹介も済んでいないんだぞ?』

       

       

       

       

       

       

       

       

      ひょいひょいと慣れた手付きでアグモン達を回収する騎士。
      ピンク色の鎧と細身の姿が印象的なデジモンだ。
      そしてアグモン達を抱えたまま、雅斗達の方へ向き直る。

       

       

       

       

       

       

       

       

      「あ…っ!えっと、貴方は…?」

       

      「私はロードナイトモンだ、お嬢さん。この子達を連れて来たのは私だよ」

       

      「わーん!ずーるーいー!ボク達もみんなと話したいー!」

       

      「オレ達が選ばれたってロードナイトモン言ってたじゃんかー!」

       

      「パタモン!アグモンまで!うぅ…ロードナイトモン様、すみません…でも彼らに会えたのが嬉しくて…」

       

      「つい先走っちゃったのー!ワザとじゃないよぉ!」

       

       

       

       

       

       

       

       

      ロードナイトモンとアグモン達のやり取りに雅斗達はつい吹き出してしまった。
      ありふれていて何処か微笑ましい光景。
      襲撃者が現れなければずっと続いていたであろうデジタルワールドの平穏さを表しているかのようだ。

       

       

      ロードナイトモンがアグモン達を再び床へ降ろすとアグモン達は我先にと雅斗達に駆け寄ってきた。

       

       

      「なぁ、なぁ!オレ!オレ、アグモン!よろしくな、テイマー!」

       

      「──はぁ?」

       

      「僕はガオモンと言います、貴方のパートナーデジモンです」

       

      「パ、パートナー…?」

       

      「ボク、パタモン!えへへ、ずーっと会いたかったんだよ!」

       

      「わ、私に──?」

       

      「あたし、フローラモン~!やっと会えたね、嬉しいね!」

       

      「テイマーって、一体…?」

       

      「──我々デジモンと力を合わせることが出来る人間をこの世界では古くからテイマーと呼んでいる」

       

       

       

       

       

       

       

       

      莉子がそう言うとオメガモンが一歩踏み出して静かな声で言った。
      四人と彼らの側で嬉しそうにはしゃぐアグモン達を交互に見つめる。

       

       

       

       

      「我々デジモンはデジゲノムと言うもので構成された生物だ、人間に例えると遺伝子だな。
      電脳核デジコアはこのデジゲノムで構成されデジタマを経て我々デジモンは生まれる」

       

      「デジ、ゲノム…」

       

      「そして、そのデジゲノムは君達人間のみが持つデジブラッドと共鳴することでより強靭つよくなっていく。
      それを繰り返していくと従来の同じ個体よりも能力値が遥かに高くなるというケースが確認されているのだ」

       

      「僕達の中にそんな力が…?」

       

      「ああ…、デジブラッドはデジタルワールドには存在しない人間界由来のものだからな…。
      君達の力を借りることが出来ればヤツを、神を殺したあのデジモンを倒せるかもしれないんだ…」

       

       

       

       

       

      そう口にするオメガモンの身体は微かに震えていた。
      まだ神への襲撃事件が起きて日が浅い。
      襲撃者に対する怒りが込み上げてくる時があるのだろうと思った。

       

       

       

       

       

      「分かったぜオメガモン、俺はアンタに協力する」

       

      「僕もだ、そんな事情を抱えているのなら放ってはおけない!」

       

      「あたしもよ!可愛いこの子達が生きてる世界の危機なんでしょ!?」

       

      「わ、私…私…っ!弱いし、どんくさいけど…私も気持ちはリコ達と一緒です…!」

       

      「君達──。ありがとう、本当にありがとう…」

       

       

       

       

       

       

      オメガモンがそう言うと四人の目の前にキラキラと光り輝くモノが現れた。
      恐る恐る雅斗達が光に手を伸ばすとソレは静かに彼らの手の中に収まった。
      自分達がよく使っているスマートフォンによく似た機械のようだ。

