デジモンに成った人間の物語 第三章の④ ―化け物―

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    ユキサーンユキサーン
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      見慣れた悪夢があった。

      何もかもが手遅れの惨劇が巻き起こっていた。

      夜に見る悪夢そのものとしか言えない光景が目の前にあった。

       

      「はぁっ、はぁっ、はぁっ……!!」

       

      僕は息を切らしそうになりながらも走る。

      橋の上に造られたらしい町の全ては炎を帯び、多くのデジモンたちにとっての害悪と化していた。

      炎の熱の強さもそうだけど、炎に込められた毒か何かが強烈なのか、炎でダメージなんて大して受けそうにもない体をしてるはずの、全身が炎で形作られた人型のデジモン――メラモンや、ティラノモンからも悲鳴が聞こえてくる。

      炎に耐性を持たないデジモンがどうなったのかなんて考えるまでもない。

      崩れて役割を失った建物、燃える瓦礫、その下敷きになって、焼かれながら潰れて消滅――死んでいく住民デジモン達の姿が目に入る度、それを助けようと手を伸ばすけれど、そのどれにも間に合うことはない。

      今、この状況から住民たちが助かるためには、湖に身を投げてでも町から脱出する以外に無い。

      どんな手段を使ってでも、それが出来ないデジモンの助けにならないといけない。

       

      僕自身さえ、建物の倒壊に巻き込まれてしまいそうになりながら――そんな風に考えていた矢先のことだった。

      まだ助けられるデジモンが何処かに残っていないのかと、走りながら周囲を見回していると、その先で耳を突く声と音を聞いた。

       

      「――そぉーら、よっと!!」

      「――ぎゃあああ!?」

       

      何処か楽しげな声。

      どこまでも苦悶に満ちた叫び。

      それ等に混じる、肉が抉られる水っぽい音。

      それ等が聞こえたほうへ視線を送ると、そこで――赤い複眼を有し、真っ黒な体色をした悪魔のようにも竜のようにも見える姿をしたデジモンの――デビドラモンが、住民デジモンのはらわたを引き裂いて赤色を撒き散らしているのが見えた。

      何もかもが手遅れだった。

      僕が何かをする間もなく、目の前で、おそらく成長期と思わしき四人のデジモンが、悲鳴を上げながら――潰されたり、いくつかに分けられたり、食べられたりした。

      やめて、たすけて、の一言すら他の音に掻き消されて。

      手をかけたデビドラモンも、その事実に何の興味も無い様子で、次の獲物を見つけようと視線を右往左往させるだけ。

      気付けば、辺りではデビドラモン以外にも全体的に黒だったり白だったりなデジモン達が楽しげに暴力を振るっていて、手足をもいだり体の『中身』を覗き込もうとしてみたりそうして当たり前に見ることになる反応を愉しんだりしていた。

      きっと、僕の視界にいないというだけで、他の場所で同じようなことをしているデジモンは、いるんだろうなと思った。

      何故か自然と、そんな悪意しか無い予測が頭に浮かんだ。

       

      ――たすけて。

       

      ――たすけろ。

       

      いつかのように。

      ヒーローは、来なかった。

      救いの手は、間に合わなかった。

       

      「――ぁ、ぁ――」

       

      何をしているつもりなのかは、不思議と察せられた。

      狩りをしているつもりなんだ、こいつらは。

      愉しんでいるんだ、この状況を。

      つまりそれは、こいつらは何処かからあの大きな爆弾を放ってきた誰かの、仲間であるということ。

      大体のことを理解した途端に、僕は僕の胸の中にグチャグチャな何かが沸き立ってくる感覚を覚えた。

      答えなんて貰えるわけがない言葉の羅列ばかりが頭を過ぎる。

      怖い、嫌だ、なんで、やめて、殺さないで――許せない。

      視界が真っ赤に染まる。

      僕は、自分がどんな顔をしているのかも、どんな姿をしているのかも、解らないまま走り出して。

       

      「――ん?」

      「うわあああああああああああああああああ!! お前たちっ、お前たちいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいッッッ!!!!!」

       

      泣き出すような叫び声と共に、襲いかかっていた。

       

       

      ◆ ◆ ◆ ◆

       

       

      ドォォォォォン……!! と、橋の上で倒壊のドラムが鳴り響く。

      ベアモンの背中を追って走り続け、ようやく追い付きそうになった矢先、その間の空間を両断でもするかのように崩れてきた建造物の断末魔だった。

      危うく押し潰されそうになって、半ば反射的に跳び退いた後には、ベアモンの姿は見えなくなっていた。

      遮蔽でしかない建物の向こう側から、彼の声一つ聞こえない。

      というか、周囲が悲鳴と怒号まみれで、離れた位置では聞き取れそうにない。

      気付けば、ユウキ達の走ってきた道も倒壊した建物と帯びた炎に遮られてしまっている。

      ルートを狭められ続ける中、彼等は破れかぶれに言葉を吐き出していた。

       

      「アルス!! おい、無事なら返事をしろっ!? おいっ!!」

      「クソ!! ユウキ、こっちだ!! こっちから迂回してくぞ!!」

       

      いち早くルートを特定したエレキモンを追う形でユウキは再び走り出す。

      炎を帯びてない道は少なく、下手に進化でもして体を巨大化させようものなら、即座に焼かれるであろうことは想像に難くなかった。

      自分がなっているギルモン、そして進化後の姿であるグラウモンという種族は、どちらかと言えば熱に強い体質をしているとユウキは認識していたが、そんな彼でも無事ではすまないと直感してしまえる程度には強い熱が込められていると感じた。

      完全体デジモン、スカルグレイモンのものと考えれば納得こそ出来るが、その納得が安心に繋がるわけもない。

      こんな地獄の環境で、先に行ってしまったベアモンは無事なのか? 町の住民に助かっている者はどれだけいるのか? と、焦燥を帯びた思考ばかりが過ぎる。

      だからこそ、彼は一つ失念していた。

      ミサイルを放たれた――つまり襲撃の対象とされたこの町に来た時点で、彼自身もまた襲撃者の標的となりえることを。

      倒壊した町の中をエレキモンと共に進んでいった最中のことだ。

      先を行ったベアモンが聞いたように、彼等もまた悪意を垣間見る羽目になったのだ。

       

      「――やめてよっ!! なんで……がぎっ」

       

      喉笛に岩石でも突っ込まれて潰された、とでも例えるしかない断末魔の声。

      それを認識した直後に、ユウキは自分の右頬と右肩に生暖かな何かが付着したことに気付いた。

      反射的に目だけが動き、その視界が捉えたものは、

      見ず知らずのデジモンの黄色い眼球と、

      何か鋭利な刃物のようなもので剥がれたと思わしき、恐竜のそれと思わしき牙を備えた顎の断片と、

      べとべとした、真っ赤な――

       

      「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!?!?!?」

       

      ユウキは。

      状況も忘れて、思わず絶叫していた。

      体が震え、呼吸が荒くなる。

      恐怖が思考のノイズとなって頭を埋め尽くす。

      焼き付いた光景が、その大元がデータの粒子となって消え去っても、思考から離れない。

      何が、誰がこんなことを――そんな疑問の答えは、もうすぐそこまで来ていた。

       

      「おや? まだ活きの良さそうなのが残ってるじゃないか。剣なんて握っちゃってまぁ……」

       

      嘲るような声に、自然と視線は誘導される。

      恐らくは町の商店通りと思わしき場所に辿り着いたユウキとエレキモンの目の前に佇んでいたのは。

      全身を白色の装甲で覆い、四肢から鋼鉄の刃を生やした、人に近い輪郭を有した赤い単眼の、凶器そのもの。

      エレキモンも、デジモンの種族に関しては『アニメ』を観た経験から多く知り得ているはずのユウキでさえも、その正体に確信を得ることは出来なかった。

      いや、例え出来たとしても、納得など出来るわけが無かった。

      何故なら、

       

      (――何だコイツ。白い体色にクワガタの顎に赤い一つ目、鋼鉄の体と刃……まさかブレイドクワガーモン? いや、だけどコイツの体格は明らかに人型のそれだぞ……!?)