       

       

       

       

      「今君達が手にした物はデジヴァイスという。テイマーの証だ」

       

      「へぇー、なーんかスマホに似てんなぁ~」

       

      「…アプリによく似た物が幾つか入っているみたいだ」

       

      「ホントね、デジタルワールドの地図みたいなのもあるじゃない!これは便利だわ…」

       

      「あれ?充電器を差し込む所が無いね…? 充電とかしなくてもいいのかな…?」

       

       

       

       

       

       

      それぞれがデジヴァイスを手にどんなものかと触っている。
      オレンジ、青、ピンク、白。
      手にした四人をそれぞれ象徴するようなカラーになっているデジヴァイスだ。

       

      デジヴァイスを手にして興味津々と触ったりしている雅斗達に獅子のような騎士が歩み寄ってきた。

       

       

       

       

       

       

      「デジヴァイスを使うのならコレも使うといい、受け取ってくれ」

       

      「んぁ?何だこりゃ…?」

       

       

       

       

      彼から四人に向かって小さな光が手渡された。
      光は四人が持つデジヴァイスにふわりと宿ると画面上に先ほどまで無かった物が浮かび上がった。
      それぞれに[攻][守][速][進化]などといった日本語が書かれた物や[??]と何も記されていない物もある。

       

       

       

      「アプリケーション、なのか…?」

       

      「私はロイヤルナイツのドゥフトモンという者だ、テイマーとデジヴァイスについて研究もしていてね…。
      その研究の過程で得たもので開発したDアプリというものだよ、そいつを使うとアグモン達を進化させたり戦いの最中にサポートが出来るようになる」

       

      「えっ、サポート!?うわぁ、それってスッゴく便利かも!」

       

      「じゃ、じゃあ…!このDアプリを使えば一緒にこの子達と戦えるようになるんですね…!」

       

      「うん、分かりやすくいうとそうなる。
      何も書かれてないDアプリはパートナー以外の協力してくれるデジモンの技を一つにつき一つまで記録出来るようにしてある。
      デジモンの技は多種多様、パートナー達が本来扱えない技をまさかというタイミングで使って敵の意表を突くのに丁度いい。
      他にもデジタルワールド各地に特殊なポイントがあるからね、その地に由来した便利な力をアプリとしてダウンロード出来る筈だ」

       

       

      獅子のような騎士はドゥフトモンと名乗り、デジヴァイスとテイマーについて研究していると話した。
      四人にDアプリについてドゥフトモンはとても丁寧に解説してくれる。
      Dアプリという物はテイマーにとってもパートナーデジモンを状況に応じて的確にサポート出来る優れ物ということだ。

       

       

      「まあ進化アプリに関しては今の段階では成熟期くらいまでしか進化させられないかな…」

       

      「えっ、そ…そんな…!成熟期以降にはなれないなんて──!」

       

      「何ちゃんと理由はあるよ、子供達。まずは落ち着いて私の話を聞いてくれるかい?
      まだ君達はテイマーとパートナーになりたてだ、つまりは初心者だ、半人前と言ってもいい。
      未熟な君達に成熟期以降の完全体、究極体クラスの強大な力を扱えるとでも?
      そんな無茶はまだ君達にはさせられない、君達のパートナー達もそれだけの力の負荷に肉体が耐えられるようになっていないんだからね」

       

      「──うっ、ご…ごめんなさい…」

       

      「謝る必要はないよ?君達はデジタルワールドが置かれたこの現状を憂いでそう言ってるのは分かっているとも。
      寧ろ子供の君達に其処までさせている我々にも問題がある、だから謝らないでおくれ。
      今はお互いにデジブラッドとデジゲノムを共鳴させて一歩ずつ強くなっていって欲しいな。
      そうすれば成熟期以降の進化も可能になっていくからね」

       

      「ドゥフトモン……」

       

      「いいかい、子供達。襲撃者は本当に手強い敵だ、ロイヤルナイツですらヤツを今まで見たことが無くどんな能力を持つか未知数の相手…。
      今の君達が挑める相手ではない、焦らなくていいんだ…焦りは一番良くないよ」

       

       

       

      ポンポンとドゥフトモンが優烏の頭を撫でた。
      焦らずに一歩ずつ育ってゆけと子供達を激励する。

       

      デジタルワールドを護る為にオメガモンに喚ばれた四人の人間の子供達。
      この後、子供達は聖域《サンクチュエール》を旅立ちデジタルワールドを巡ることになる。

       

       

       

       

       

      聖域を旅立って数週間。
      雅斗達は辺境近くのエリアにある村に休息の為に立ち寄っていた。

       

       

       

       

       

       

       

      「こ、これは…!」

       

      「争ってる…?どうして…!」

       

       

       

       

       

      植物系のデジモン達が所謂汚物系と呼ばれるデジモン達といがみ合っている。
      どうやら汚物系デジモン達を植物系のデジモン達が村から追い出そうとしているらしい。

       

       

      「今日という今日こそはこの村から出て行けー!」

       

      「そうだそうだ!此処は植物を愛するボクらの村だ!」

       

      「そ、そんな…っ!此処を追い出されたらオイラ達行く所が…っ!」

       

       

       

      殺気立つ植物系デジモン達は汚物系デジモン達に鋭い眼光を向ける。
      雅斗達はそれを見て慌てて駆け寄って行った。

       

       

       

      「お前らー!喧嘩はやめろっ!」

       

      「争っちゃダメ!落ち着いて!」

       

      「──な、何だよオマエ達!」

       

      「に、人間だ!デジタルワールドに人間が居る!」

       

       

       

      乱入して来た雅斗達に植物系デジモン・トゲモン達は驚きの声を上げた。
      彼らは人間など見たことが無い。
      殺気立っていた視線が徐々に困惑の色になっていく。

       

       

       

       

      「お前ら!なんでデジモン同士で喧嘩してんだよ!」

       

      「に、人間に何が分かるんだよ!アイツら、汚いんだ!汚物系なんだぞ!」

       

      「だからって無理やり追い出すのは酷いよ…!」

       

      「に、人間…っ」

       

       

       

       

      汚物系のデジモン・スカモン達は自分達を庇う雅斗達の姿に目を見開く。
      今まで同じ汚物系のデジモン以外から庇われた経験が殆ど無いのでどうしたらいいのか分からないでいた。

       

       

       

      「ボクらが育ててる花が上手く育たないのもソイツらの所為だ!
      葉っぱも黄色くて斑点だらけになるし!色もおかしくなって!」

       

      「葉っぱが…?おい、君達!ちょっとそれを確認させて貰おうか!?」

       

      「えっ?な、なんだ?!こら!勝手に村に入るなよっ!」

       

       

       

       

      透弥はトゲモンが制止するのも聞かずに村の中へと入っていく。
      雅斗達も慌てて透弥に続いた。

       

      ズカズカと村の中へ入っていった透弥はトゲモン達が管理している畑を見つけ出し彼らの話していた花を確認する。
      確かに花の葉には幾つもの黄色い斑点が浮かび上がっていた。
      心なしか花自体も色が褪せていて全体的に元気がないようにも見える。

       

       

       

      「トウヤ!どうだ!原因分かったか!?」

       

      「ああ、これは間違いなくあのスカモン達が原因じゃない!
      コレは土壌事態に問題がある!」

       

      「はぁ…っ!?アイツらが原因じゃないのかよ!」

       

      「そうだ!彼らは何も悪くない!」

       

      「そ、そんな…!じゃあ、ボク達が彼らにしたことは…!」

       

      「──残念だけど、冤罪で無実の彼らを責めていたんだよ…」

       

       

       

       