       

      そいつは既存の知識に当てはめられない構造を有していた。

      本来であれば四肢など持たず、個体によっては体もそう大きくはない、下手をすると成長期のデジモンにも劣る小柄な体格の――大きいものでも大人の人間程度の――成熟期のデジモンであったはずなのに。

      目の前の白色凶器には、少なくとも人間のそれと大差無い四肢があり、指があり、単眼に加えて鼻と口を備えた顔がある。

      まるで、ブレイドクワガーモンと呼ばれるデジモンの特徴を、人型のそれに無理やり整えさせたかのような、異形の何か。

      クワガーモンの名前を有する種に人型の体格を有するデジモンが全くいないわけではないにしろ、こんなモノの存在は、少なくともユウキの知識の中には無かった。

      本能的にも所業的にも危険極まると直感したのだろう、トールはいつになく緊張を帯びた声で問いを放っていた。

       

      「――何だ、テメェは……」

      「何でもいいだろ。どうせお前達も俺の一部になるんだし、何より――」

       

      じじじ、じじがががが、と。

      刃の鋭さを帯びた両足から、街路をなぞる音が鳴る。

      たった今目撃した住民デジモンの死因が、ミサイルの炎に焼かれた事ではないと知覚したその時点で、ミサイルを発射した者とは別の襲撃者の存在は思考に過ぎっていた。

      だが、それにしたって予想外にも程がある。

      そもそも、何故こいつはミサイルに焼き尽くされた今の町の環境下で平然といられている……?

       

      「――言っても解んねえだろ。ただのデジモンじゃあな」

      「――ッ!!」

       

      疑問を解く余裕など、言葉を紡ぐ時間など、二人には与えられなかった。

      退屈げな言葉の直後、白き凶器の人型の姿がブレる。

      ビリ、と空気の弾ける音を知覚した時には、恐るべき速さでもって白き人型の凶器がトール目掛けて右手の刃を突き立てようとしていた。

      直前、直感的に駆け出し、白き人型の凶器とトールの間にユウキが割り込み、手に持った剣を盾にしていなければ、今頃トールは何かをする余地も無いまま串刺しにされていたかもしれない。

       

      「ぐっ!!」

      「ユウキ!? くそっ、お前ッ!!」

       

      突き出された刃の重みが、剣持つ手と腕と足に圧しかかる。

      剣を握る、なんて行為には到底向いてると思えない指代わりの三本爪が震え、思わず剣を放しそうになりながら、どうにか耐える。

      耐えられた、という時点で幸運と呼べた。

      拾い物である鋼鉄の剣の強度次第では、盾にした剣ごと体を貫かれてしまっていただろうから。

       

      「……へぇ?」

       

      が、幸運がいつまでも続くわけもない。

      初撃を防がれた事実に意外そうな反応を示しつつも、白き人型の凶器は続けざまに左手の刃を振るおうとしてくる。

      どう見積もっても上位の進化段階に位置する相手、それを前になりふり構っていられるわけもなく、ユウキは二撃目が振るわれる直前に口から火炎の弾を白い凶器の人型の顔面目掛けて吐き放った。

      必殺の意志を込めて放った一方で、ダメージは期待していない。

      狙いはあくまでも、至近距離で炸裂した炎の爆発によって間合いを一度離すこと。

      自分自身の攻撃の威力に意図的に吹っ飛ばされながら、彼は仲間へ言葉を飛ばす。

       

      「トールッ!!」

      「解ってらぁ!!」

       

      ユウキが凶器の一撃を防いだその間に間合いを離し、その姿をエレキモンからコカトリモンの姿へと進化させていたトールが、力強くユウキの声に応える。

       

      「ペトラファ

      「エアーナイフ」

       

      瞬間、斬撃。

      必殺の言霊を紡ごうとしたトールに向かって、爆煙の向こう側から真空の刃が放たれた。

      それは白い羽毛に覆われたトールの胴部に直撃すると、強い衝撃によって上体を仰け反らせる。

      衝撃によって熱視線が上方に逸れ、石化の効能を有した必殺技は何もない空間を横断して消える。

       

      「ぐ……っ……!?」

      「トール!?」

       

      遅れて、苦悶。

      見れば、真空の刃が直撃したトールの胴部には浅くはない切り傷が刻まれており、そこから血が流れ出ていた。

      距離が離れていようと、この殺傷能力。

      加えて聞こえた必殺の言霊に、ユウキは目の前の異形がどうあれ自分の知る種族のそれであると理解させられる。

      進化して下手に体を大きくすると危険、なんて前提は最早無視する他に無かった。

       

      (やるしかない……!!)

       

      この敵は。

      付け焼き刃でどうにか出来るような類ではなく、逃げようと思って逃してくれるほど鈍くもない。

      殺す気で戦わなければ、自分も仲間もやられる。

      その認識、その実感、その危機感が。

      ユウキの体内の電脳核を急速に回転させ、鼓動を強め、その身を光の繭に包み込む。

      瞬く間に体格が何倍にも増大し、銀色の頭髪が生え、耳代わりの蝙蝠の羽のような何かに寄り添うような形で2つの角が生え、両肘には時に刃の役割を担う突起が生え、そうしてギルモンという種族はグラウモンという種族として成熟に至る。

       

      「――ギルモン進化、グラウモンッ!!」

       

      ドスン、と。

      足から伝わる反動が変わった事実はおろか、ギルモンだった時に握り締めていた剣が手から離れている事実さえ意識に入れず、グラウモンに進化を果たしたユウキは敵を見据える。

      恐怖、混乱、焦燥――そして、それ等全ての感情が入り混じった怒り。

      彼自身、今の自分がどんな表情を、どんな眼を他者に向けているのか、把握出来てはいない。

      だが、少なくとも。

      それが、殺意という名の炎を帯びたものであることは、確かだった。

       

      「ふぅん、進化出来るのか。随分とデカくなったなぁ……」

      「――うるせえ。さっさと消えろォッ!!!!!」

       

      黄色の瞳が獣性を宿すと同時、グラウモンが咆吼する。

      構図だけで言えば同じ進化段階のデジモンが、二対一で襲い来る明白な数的不利。

      にも関わらず、特に焦りの無い様子で白き凶器の異形は涼しげに言い切っていた。

       

      「デカいのは――狩り応えがありそうだ」

       

       

      ◆ ◆ ◆ ◆

       

       

      そして、同刻。

      ベアモンのアルスの背中を追って行った二人を追いかけに向かったミケモンのレッサー、銀毛のレナモンのハヅキ、護衛対象のホークモンの三名もまた、燃え盛る町の中で倒壊していく建物に阻まれ、迂回を強いられていた。

       

      「チッ、なんつー惨状だ……湖に隣してる町なら消火活動の一つぐらいはとっくに行われてるもんだと思ってたが……」

      「水を用いた器具自体はあるのでござろう。が、このレベルの破壊を突然差し向けられたことに伴う住民達の混乱がそれを遅らせている。何より、そうした『動ける』デジモンを優先して狙われれば、この混乱の最中に消化活動に勤しめるデジモンはいなくなってしまう……」

      「全て織り込み済みってコトかよ。大火力で荒れ地にした上に皆殺しとか、どんだけこの町に恨みがあるんだか」

       

      レッサーとハヅキの二人のように、いかに身軽に動くことの出来るデジモンでも、完全体デジモンの放った攻撃によって生じた火炎、それを帯びた建築物の合間合間を縫って行くのはリスクの側面が大き過ぎる。

      ただでさえ、混乱の渦中にいる住民デジモン達の生き残りが数少ない道を通っているのだ。

      小柄な体格のレッサーから見ても隙間と呼べる空間がどんどん無くなり、どれだけ迂回しようとしてもある程度は停滞させられてしまう。

      まだ町の中に残っている住民デジモンは、頑張って消化活動に出ようとしているヤツか、単なる逃げ遅れなヤツか、襲撃者の手から逃れられなくなった不運なヤツか、先走ってしまったベアモンと同じく――可哀想なヤツを見捨てられないヤツぐらいだろうが、いずれも町の中を進まなければならない一行にとっては妨げとなる。