      駆け寄ってきた雅斗に透弥はそう答える。
      それを聞いたトゲモンが愕然とした様子で呟くと透弥は冷静に事実を告げる。
      トゲモン達がスカモン達にしていたことは無実の相手を冤罪で糾弾していたのだと。

       

      原因がスカモン達でないのなら何故畑の花達はこんな状態になったのか──。
      冤罪をかけていたこともだが原因がスカモン達ではなかったことでやり場のない感情を持て余しているようだ。

       

       

       

       

      「ボク達…なんてことを…っ、そんな…そんな…!」

       

      「トゲモン…」

       

      「彼らの所為だって思ってた…だって彼らが来てから花達がおかしくなって…」

       

      「いいや、それはきっと恐らく偶然だよ。元々この場所の土壌はもう限界だった。
      長年、手入れをしていなかったのもあるけれど…」

       

      「て、いれ…?」

       

      「君達は一度でもこの畑の土の手入れをしたかい?
      ただ種を植えて育てるだけを繰り返していればそれだけでも土壌から養分は失われて何も育たなくなる…」

       

       

       

       

       

      透弥の言葉にトゲモン達は何も言えなくなってしまう。
      指摘された通りだった、手入れなんていうものはずっとしたことがない。
      ただ種を植えれば花は美しく育っていたのだから。
      土壌というもののことを考えたことさえもトゲモン達にはなかった。

       

       

       

       

      「ねぇ、トゲモン達。此処は貴方達にとって大切な畑なんでしょう?」

       

      「そ、そうだよ!大昔から受け継いで来た大事な場所だよ!」

       

      「なら此処の土壌の養分を一度きちんと回復させましょうよ?
      スカモン達の力を借りればきっと養分の問題は解決出来る筈だわ」

       

      「─── へっ?」

       

       

       

       

      莉子から突然名前を挙げられたスカモンは困惑の表情を浮かべる。
      自分達が土壌の問題を解決?そんなこと出来る訳がない。
      少なくともこの時のスカモン達はそう思っていた。

       

       

       

      「あのね、聞いて!私達、人間の世界には堆肥っていうものがあるの!
      堆肥は土に足りない栄養を、養分を補うことが出来る物なんだよ…!
      それは家畜──つまり生き物の排泄物とかを発酵させたりして作ることが出来るの!
      だからスカモン達にはこの堆肥を作ることが出来る筈だよっ!」

       

      「た、堆肥って…ボク達昔見た人間界のデータにしか存在しないものだよ?
      そんなのをスカモン達がどうやって作るっていうのさ!」

       

      「堆肥の作り方は僕達が知っているさ!
      それをこのデジタルワールドで再現するよ、君達の前でね!みんなっ!」

       

      「ええ、学校でやった一週間の農業研修で学んだアレね!」

       

      「掘っても良さそうな所を掘って穴作ろうぜ!おい、穴掘っていい場所教えろよ!」

       

      「あとは必要な材料を集めましょう?あのね、落ち葉や貝殻はあるかな?」

       

       

       

       

      今の自分達が出来る最善をこの世界の為に尽くす。
      それが聖域から旅立った時に雅斗達四人が決めたことだ。
      デジタルワールドで暮らすデジモン達の為に今の自分達がやれることで貢献しようと。
      まだ襲撃者と戦える力が無い今はそういった小さなことを積み重ねていくしか術を持たないのだから。

       

       

      スカモン達は困惑を隠しきれなかった、明らかにこの人間達はやる気に満ちている。
      それもただ偶然出会っただけの自分達の為にだ。
      善意で村の外れに住むことを許され、住んでいるトゲモン達が育てている植物に異変が起きると余所者だった自分達は真っ先に疑われた。

       

       

       

       

       

       

      悲しくなかった訳ではない。
      ただ諦めた方が楽だっただけだ。
      繰り返される理不尽に慣れて感覚が麻痺していた。

       

       

       

       

      それに異を唱えて彼らは行動を起こしてくれている──。
      今まで一度も向けられたことのない温かな感情に傷付いていた心が少しずつ癒えていくようだった。

       

       

       

       

       

       

      「なぁ、なぁ…人間さんよ…。オイラ達…本当に役に立てるのか…っ!
      今までずっと役立たずで何処へ行っても最後は必ず出て行けって言われるだけのオイラ達に──」

       

      「ああ!寧ろこの中では君達が一番適任だよ!」

       

       

       

      透弥はそう言ってフッと表情を綻ばせた。
      それを見てスカモン達の目から大粒の涙が一気に溢れ出た。
      役立たずだと嫌われ続けてきたこれまでが報われていくような思いだった。

       

       

       

       

       

       

       

      「此処がシェルモン達が住んでる海岸、だね…!」

       

       

      雅斗達は二手に別れて堆肥作りを開始した。
      トゲモン達の村には雅斗と透弥が残り、堆肥を作る為の穴を掘る作業をしている。
      一方の優烏達は堆肥作りに必要な材料の一つである貝殻の入手を目指してシェルモン達の住む海岸に来ていた。
      きめ細かな砂が特徴的な美しい海岸線が目の前に広がっている。

       

       

       

       

      「わぁ~!綺麗な砂浜ー!」

       

      「きれーだねぇ!塩水が苦手だからあたしはちょっと入れないけど…砂遊びはしたいなぁ!」

       

      「はいはい、でも今日は砂遊びが目的じゃないからちょっと我慢してねフローラモン」

       

      「はぁ~い!」

       

       

       

       

       

      元気のいい返事をするフローラモンに莉子はクスクスと笑みを零す。
      シェルモン達を探して海岸沿いを歩いているともぞもぞと動く影を見つけた。

       

       

       

       

       

      「居たよ!この砂浜に住んでるシェルモン達だよ」

       

       

      村から道案内役として同行してくれているパルモンが指差す先にはヤドカリのように貝殻を背負った大きなデジモン達が居た。

       

       

       

       

       

      「シェルモン…っ!シェルモンー!」

       

      「んぁ?おお、パルモンかぁ!珍しいなぁ!」

       

       

       

       

       

       

       

       

      比較的近くに居たシェルモンにパルモンが声をかける。
      パルモンの声に気付いたシェルモンがのっすのっすとゆっくり振り返った。

       

       

       

       

       

      「シェルモン!あのね、お願いがあるんだよ…!ちょっといいー?」

       

      「おうおう!なんだぁ?言ってみろ!」

       

      「あのね、実はあたし達の村で ──」

       

       

       

      パルモンはシェルモン達にこれまでの経緯を説明する。
      痩せてしまった村の畑を元に戻す為に堆肥が必要であることとその堆肥を作る為に貝殻を探しているということを。

       

       

       

       

       

      「貝殻?んぁ、じゃあ…俺達の古い殻でいいならやるかぁ?」

       

      「はぇっ?!い、いいの…!?本当に…?」

       

      「ああ、いいぞぉ。俺達な、身体が成長するとよ今背負ってるのがどうしてもちっこくなっちまってな。
      それでよ、自分達で新しい貝殻作って成長する度に作り直した方に引っ越すんだ。
      今までなら背負ってた貝殻は粉々に砕いて海に流してたんだが役に立つんなら幾らでも持ってけよぉ!」

       

      「あ、ありがとう!シェルモン!とても助かるわ!」

       

       

       

       

       

      シェルモン達から快く貝殻を譲り受けて優烏達は意気揚々と村へと戻っていく。
      村に戻ると畑から少し離れた所に大きな穴が掘られていた。
      其処へ雅斗達がスカモン達と一緒に落ち葉を穴の中へ運び込んでいる。

       

       

       

       

       

      「マサト!トウヤ!」

       

      「ユエ、リコ!どうだった!?」

       

      「シェルモン達のおかげで貝殻が沢山手に入ったよ!
      これなら石灰を作れる筈だよ!」

       