       

      (状況が状況だとはいえ、合流場所も何も決めてないまま護衛対象を見えない場所に置いておくわけにはいかねえ。くそっ、こりゃまた恥ずかしい姿を見せるしかなくなりそうだな……)

       

      「お二人さん、クソ熱いが大丈夫か?」

      「僕のことは気にしないでください。それよりも、早く三人に追いつかないと……」

      「ああ。ここを襲撃しているのが予想通り奴等であるのなら、三人の命が危ない。遭遇していなければいいが……」

      「……さっきも訳知り顔で言ってたが、その奴等ってのは何なんだ? そんだけ危機感を抱くとなると、まさか究極体だったりする?」

      「そうした世代の話だけでは説明出来ない奴等でござる。こんな状況でなければ、後で説明するつもりでござったが……ッ!!」

       

      不意に、ハヅキの言葉が途切れる。

      その理由を、レッサーもホークモンも疑問には思わなかった。

      情報共有一つしていられる状況ではなくなった――つまる所、自分達の目の前にも敵が現れた事を知覚したのだから。

      そいつはレッサー達の姿を視認するや否や、内に根付いた嗜虐心を隠さぬ様子で言葉を並べてくる。

       

      「――おや? 迷子でしょうか。こちらは出口ではありませんよ? 案内してさしあげましょうか?」

      「……この状況でそんな愉しげに喋れるやつが案内する場所を、都合良く信じてもらえると思うか? 口元から血の臭いが滲んでんぞ、ヘタクソ」

      「酷い言い草ですねえ。まぁ、畜生に知性を期待するだけ無駄という話かもしれませんが」

       

      悪辣な売り言葉を発するそのデジモンは、レッサーにとって少し見慣れない姿をしていた。

      獣の双角に悪魔の翼、上が青で下が黒の高貴な衣装に見を包み、雨が降っているわけでも日が照っているわけでもないのに傘を携え、蹄の二足で立つ。

      人型のデジモンなど昔から珍しくはないが、顔つきや胸元の膨らみがバステモンのそれを想起させることも相まって、レッサーは少しだけ親近感のようなものを覚えていた。

      無論、それを掻き消すレベルの警戒心を伴って。

       

      (……こいつ、確かに変な気配がすんな。姿を見たことがねえだけならまだしも、何だ……? この感じは……知っているような知らないような……)

      「……マトモなデジモンではないらしいな。何モンだ?」

       

      問いに、敵は僅かに肩を竦めると、こう返した。

       

      「答えてやる必要があるとでも?」

      「無いだろうな」

       

      直後。

      山羊の双角を生やした悪魔が持つ傘、その内側に魔法陣のようなものが瞬時に浮かび上がる。

      避けろ、と口にする暇も無かった。

      カ……ッ!! と、紫色の毒々しい閃光が魔法陣の中より生じ、レッサー達目掛けて浴びせかからんとする。

      直前、ホークモンを抱き抱えたハヅキと、その様子を横目に知覚したレッサーが、真横へと飛び退き紫の光線を回避する。

      それに驚いたりすることなく、むしろ意味ありげに微笑しながら続けざまに光線を放つ山羊頭に対し、瞬間的にミケモンの姿からバステモンの姿へとその身を進化させたレッサーが、疾風の如き速さでもって肉薄する。

      首筋を貫かんとしたバステモンの右手の爪を山羊頭が魔法陣を盾とすることで防ぎ、女性的な要素を含んだ怪物二名が至近で睨み合う。

       

      「火遊びなど、このご時世に褒められたものではありませんわよ――汚濁」

      「おやおや、この程度は後の祭りに向けた余興に過ぎませんよ――メス」

       

      ガガガガガガッ!! と、猫爪の連撃と魔法陣から放たれる紫の弾が炎の橋に音響を撒き散らす。

      互いの攻撃は数秒拮抗するが、やがてレッサーの方が光弾の勢いに圧されだした頃に飛び退き、間合いを取る。

      僅かな攻防、それだけでレッサーは目の前の敵を即断で評価した。

       

      (……まずいですわね。コイツ、少なくとも今この状況でやり合っても得はないですわ……)

       

      恐らくはバステモンと同じ、完全体の――それも上位の能力を有している――デジモンなのだろう。

      そして、もしもこのレベルの強さのデジモンがこの惨劇を産んだ何者かの手下か何かでしかないのなら、一行の誰もマトモに太刀打ちすることが出来ないであろうことは、容易に想像が出来る。

      このままでは、まず確実にチーム『チャレンジャーズ』の子供達は殺される。

      そして、そうさせないためにはこんなヤツと戦っている場合ではなく。

      同時に、誰を襲うかも解らない相手から目を離すわけにもいかない。

      どうすることがこの状況において仲間や依頼主達の生存に繋がるか、彼女は僅かに考えて、近くのハヅキとホークモンに告げた。

       

      「……お二方。ここは私に任せ、先に向かってアルス達と合流してくださいまし」

      「レッサーさん!?」

      「ご安心を。依頼を放って死ぬ気は微塵もありません。生かしたいと思うのでしたら、急ぎなさい」

      「――っ!!」

      「……承知した。必ず間に合わせる!!」

       

      意図を汲んだハヅキが銀毛のその身をレナモンのそれからキュウビモンのそれへと進化させ、ホークモンがその背に乗ったのを確認すると、即座に炎の町の上を駆け抜けていく。

      その姿を見届けたりはせず、レッサーがあくまでも山羊頭の悪魔に視線を向けていると、当の敵対者から嘲るような言葉があった。

       

      「そういう台詞、世間一般的には死亡フラグって言うと思うんですけどね? 知り合いにレオモン種でもいらっしゃったり?」

      「知りませんわよ。低俗の騙る一般なんて」

      「自己犠牲は得しない、と告げてあげているのですけどね」

      「犠牲だなんて、決めつけるのは早計でしてよ? 持久戦は私の得意分野ですわ」

       

      煽り文句に拒絶の言葉。

      そのいずれも、それぞれの殺意と共に並べられる。

      レッサーは前後左右に不規則なステップを交えながら山羊頭の視界の外に出て、山羊頭はその度に紫の光線で薙ぎ払ったり、魔法の弾で狙い撃ったりしていく。

      真正面からの攻撃は完璧に防げても、死角からの攻撃は防ぎきれないため、視線は逸らせない。

      余裕ぶった煽り文句を口にしながらも、目の前のバステモンというデジモンが、自分を害しかねないレベルの殺傷能力を備えたデジモンであるという認識が山羊頭の思考にはあるらしい。

      そうでもなければ、この手の弱い者いじめが好きそうな悪党は、多少なり油断して隙の一つでも晒してくれるものだ。

      警戒心は、ある。

      だからこそ、山羊頭も隙は見せられない。

      それはレッサーにとって、速やかに殺すという困難においてはマイナスの要素でしか無い一方で、適度に注目を集めて仲間に及ぶ危険性を軽減させるという役割においてはプラスの要素であった。

       

      (辺りの煙の濃さから考えても、ヘルタースケルターは効果が薄いでしょう。狂わせて自滅させられるのなら話は早いのですけれど、それには普段以上の時間と至近距離が必要。今はギリギリまでこの場に留めておくことを最優先とすべきですわね。子供達と依頼主達が合流して逃げ出す流れに持ち込めない限り、それで事態が好転するわけでもありませんが……)

       

      今、この場で襲撃者達を打倒することは出来ない。

      生きることをを最優先とし、善悪好悪を今は捨て置け。

      炎に包まれたこの町で戦い続けていたら、待っているのは確実な死だ。

      何故なら、

       

      (急いで逃げ出しなさい子供達。長々と戦っていては、三発目が放たれた時点で全て終わってしまいますわよ……!!)