      「そうか、ありがとう二人とも!じゃあ、早速石灰を用意しよう…!
      スカモン達は技を穴に向かって放ってくれ!」

       

      「わ、分かったぜ…!」

       

       

       

      透弥はスカモン達に指示を飛ばす。
      そして優烏達が持ち帰った貝殻をガオモンに砕いていくように言った。

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       

      「ガオモン、この貝殻を手頃な大きさまで砕いてくれ!」

       

      「了解です!トウヤ!」

       

       

      ガオモンはパンパンと音を立てて両手のグローブを合わせると貝殻に向けて何度もパンチを繰り返す。
      それを何度か繰り返すと貝殻には罅か入ってきた。

       

       

       

       

       

      「うぉぉぉっ!砕けろーーっ!みんな、あとは任せた!」

       

      「よーし集めるね~!フローラモン!」

       

      「オッケイ!任せてっ!」

       

      「おーっ!ばっち来ーい!ベビーバーナーっ!!」

       

       

       

       

       

       

      ガオモンが最後に放ったパンチで砕けた貝殻をパタモンとフローラモンが一カ所に集めアグモンがベビーバーナーで燃やしていく。
      やがてシェルモン達から提供された貝殻はアグモンの炎で全て石灰になった。

       

       

       

      「よし!みんな、この石灰をさっきの穴に運ぶんだ!」

       

      「「「おーーーっ!!」」」

       

       

       

       

      村のデジモン達も総出になって穴へ石灰を運び込む。
      既に穴の中に入れてある落ち葉やスカモン達を技で出した排泄物に先ほどの石灰を協力しながら木の棒を使って全体が馴染むように少しずつかき混ぜていった。

       

       

       

      「あとは定期的に水をかけて全体をかき混ぜてながら半年ほど置けば堆肥は完成だ…!」

       

      「ええ!?そんなぁ、堆肥ってすぐには出来ないの?」

       

      「ああ、それぞれの材料が混ざり合って発酵するにはそれぐらいの時間が必要なんだ…」

       

      「そんなぁ…」

       

       

      『──待ちたまえ、其処はぼく達も協力するよ』

       

       

       

      粗方混ぜ終えるとふぅと一息つきながら透弥は言った。
      堆肥がすぐに完成しないと知ってショックを受けるパルモンに申し訳なさそうに告げる。

       

      すると背後から自分達ではない声がして透弥とパルモンが振り返った。
      其処には自分達とは違う目的の旅の途中でこの村に逗留していたウィザーモンとソーサリモンが居た。
      魔法がデジタルワールドより高度に発展するウィッチェルニー出身である彼らは魔法が得意だ。
      ウィザーモン達は堆肥を作っている穴の前へ行くと杖を振るって魔法を発動させた。

       

       

       

       

       

      「「時よ、進め!」」

       

       

       

       

       

      二体がそう言うと穴の周囲だけが早送りしているような状態になった。
      こんもりとしていた中身の体積があっと言う間に萎んで半分ほどになっていく。
      二体の魔法で全体をかき混ぜたり水もタイミングに合わせて加えられていくようで色合いも発酵が進んで段々と濃い茶色になっていった。

       

       

       

       

       

      「──よし!この穴の中身だけ半年ほど時を進めた、堆肥は完成した筈だよ」

       

      「ほ、本当に?ウィザーモンとソーサリモンすごーい!」

       

      「あとは完成した堆肥を試してみて欲しい。効果ばかりはぼく達にも分からないから…」

       

       

       

       

      ウィザーモンがそう言うと村のララモンが小さな鉢植えを手にやってきた。
      鉢植えから見える植物は雅斗達にも馴染み深い葉の形をしている。

       

       

       

      「あれ?これってもしかして──」

       

      「人間界のデータをサルベージしてて見つけたの!イチゴっていうんでしょう??」

       

       

      ララモンはえへへと笑いながら人間界の植物に憧れていたのだと明かしてくれた。
      それで偶然見つけたイチゴのデータを見たララモンは一度で良いから食べてみたいとずっと憧れていたようなのだ。

       

       

      「よし、じゃあこのイチゴで堆肥の出来を試してみよう」

       

      「うんっ!イチゴ、イチゴ!」

       

       

      ララモンは嬉しそうな声で堆肥を混ぜた土の入った鉢にイチゴの苗を植え替える。
      適量の水をかけると再びウィザーモン達がイチゴの周りに魔法をかけていく。
      すると、イチゴの苗はみるみるうちに大きく育っていき幼年期達ほどの大きさはありそうなイチゴが実ってきた。
      瑞々しい赤色のイチゴが幾つも実り、苗を持って来たララモンの表情がキラキラと輝き出す。

       

       

       

      「出来たぞ!これは──凄いな!堆肥という物に此処までの効果があるとは…!」

       

       

      ソーサリモンは目を見開いて感嘆の声をあげた。
      スカモン達の個性と能力を最大限に活かして作られた堆肥は価値のある物として今証明された。
      大きく立派に実ったこのイチゴが何よりも証拠だ。

       

       

       

      「い、いただきます…っ!」

       

       

       

      ララモンは実ったイチゴを一つ採り、恐る恐る口に運ぶ。
      最初の一口は小さかったがそれでも零れんばかりにジューシーな果汁が溢れ出しララモンの口いっぱいに甘酸っぱさが広がった。

       

       

      「お、美味しい~~!みんな!凄い、凄いの!堆肥凄いよ!
      とっても甘くて美味しく育ってるよ!」

       

       

      ララモンが美味しそうにイチゴを頬張る姿を見て村のデジモン達は完成した堆肥の価値を知る。
      そしてそれは追い出そうとしたスカモン達が示した価値でもある。

       

       

       

      「スカモン達…、本当にごめんよ!酷いこと言ったり追い出そうとしたりして…っ!
      本当に、最低なことをしてしまった…!」

       

      「あ、あの…!オ、オイラ達は──?」

       

      「うん…、君達が嫌でなければ…此処に居て欲しいな…。
      でもこれまでのボク達からの仕打ちを考えれば難しい、よね…。本当にごめん…」

       

       

      深々と頭を下げて謝罪するトゲモン。
      勘違いしていたとは言え、冤罪でスカモン達を傷付けたのは事実だ。
      謝って許されるほど簡単なものではないとトゲモンにも分かっている。
      だからこそ、トゲモンはスカモン達に無理強いをするようなことはしなかった。

       

      スカモン達が望むのなら知り合いの居る村へ案内しても良い、勿論彼らが作ったこの堆肥の価値を伝えた上でだ。
      彼らが素晴らしい物を生み出せると伝われば受け入れてくれる村だってある筈だ。
      それだけの価値がこの堆肥にはある。
      勿論、作り方を教えてくれた人間の子供達への感謝も忘れてはならない。

       

      子供達のおかげで村の大切な畑が蘇ったのだから。

       

       

       

       

      「オ、オイラ達…!住み慣れた此処が良い…っ!今まで通り隅っこで構わねぇから!」

       

      「──っ、やだな…そんなこと出来る筈無いじゃないか…。
      この村を救ってくれたのに、さ…」

       

      「トゲモン…っ」

       

      「ボクの家、畑の近くにあるんだよ…。畑の隣、空き家が幾つかあるんだ…良かったら君達は其処に──」

       

       

      ポロポロ、ポロポロと向かい合うお互いの両目からは涙が零れ落ちている。
      それ以上はもうお互い言葉にはならなかった。
      心にある思いを言葉にするのは難しい、それは人間もデジモンも変わらなかった。

       

       

       

       

      『本当にありがと~!頑張れ~っ!』

       

      『何時でも村に来て良いからね~!!』

       

       

       

      あれから二日後。

       