       

       

      ◆ ◆ ◆ ◆

       

       

      そして。

      無策で無謀な独断先行の結果など、考えるまでも無かった。

       

      「っ……がぶっ……!!」

       

      グリズモンへと進化していたアルスの口から、少なくない量の赤が漏れる。

      見れば、その腹は裂かれ、右肩は防具ごと抉られ、あちこちに浅くは無い傷がつけられている。

      ラモールモンと対峙した時のように片目を抉られたりこそしてはいないが、流れ出る血の量は明らかにその時のものを上回っていた――血だまりと言える程には。

      ミサイルの炎に炙られ、嫌なニオイばかりが、充満する。

      そして、アルスが苦悶の表情を浮かべる一方で、

       

      「ハハッ……手間取らせてくれたな、本当に。ここまで仲間がやられるなんてね……」

       

      元凶たるデビドラモンは嗤う。

      実際問題、単なる殴り合いの話だけであればグリズモンの方がデビドラモンとその仲間達よりも明らかに優勢だった。

      腕力にしても膂力にしても上回っていたし、飛行能力がある一方でデビドラモンには飛び道具の類の技が使えないらしく、空襲してきた所を逆にその勢いを利用してカウンターを見舞わすことが出来る程度には、技量も上回っていた。

      デビドラモンの周囲にいた仲間のデジモン達も、当の仲間の攻撃に巻き込ませたり、弾き返したりすることで速やかに倒し終えていた。

      その上で。

      身体能力も技量も上回っていながら、それでも血だまりが出来るほどの傷を負わされている理由は主に二つ。

      一つ目は、倒したデビドラモンの仲間のデジモン達のデータが、即座にデビドラモンの方へと吸収――ロ度され、戦いの中で回復も強化もされてしまっていること。

      そして二つ目は、その複眼に似て真っ赤な爪を生やした右手に、戦いの最中に掴まれてしまったものがあるからだ。

       

      「それにしても、優しいんだな君って。人質のつもりなんて無かったのに、こうするだけで動きを鈍らせるなんて」

      「――ぁ……ぅ……」

       

      コテモン。

      アルスには知る由も無いが、それは剣道と呼ばれる人間の世界の競技で用いられる衣装に身を包んだ、爬虫類型の成長期デジモン。

      本来であれば竹刀を手に敵と戦うデジモンだが、その手には既に竹刀が無い。

      頭に被った面も一部割れ、中に隠された顔が微かに見え、漏れ出る声はとてもか細い。

      瀕死、と呼ぶ他に無い状態であることは明白だった。

       

      「……その子を、はな……せ……!!」

       

      別に、このコテモンはアルスの知り合いというわけではない。

      たった今、この惨劇の中で偶然生き残っているのを見つけただけの、微塵も繋がりの無いデジモンでしかない。

      だけど、弱々しい声を漏らし涙さえ浮かべるそれは、物語であればヒーローの手で助けられなければならない誰かのものにしか、アルスの目には映らなかった。

       

      とても見捨てられない。

      これが野生のデジモンの、弱肉強食の自然の摂理の話であればまだ飲み込めた。

      でも、町や村である種の枠組みを作って、繋がりの輪を作って協力しあっていたデジモン達の命が、こんな風に食い散らかされるのは。

      凄く、嫌だった。

      辻褄の合わない考えだと解っていても、嫌だった。

      どの道助からない、と心のどこかで気付いていても。

      当然、デビドラモンがアルスの訴えに耳を傾けるわけも無い。

      彼からすれば、戦いの最中に発見して捕まえたコテモンは、自らの糧として以外の意味も価値も無く、一度アルスと距離を離してから一息に食べてしまうつもりしか無かった。

      だが、その行為にアルスは過剰に反応してしまった。

      冷静さを欠いて真正面から突っ込み、それまでは喰らわなかった尻尾の刺突をマトモに受けてしまうぐらいに。

       

      その時点で、デビドラモンの視点から右手で掴み取った糧は別の価値を生むことになった。

      後のことは、明白。

      手も足も、腹も額も。

      意識を縛られた状態で、同じ成熟期への進化に至っている相手を前にマトモに抵抗することなど出来ず、アルスはデビドラモンのやりたい放題に傷付けられた。

      だからアルスは血まみれだし、その優劣が覆ることは無いと思える程度には血を流させたという確信を持つデビドラモンには、まだ余裕がある。

      もう、人質なんて使うまでも無く喰らえる。

       

      「さて、と」

       

      だから。

      ぐちゃっ、バリッ、という音がした。

      アルスの目の前で、デビドラモンの口の中に放り込まれたコテモンの命が、あっさりと噛み潰され取り込まれた音だった。

       

      「――――」

      「食事はさっさと済ませないとだ。ちょうど良く強い肉も見つけられたしな」

       

      もう、アルスとデビドラモンの周りに他のデジモンの姿は見えない。

      見えないだけで、離れた位置にいる仲間の声は確かに響いているはずだが、その声も今のアルスの耳には聞こえない。

      助けられなかったというどうしようも無い現実と、頭の中で繰り返される誰かの悲鳴。

      そして、睡魔にでも襲われたような意識の明滅が、アルスを縛る。

       

      ――たすけろ。

      ――たすけろ。

      ――たすけろ。

       

      「死ね」

       

      無論、そんなことなど知ってもどうでもいいデビドラモンがやる事は一つだった。

      鉤爪の尻尾を槍のように突き出し、アルスの――グリズモンの胴体を刺し貫く。

      瑞々しい音と共に胴体を灼熱の感覚が奔り、三本の鉤爪で掴み取られて持ち上げられた彼の体は、そのまま壊れた家宅の残骸に投げ付けられる。

       

      「――が、は……」

       

      ガラガラと派手な音と共に焦げた木材が砕け、鮮血が飛び散り、許容を超えたダメージにアルスの体はグリズモンのそれからベアモンのそれへと退化してしまう。

      ボロボロの状態で投げ出され、うつ伏せの格好になったアルスに、もう戦う力は残されていない。

      動きたいと思っても、既に意識のほうが限界だった。

       

      (……ごめ、ん……)

       

      それが、この日のアルスの最後の思考だった。

      彼の意識は暗闇に沈み、そして……。

      目の前に転がったベアモンの死に体を見て、デビドラモンは静かに胸をなで下ろしていた。

      町を爆撃したことで抵抗するデジモン、そして生存するデジモンがいることは今回の出撃において前提としていた部分であり、報復によって多少なり子分がやられてしまうことも想定の範囲内ではあった。

      対峙した相手が、ミサイルの火力でも仕留められないほどの力を持っていたのなら、尚の事。

      だが、まさかたった一体の成熟期デジモンに、同じ成熟期デジモンであった自分の子分達がここまで倒されてしまうとは思わなかったし、何より強さとは異なる部分で不可解なことがあった。

       

      (何でオレの呪眼が効かなかったんだ? あんなに視線を交わしたのに)

       

      デビドラモンの深紅の複眼には、睨み付けた相手の身動きを封じる呪いの力が宿っている。

      格上の相手にまで通用するものではないが、同格の相手にはまず通じる隠れた影響力を有しており、同じ成熟期であろう――いや、それどころか進化が一時的なものならばまだ成長期を脱却していない疑惑さえある――グリズモンには、通用しない理由など無いはずだった。

      にも関わらず、戦闘中のグリズモンはデビドラモンの呪いの眼の力を受けても平気な様子で、動きが鈍くなることは無かった。

      疑問は残る。

      が、彼はそのことについて今この時点で考える気にはならなかった。

      早く残飯を喰らって自分達の拠点に戻る。

      考え事は後回しで良い。

      そう考えて、彼はその右手を伸ばしてベアモンの体を掴み取ろうとした。

       

      (まぁいいか。喰らってしまえば、それで終わりだ)

       

      その行為を止められる者はいない。

      ただ一人で突っ走ってきた愚者に間に合う者はいない。

      だから、

       

      「――は?」

       

      その右手を閉じた時。

      掴み取ったはずのベアモンの体の感触が無い事に気付いたデビドラモンが疑問の声を発したのは、当然の反応だったのかもしれない。

      腕を上げると、つい数秒前まで自分の目の前に倒れ伏していたはずのベアモンの姿が、見えなくなってしまっていた。

      咄嗟に逃げたのか、誰かが眼にも留まらぬ速さで助け出したのかと思い左右を見回してみても、やはり誰の姿も見えない。

       

      (消滅したか? いや、それなら少しぐらい粒が出てロードが出来ているはず……)

       

      獲物は何処へ消えたのか?

      解けない疑問に嫌な予感を覚えた次の瞬間、

       

       

      「痛……ぇッ!? 誰だ!?」

       

       

      デビドラモンはその背中に灼熱の感覚を覚え、怒りの声を上げる。

      誰かが自分の背中に、その牙で噛み付いた。

      その事実を痛みから察し、デビドラモンは左手で背中に噛み付いた誰かを鷲掴みにしようとして、失敗した。

      鷲掴みにされるよりも早く、その誰かがデビドラモンの背中を蹴って間合いを離したからだ。

      そして、即座に振り向いたデビドラモンは不意を打った誰かの姿を視認し、その顔に驚愕の色を浮かべた。

       

      「な……っ、何でそんな平然としているんだ!? 死に体だった癖に!!」

      「――ひとつ星。あんまり良いモン喰ってねぇな、小僧」

       

      視界に映ったのは有り得ざる姿。

      十数秒前に確かに無力化し、自分の手で死に瀕させたはずの獲物。

      ボロボロな格好はそのままに、右瞳が赤色に左瞳が緑色に染め上がったベアモンが、その口元から血を滴らせながら立っていた。

      平然と、確かに。

       

       

      ◆ ◆ ◆ ◆

       

       

       

      なんなんだ、こいつは。

      それが、自分の尾で胴体を刺し貫き、退化を経てもなお死んだも当然の状態にしたはずの獲物の姿を見た、デビドラモンの率直な感想だった。

      この姿に至るまでの過程でそれなりの数、デジモンを糧として殺してきた身の実感として、どのぐらいの傷を負わせれば致命傷になるのか彼は理解しているつもりだった。

      だからこそ、目の前の獲物――ベアモンの平然とした様子に驚きを隠せない。

      一時的な進化の最中に受けたダメージは、確かに退化と共にある程度無かったことになる。

      だが、それは結局ある程度と呼べる程度の話でしかなく、まして致命傷を受けての退化であれば身動き一つ取れなくなって当然だ。

       

      (どういうことだ。この頑丈さ、普通に考えてありえないだろ……?)

       

      にも関わらず、ベアモンは明らかに軽快な挙動で動けている。

      無理をしているとか、疲れを押し殺しているとか、そんな素振りは見当たらない。

      呪眼が通用しなかったことといい、変化した目の色といい、このベアモンはいったい何者だというのか――そんな疑問など答える気もないといった調子で、ベアモンは一度首をコキリと鳴らした後、デビドラモンに対して駆け出してきた。

      グリズモンの姿の時のそれを超えるスピードに対し、デビドラモンはされど動揺したりはせず、素早く右腕を振り下ろす。

      が、ベアモンもまた反撃に動じることなく、振り下ろされた右腕の真下をスライディングで潜り抜け、そのまま両手を地に着けると力を込めて跳ね上がった。

      身軽に放たれたドロップキックはデビドラモンの腹部に直撃し、成長期デジモンのそれが出力出来るとは思えぬ衝撃が彼の電脳核を揺らしていく。

       

      「グ……!? お前ッ!!」

       

      即座にデビドラモンは左手で腹部付近にいるはずのベアモンの体を掴み取ろうとするが、その手に獲物を掴んだ感触は無く、別の部位から異なる感触が返ってきた。

      即ち、尻尾。

      自分の尻尾が掴まれている、と気付いた時には遅かった。

      ベアモンはその両手と右肩でデビドラモンの尻尾の先端に近い部分を掴み取ると、

       

       

      「ふんっ」

      「な……うおおおおっ!?」

       

      ぐい……っ!! と。

      デビドラモンの体を、一本背負いのような挙動と共に、燃えて倒壊した建物の瓦礫に投げ込んでいく。

      重量を感じさせる音が響き、苦悶の声が遅れて漏れる。

      瓦礫が帯びていた炎が体に燃え移る、なんてことにはならなかったようだが、自らの重量をそのまま攻撃力に転換した一撃を受けて、デビドラモンの口元からは血が滲んでいた。

      成長期、と呼ばれる普通のデジモン達とは一線を画す力。

      獲物でしかなかった存在が、続けざまに痛手を負わせてきている事実。

      その原因も理由も何も解らないデビドラモンの心に浮かんだのは、驚きや恐怖……ではなく、欲望であった。

      デジモンは、デジモンを喰らえば喰らうほどに強くなる。

      喰らうデジモンが強ければ強いほど、尚の事。

       

      (こいつを喰らえば、俺は更なる力を手にすることが出来る!!)

       

      負ける、殺されるという可能性は、確かに恐れに繋がるだろう。

      だが彼にとって、自分を打ち負かしそうなほどの強さは、翻ってそれを踏み潰した時の成長の大きさ――そしてそれに伴う歓びに直結する。

      ある種、戦闘種族たるデジモンらしい欲求と思考回路。

      不測の事態さえもプラスに考えるその姿勢は、彼自身仲間から皮肉を交じえられながらも褒められたことでもあった。

      一方で、獲物としての位を知らぬ間に上げられたベアモンはと言えば、デビドラモンから視線を外しながら、少し困ったような表情を浮かべていた。

       

      「……あ、いけね。加減を誤ったか。ガキ共と顔合わせする前には戻しとかねえと……」

       

      見れば、その視線は自らの左足に向けられており、デビドラモンの巨体を小柄な身の丈のまま投げ飛ばす際に支えとした反動なのか、視線の先にある左足からはどくどくと血が流れ出ていた。

      よく見ると、骨格も少し潰れているように見える。

      痛みに苦しんだりしている様子は無い。

      言葉が帯びる危機感も、玩具を誤って壊してしまった子供か何かのように軽いものだ。

      調子を確かめるように触れながら、その視線はデビドラモンのほうへと戻される。

      戦意が衰えるどころか強まった様子の邪竜を見て、僅かに呆れを宿した声色で彼は言う。

       

      「力量差を察したなら、さっさと逃げればいいものを」

       

      直後に。

      ベアモンは、後ろに向けられていた自分の帽子のつばを前に向かせ直し。

      デビドラモンは構わず、自身の周囲に暗黒のエネルギー弾をいくつも展開させていく。

      闇の種族が好んで扱う攻撃技の一つ、ヘルクラッシャー。

      単なる物理攻撃と比較して、エネルギーの消費が大きい事も相まってグリズモンには使わなかったその攻撃手段を必要と感じる程度には、目の前のベアモンの能力を評価したのか。

       

      「仕方ねえ」

       

      しかし、直撃すれば並みのデジモンの肉体は粉砕されかねない技を前に、特に動揺する様子もないままベアモンはその言葉を呟いた。

      死の宣告として。

       

       

       

      「――進化――」

       

       

       

      直後の事だった。

      ベアモンの体を光の繭が覆い尽くし、その内側で彼の体は瞬きの間に再構築されていく。

      存在の要たる電脳核が逆巻くごとに、表皮が剥がれ、輪郭は溶けて、臓腑の全てが掻き混ぜられ、異なるカタチへと書き換えられる。

      浮かび上がった輪郭を新たな色が満たし、剥き出しとなったワイヤーフレームに毛皮が張り付き、瞳に意志の炎が灯る。

      そうして現れたのは、四足歩行の骨格という一点こそ類似していても、グリズモンとは異なる種族だった。

      目元の蝙蝠の羽で覆い、四肢に鋭利な刃を束ねて備えた、血を貪る魔性の狼。

      成熟期の、アンデット型ウイルス種。

       

      「――サングルゥモン――」

       

      夜風が、その毒々しさすら覚える紫の獣毛をなびかせる。

      暗夜に現れたその姿を、つい少し前に見せたそれとは異なる成熟期に進化したという事実を前に、されどデビドラモンは深く考えずに闇のエネルギー弾を解き放った。

      一発一発がデビドラモン自身の握り拳の三倍近くの大きさを誇るそれ等は、ほぼ同時にサングルゥモン目掛けて飛んでいく。

      サングルゥモンは直進する。

      エネルギー弾の隙間を駆け、デビドラモンとの間合いを詰める。

      ベアモンの姿の時点で、そのスピードが並みのそれではないことはデビドラモンも把握していた。

      だからこそ、続けて繰り出した両手の爪の一振りも含め、避けられるのは予定調和。

      本命は、死角からの攻撃を見切っての尻尾の鉤爪!!