      村のデジモン達から感謝のもてなしを受けた雅斗達はこの村から辺境へ向かって出発することにした。

       

      村の入口には見送りに来たトゲモンやスカモン達の姿がある。
      出発前に彼らが教えてくれたことだが完成した堆肥を村の産業にしたいという話が出たらしい。
      まだまだ堆肥も改良が必要なので産業として実現するのは最低でも数年は先になるということだがそれでも彼らが協力し合って生活出来るようになっていくのは喜ばしいことだ。

       

       

       

      「ホント良かったよな…アイツら…」

       

      「ああ、お互いの個性を活かして共生していくのはとても素晴らしいことだよ…」

       

      「元の世界に戻ったらあたし達にも出来ることやっていきたいわね差別や偏見が無くなるように…。
      あの子達に出来たんだもん、あたし達にだってきっと出来るわよ」

       

      「うん…、一人だけじゃ難しいけれど…みんなで協力し合えばきっと出来るよね…!」

       

       

      差別や偏見のない世界。
      お互いを尊重し、お互いの個性を認め合って世界がより豊かになるように力を合わせる。
      それは亡きイグドラシルが世界の在り方の理想としてずっと掲げていたものだ。
      デジタルワールド全体にそれが浸透して行ったらゆくゆくはダークエリアにも広めて行きたいとずっと願い続けていたのである。
      取り零されるモノが一つでも多く無くなるように、と──。

       

      図らずも雅斗達はイグドラシルの描いた夢の一歩を手助けした形になる。
      村を後にする雅斗達の胸は温かいモノでいっぱいに満たされているのだった。

       

       

      四人とパートナーデジモン達の進む旅路の果て。
      その最終目的地であるデジタルワールドの辺境に待つ最恐の敵・襲撃者。
      熾烈な戦いになることだけは雅斗達もアグモン達も覚悟している。
      まだ究極体という高みには至れていないがそれでも、もう事態を見過ごすことは雅斗達には出来なかった。
      デジタルワールドで懸命に生きるデジモン達の温もりを彼らは知ってしまったから。

       

       

       

       

       

       

      この時、雅斗達は気付いていなかった。
      喚ばれて導かれたこの旅の最後がどのような結末になるのか。

       

       

       

       

       

       

       

      今はまだ彼らは知らない──。

       

       

       

       

       

       

       

      To Be Continued.

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    • #3962

       こちらでは初めまして、夏P(ナッピー)です。
       サロンの頃に幾度か感想を書かせて頂いたことがありましたでしょうか。プロローグ前編と表題されながら既に3話ぐらいあったのではないかと思うほど内容が濃い。イグドラシルと言えば毎回敵に回るか利用されてるかのイメージが強いものの、此方の作品では明確に世界を愛する善なる者として描写されているのでしょうか。少なくともオメガモンは敬愛する存在として彼の君を捉えているようなので、目に映る範囲では善政を敷いたと見て良いのでしょう。
       それが散った。謎の襲撃者の手で。何故だ!!
       
       主人公四人と彼らが呼ばれたことに関するデジブラッドという単語。現時点では「人間だけが持ち得るもの」という言及で、明確にそれが何なのかは明言されていないかと思いますが、デジブラッドなので何か不安を煽られる。人間の血とデジモンのそれが交じり合った時に何かが起きる的な奴を警戒してしまいますね。
       旅立った四人が最初にやったことが戦いではなく、いがみ合う二つの種族の仲を取り持つことだったというのが非常に印象的で、本作の印象として根付きました。ウィザーモンとソーサリモンが便利過ぎる。人間としての知識とデジモンの力を以って事態の収拾を図るという点では、図らずも既にテイマーとパートナーが双方存在する意味はあったのだと思える限りでした。
       堆肥の作り方を一から実践するという意味では、まさしく本来の意味での異世界転生。
       果たしてこの先彼らがどのような旅を続けるのか期待です。

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