       

      「獲ったぁ!!」

       

      最初の噛み付きといい、尻尾を掴んでの投げといい、二度も死角から攻撃を繰り出されたのだ。

      目の前の敵が、グリズモンとは異なり死角からの攻撃を好むことは、傾向として読み取れた。

      スピードで追いつけないのなら、追いつこうとしなければいい。

      動きを制限させ、隙をあえて見せて、致命の一撃を見舞えるチャンスを錯覚させれば、その瞬間こそが逆にこちらから獲物を仕留めるチャンスとなる。

      攻撃を受けることが前提にはなるが、体の頑丈さには自信があり、痛みさえ我慢すれば勝ち筋があるという希望的観測は、少なくとも彼にとって最適解として感じられるものだった。

      が、

       

      「選択肢としては悪くない」

       

      サングルゥモンは死角に回り込みながらも、近付いたりはしなかった。

      いや、厳密には近付こうとする動作自体はあったが、寸前で距離を置いていた――置き土産とでも言わんばかりに刃を投げ放ちながら。

      投げ放たれた刃が、先読みで動かされていた尻尾の先端の鉤爪に命中し、三つに分かれた鋭爪を傷付ける。

       

      「チッ」

       

      思い通りにいかなかった事実に舌打ちが漏れる。

      ダメージを覚悟して構えている以上、この程度で音を上げている場合ではない。

      それを自覚しているデビドラモンは、すぐさまサングルゥモンの姿を目で追っていく。

      暗黒のエネルギー弾を牽制として放ち、大振りの一撃を囮に本命を叩き込む。

      時には攻撃手段の役割も変えて、タイミングもズラし、サングルゥモンのスピードにも目を慣らしていく。

      デビドラモンの選択は、ある程度は間違いではなかった。

      サングルゥモンは真正面から攻める事に危険が含まれると認識していて、攻め口が死角に限られている。

      ベアモンの姿の時には小柄な体格を活かして懐に潜り込むことも容易だっただろうが、成熟期相応に大きくなったサングルゥモンの体では、あそこまでの大胆な接近は出来ない。

      やはり死角からの致命の一撃を勝ち筋としている、と確信した彼は気付けば口角さえ上げていた。

       

      (どんなカラクリがあろうと、一度退化に追い込まれた奴相手に削り合いで負ける道理はねぇ)

       

      ドラモンの名前を持つデジモンは、そんじょそこらのデジモンと比べても再生力が強い。

      多少の傷は気付けば塞がっている以上、致命傷以外に拘る理由は無い。

      殺されなければ、そのうち殺せる。

      魚が餌に食い付くのを待つ釣り人のように、機会を待つ。

      事実、最適解を選んだ結果として、サングルゥモンから致命の一撃を貰うことは無く、対してデビドラモンの爪は少しずつサングルゥモンの体を掠め始めた。

      あともう少しで、爪が血肉を捉える――そんな確信に明確な笑みが浮かんだ

       

      直後に。

      デビドラモンは、激しい眩暈に襲われた。

       

      「――な……?」

       

      傷はそこまで多く負っていないはずだ。

      血は大した量流れていないはずだ。

      町の獲物も、コイツにやられた仲間も自らが喰らって、力は十分に蓄えられていたはずだ。

      突如として自分の身を襲った倦怠感、頭痛に吐き気に、デビドラモンはそれまでの勝利への確信も忘れて動揺していた。

       

      前提が、崩れている。

      それも、全く気付かない内に。

      息が

       

      「……やれやれ……」

       

      倦怠感に動きを鈍らせたデビドラモンに向け、サングルゥモンは呆れたように口を開いていた。

      彼も彼で、デビドラモンの戦い方は間違いは無く、戦いが長引けば『もしも』は有り得るものと見ていた。

      無論、だからこそ戦いを長引かせる気など毛頭無く、サングルゥモンにとってこの異変は狙い通りのものでしか無いわけだが。

       

      「まさかとは思うが――」

       

      そう。

      デビドラモンの思考には、サングルゥモンの能力に対して一つだけ致命的な楽観があった。

       

      「――吸血鬼が、牙からしか『吸血』出来ないとでも思ってたのか? 流石に見くびりすぎだぞ」

       

      サングルゥモンとは、そもそも吸血――敵対者の生命たるデータを根こそぎ吸い尽くし、自らの糧とする事――を得意とするデジモンの一種だ。

      同じような性質を有するデジモンは他にも多々いるが、基本的には鋭い牙で他者の血を吸い取ることを特徴として語られ、それ等は有名になっている。

      だから、デビドラモンも牙での攻撃を最大源に警戒していた。

      事実、サングルゥモンに進化する以前の段階で、どうしてかベアモンの姿でもその牙で吸血を行っていたのだから、牙に警戒心を抱くのも当然ではあっただろう。

      だが、そもそも根本的な話として。

       

      牙からしか吸血が出来ない、なんて情報は語られてすらいない。

      吸血鬼と呼ばれる存在を根源としているデジモン達の血肉は、どのようなカタチであれ血を吸うことを可能としている。

      つまり、

       

      「指であれ刃であれ、血に触れさえすれば吸うことは出来る」

       

      デビドラモンの血液は、攻防の最中に吸われ続けていた。

      一撃一撃、体に傷をつける度に、そうして出血させると同時に、それこそ生き物のように。

      牙ではなく、サングルゥモンが四肢から合間合間に投げ放ち、デビドラモン自身も生じた傷の程度を軽んじた――鋼鉄の刃によって。

      傷はすぐに治るから平気、出血も少ないから問題は無い、などと楽観が許される話ではなかったのだ。

      吸血を特技とするデジモンの攻撃という時点で、それ等全てに吸血の効果は含まれている。

      だから、表面上の傷の塞がり様とは裏腹に、デビドラモンの体力は着実に枯渇の一途を辿ってしまう。

       

      「博打は避け、抵抗する力を極限まで奪う。この程度は狩りの基本だぞ」

      「――っ、ぐ……」

       

      力は入らない。

      呼吸は荒れ続ける。

      疲れが許容ラインを超える。

      狩る側と狩られる側、その優劣は反転した。

       

      「さて、と」

      「――まだ、だ俺、はもっと」

      「仕上げだ」

       

      獲物の言葉を頭が受け付けられない。

      倦怠感と頭痛が重なり、思考も動作もおぼつかない。、

      そんな敵対者の事情など意に介さず、吸血狼は一気に駆け出していく。

       

      「命を貰うぞ」

       

      あっけない幕引きであった。

      動きが決定的に鈍ったデビドラモンの喉元にサングルゥモンが食らいつき、その勢いのまま上体に体重をかけて押し倒す。

      デビドラモンの身体を構築していたデータが、彼が自らを高めるために糧としてきたデータが、恐ろしい速度で抜き取られていく。

      デビドラモンの意識は恐怖や後悔を覚える間も無いまま闇に途絶え、肉体は数秒のちパラパラと塵となって消滅した。

      燃え盛る町の一角には、もうサングルゥモン以外のデジモンの姿は無い。

      敵対者の生命を吸い尽くした狼は、その視線を別の方向へと移しながら、呟く。

       

      (――クソマズいが、流石に闇の種族。糧としては最適か)

       

      向けられた視線の方角は、ベアモンが今に至るまで進んで行ったそれとは真逆。

      それまでの『自ら』の行動を拒絶するような形で、サングルゥモンは走り出す。

       

      「……ったく。雑兵でこれだと、ガキ共は大丈夫なのかね」

       

       

       

       

       

       

      鮮血が飛び散る。

      進化して大きくなった体のあちこちが痛む。

      グラウモンに進化したユウキとコカトリモンに進化したトールの二人は、揃って白き凶器の人型に圧倒されていた。

      燃え盛る橋の上で、立て続けに肉を裂く音が響く。

       

      「グウッ……!!」

      「ユ――ぐあっ!?」

       

      喉の皮膚を浅く裂かれたユウキが苦悶の声を上げ、それに反応したトールもまた眉間を斜めに斬られてしまう。

      反撃を繰り出しても、腕を振るったり体格差を活かして踏み付けようとしている頃には、その怪物はとっくに間合いの外に出ている。

      攻撃にしろ移動にしろ、速度が段違い過ぎる、というのがユウキとトール二人の共通の見解だった。

      白き凶器の人型の取っている戦法は、言葉にすればシンプルなヒット&アウェイに過ぎない。

      攻撃しては離れ、攻撃しては離れを繰り返し、という堅実な立ち回り。

      それ自体は別に特別なやり口ではないのだが、それが実行される間隔があまりにも短い。

      一秒ちょいで肉薄され、二秒目には狙われた部位を斬られ、そして三秒目には離れられている。

      ユウキの――人間の感覚で例えれば、蚊や蝿などの羽虫が刃物を携えて、通常と変わらぬ速度で迫っているようなものだ。

      辛うじて致命傷だけは免れられている理由など、本能に引っ張られての反射行動のおかげ以外の何でもない。

       

      (クソッ……このままじゃ嬲り殺しだぞ!! 何か……何か隙とか無いのか!?)

       

      息つく暇もない、とはまさにこの事だろうとユウキは思った。

      攻撃は、離れている時にも飛んでくる。

      腕や脚が振るわれる度に、エアーナイフと呼ばれる真空の刃を放つ技が繰り出され、ユウキとトールの体のあちこちを刻み血を流させてくるのだ。

      これまで、チーム「チャレンジャーズ」として少なくない数のデジモンと対峙してきた二人だったが、ここまでの速さを備えたデジモンとは戦ったことが無かった。

      速度の一点だけ見ても、トールからすれば山で交戦した狂暴化ガルルモンなど軽く超えている。

      敵が少なく見積もっても成熟期かそれ以上の位に位置するデジモンである以上、対抗するためにグラウモンに進化したこと自体はやむを得ない選択だったが、体格と重量の増大が戦況の好転に繋がることはなく、むしろミサイルの炎が燃え広がり続ける今の環境下では頑丈さと引き換えの移動範囲の制限にしかなっていない。

      このままではただの延命にしかならない。

       

      (エギゾーストフレイムは使えない。当たるとも思えないし、この状況で火気を増大なんかさせたら助かる可能性を余計に縮めちまう。出来ることは……)

      「プラズマブレイドッ!!」

       

      言霊と共に、ユウキは両肘にある刃状の突起に青白いプラズマを帯びさせる。

      直後に真空の刃が迫り来るが、その軌道にプラズマの刃を添える形で構えると、真空の刃はプラズマに分解されて無害化される。

      続いて白き凶器の人型が直接切り込みに来ると、ユウキは即座に刃を備えた腕を振るう。

      ジャギン!! と金属同士が擦れ合うような音が響いた時には、既にユウキの右腕のプラズマ帯びた刃と白き凶器の人型の右手にあたる刃が鍔迫り合いを起こしていた。

      至近距離で最小限の言葉が交わる。

       

      「――このぐらいは出来ないとね」

      「――八つ裂きにすんぞクソボケ」

       

      余裕と悪態、言葉一つ取り上げても互いの優劣は見て取れる。

      回数を重ねたことで、姿こそ捉えられずとも攻撃の感覚は掴めたため、勘頼りの一撃が偶然にも当たりはしたが、偶然は偶然――そう何度も起こりはしない。

      防戦を続けていても、勝機など来ない。

      だが、かと言って反撃の糸口も無い。

      ユウキにもトールにも、白き凶器の人型のスピードに追いつける能力なんて無いのだから。

       

      (どうすれば……)

       

      奇跡が起きて完全体に進化出来たとしても、その力でトールやアルスを助けられるビジョンが見えない。

      ただ強く大きくなるだけではどうにもならないのに、そのどうにもならないビジョンが頭から離れない。

       

      「ぐ、ぎああああああっ!!」

      「トールッ!!」

       

      そうこう焦っている内に、攻撃は更に苛烈になっていく。

      白き凶器の人型の刃がトールの体を横一線に切り裂き、ダメージの許容量を超えた体はすぐさまコカトリモンのそれからエレキモンのそれへと退化してしまう。

      マトモに立ち上がる力も残されていないのか、倒れ伏したままのエレキモンは息をするだけでも苦しげな様子だった。

      無理も無い。

      炎を必殺技として用いるグラウモンの体ですら、熱いと感じる環境――炎に関する攻撃手段を持っているわけでも無いエレキモンには耐え難いものだろう。

      そういう意味では同じ条件下にあるはずの白き凶器の人型は、何故こうも平然と動いていられるのか。

      何か、種族単体では説明出来ない何かを感じる。

      だが当然、それを推理している暇など、追い詰められている側の彼等には無い。

       

      「まずは一匹――」

      「――やらせるかッ!!」

       

      退化したエレキモンをそのまま即座に仕留めようとした白き凶器の人型の刃を、間一髪でユウキが左腕で遮ることでエレキモンを護る。

      だが、代償として刃はユウキの――グラウモンの左腕を貫き、直後に引き抜かれた箇所からは決して少なくない量の血が吹き出てしまっていた。

      激痛のノイズが思考に雪崩れ込む。

      意識するまでもなく瞳孔が細まり、苦しさに伴って怒りが増す。

      痛みを感じ続ける左腕どころか、脳髄さえ燃え上がるような感覚があった。

       

      「グ、グゥ……ッ!!」

       

      その灼熱を耐えるように、尻尾が地面を打つ。

      歯の隙間から炎をチラつかせつつも、意思を強く持つ。

       

      (――出来ない、なんて決め付けている場合じゃない)

       

      白き凶器の人型のスピードには追いつけない。

      グラウモンの巨体では小回りが利かず、鋭さを帯びたあの人型デジモンを捉えることが出来ない。

      ――そんな前提で考えて、無理なものは無理だと決め付けている自分自身の思考に、熱を宿す。

       

      (やらないといけないんだ。そんな自分に成れなければ、護る事も助ける事も出来やしないんだ)

       

      出来ない、という前提で考えてはどうにもならない。

      出来る、という自分自身を信じる他に道は無い。

      不可能だと思い知るに足る前例があるとしても、それを覆さなければ道が途絶えるというのなら。

      途絶えそうな道を、それでも進み続けたいと願うのであれば。

       

      「……死んでたまるか。死なせてたまるか……」

       

      誓え、そして戦え。

      それが出来なければ望みが叶わないという一点において、人間とデジモンの間に差は無いのだから。

       

       

       

      「――帰らないといけない場所があるんだッ!!!!!」

       

       

       

      言葉の直後だった。

      突如として、ユウキの体の周囲にノイズのような何かが生じたかと思えば、その姿がカゲロウのようにブレた。

      まるで、その姿が幻であったとでも言うように、深紅の魔竜の巨体がザラザラとした何かに変じ、直後に異なる何かが出現する。

      瞬きの間に現れたそれは、直進していた白き凶器の人型に対して同じく真っ向から突っ込むと、右手を拳の形に固めて殴りかかった。

       

      「何……!?」

      「うおおおおおおおおおおおおおっ!!」

       

      突然の出現に驚いたという事も相まってか、右の拳は見事と言えるほどにクリーンヒットした。

      その威力に圧されて後方へ飛ばされると、硬く鋭い金属の体の持ち主にとって、快くは無い音が遅れて響く。

      今回の対峙において、白き凶器の人型が初めてダメージらしいダメージを負った瞬間であった。

      予想外の出来事、それを引き起こした張本人の姿を、白き凶器の人型とトールはそれぞれ凝視する。

       

      銀の髪、赤い鱗肌、長い尻尾、黒の線と危険視の刻印――それ等を兼ね揃えた、ヒトガタ。

      グラウモンというデジモンの特徴を余さず有しておきながら、人型の輪郭と体格を有する何か。

      ユウキの、これまで見たことの無い異質そのものな姿に、トールは言葉をかけずにはいられなかった。

       

      「ユウキ……!? お前、その姿は……!?」

      「――っ!? え、何だ、この姿っ!!」

       

      他ならぬユウキ自身、自らの変容に驚いた様子であった。

      実際、彼自身の感覚の話として、ギルモンからグラウモンへと進化を果たした時のような力の漲りは無い。

      しかし一方で、体が軽くなったような錯覚がある。

      竜種らしく延びた口元や、頭に生えた羽や角、両肘付近から突き出た刃を為す突起、前屈姿勢に適した骨格の両脚、そして腰元から伸びる尻尾など、デジモンとして――グラウモンとして馴染んだ感覚と特徴はそのままでありながら。

      ふと両手にあたる両前足――のはずであった部位を見ると、そこには人間のそれに近しい五指があった。

      指先から伸びる爪の長さも、人間のそれよりほんの少し長い程度で。

      身長も、ギルモンだった時のそれというよりは、人間だった時のそれと近しいものへと縮んでいる。

       

      それはまるで。

      グラウモンという種族が持つ特徴、および戦闘能力を、人のカタチに無理やり押し込めたような姿だった。

      さながら、深紅の竜人。

      突然の自らの変容を目にして、ユウキは内心で驚きながら、されど静かに知覚する。

      異なる何かの、実感を。

       

      (……人間に戻れたわけじゃない。でも、人間に近付いたって感じだ……)

       

      細かい理屈など知りようは無い。

      だが、確実に言えることが一つだけあった。

       

      「――この姿なら、やれるッ!!」

      「チッ!!」

       

      明らかに血相を変えた様子の白き凶器の人型が、その身に電気を帯びて高速で動き回り、死角から右手にあたる部位の刃を正面に据えて突っ込んでくる。

      魔竜のカタチであれば、本能で感知することが出来ても体が追いつかないかもしれない速度。

      だが、人のカタチに成った今のユウキの体は、その動きを感知した上で動作を可能とした。

      矢の如く突き込まれた手刀に対し、ユウキはプラズマを帯びた左肘の刃を振り向きながら繰り出して受け止める。

      刃同士が衝突し、辺りに青白い電気が飛び散る。

       

      「エアーナイフ!!」

      「ふっ!!」

       

      一瞬拮抗した鍔迫り合いは、少し前の攻防の繰り返しのようにも見えたが、直後に白き凶器の人型は至近距離で真空の刃を放ってくる。

      即座にユウキもまたプラズマブレイドで応戦し、白き凶器の人型もまた苛烈な勢いで刃を繰り出していく。

      つい少し前までであれば、動きが間に合わなかった速度域。

      一つの動作に対して、二つ三つは動かれているかのような。

      でも、もうその優位は無いに等しい。

       

      速度は凄まじい。

      だが、もう感じてから動ける。

       

      「うおおおおおおおおっ!!」

      「ようやく歯ごたえのある獲物になったな!! 予想外の形ではあるけど!!」

      「いつまでもそんな風に、いられると思うなぁ!!」

       

      拳で、手刀で、プラズマブレイドで、凶器が人の形をしているような姿の怪物が生み出す刃を捌く。

      無論、全て完璧にとまではいかず、傷はどんどん増えていくが、それでも対応出来ている。

      残る問題は、

       

      (決定打が無い)

       

      言うまでもなく。

      このまま傷を負い続けていては、いつか倒れて戦えなくなる。

      自分が倒れるよりも先に相手を倒す――言葉にすれば単純だが、実現は難しいというのが実情だ。

       

      現時点でユウキ一人に取れる攻撃手段は、雑に分けて三種類。

      腕っぷしにモノを言わせた殴打と、両肘の突起を用いたプラズマブレイド。

      最も攻撃力があると断言出来る火炎の攻撃――エギゾーストフレイムは使えない。

      体が変化したこととは関係無く、燃え盛る建造物に囲まれた今の状況で軽率に使っては、仲間の退路を塞ぎかねないという危険性から。

      そして、結果として残る二種類の攻撃方法は、共に攻撃射程が短すぎるという欠点がある。

      高速で間合いを離しては詰め、離しては詰めを繰り返す白き凶器の人型に対しては、初撃こそ(偶然にも)動揺を突くことでクリーンヒットさせられたが、二度目はそう都合良くいかないだろう。

      こちらから間合いを詰めようとすれば真空の刃を放ちながら距離を取られ、かと言ってこちらから間合いを離すことは難しい。

      であれば、

       

      (――これしか無いな)

      「……くっ!!」

       

      内心で回答を出すと、ユウキはふとして白き凶器の人型に近付こうとするのを止め、すぐ近くに落ちている――進化の際に捨て置いていた――鋼鉄の剣《アーティファクト》を右の手に取り、次いで倒れ伏すトールの方へと素早く駆け出していく。

      それを見た白き凶器の人型は、ユウキのその判断に若干の疑問を抱いた。

       

      (今更手のひら返しして、どうしようも無いと判断して逃げる気か?)

      「フッ!!」

       

      彼は牽制するようにユウキとトールの間の空間に真空の刃を放つが、ユウキはそれを左腕で受けながら強行し、倒れ伏していたトールの首根っこを同じく左手で掴み取ると、そのまま自らの背にしがみ付かせていく。

      明らかに逃走最優先の動きと焦り様だ、と狩る側は判断した。

       

      (本当に、逃げる気か)

      「舐められたモンだな……!!」

       

      燃え盛る橋の上、倒壊した建造物だらけの戦場。

      その脱出ルートぐらいは彼の頭の中にも入っており、故にこそユウキの移動方向はしっかり読みきれていた。

      間合いも十分に離れ、獲物二匹は背を向けてこちらの姿など見てはいない。

      そして何より、深紅の竜人は疲弊している――魔竜として対峙していた時のダメージと疲労が消えたわけではないからだろう。

      絶好の機会、としか言えない構図と状況だった。

       

      「スパーク――」

       

      だから。

      狩る事を目的としている白き凶器の人型が、その全身に電気の力を溜め、必殺の一撃を繰り出す選択をしたのは、当然と言えば当然ではあった。

       

      「――ブレイドッ!!」

       

      言霊と共に、飛び込み姿勢にも似た体勢を取ったその身が光の刃と化す。

      明らかに、それまでの攻撃を超える速度で、一直線に突貫する。

      前に進むごとに、勢いを得るごとに、ただでさえ尋常ではない速度が更に増す。

      増した速度が、そのまま攻撃力として出力される。

      反応されて抵抗されたとしても、その抵抗ごと貫ける――そんな確信があった。

      だから。

       

      「――ユウキッ!!」

      「おおおおおおりゃあああああああああああ!!」

       

      反応ではなく、予測でもってユウキは抵抗した。

      右手に握り締めていた鋼鉄の剣を、今まさに突貫して来た白き凶器の人型に向けて、力いっぱい投げ放ったのだ。

      真っ直ぐに突っ込む光の刃に、それを回避するという選択肢は無く。

      鋼鉄の剣もまた、光の刃に吸い込まれるように、円を描きながら――命中する。

      ガギンッッッ!! という音が、強く強く響く。

       

      「な……ッ!? くっ!!」

      (――誘い込みか!? だが、このぐらいで……!!)

       

      鋼鉄の体を持つその怪物に、それ以下の硬度の剣を投げ放ったとしても大したダメージにはならない。

      だが、重量に伴う衝撃があった。

      竜の腕力でもって投げ放たれたそれは、光の刃と化していた怪物の速度を殺し、必殺の体勢を崩させ、思考を生じさせた。

      再び距離を置くか、それとも突貫を強行するか、彼は考えてしまった。

       

      そして、その思考こそが明確な隙だった。

      鋼鉄の剣を投げ放ったその時点で、踵を返して一転攻勢――勢いを殺しきれずに後退が遅れた白き凶器の人型に向かって走り出していたユウキは、その右腕に渾身の力を込める。

      もうこれ以上のチャンスは無い。

      ここで、この一撃で勝負を決めるしか無いと、己自身に言い聞かせる。

       

      (動きに気付ける今、一気にキメるしかない!!)

       

      先に述べた通り。

      彼一人では、決定打となる一撃を放つことが出来ない。

      ここまでのお膳立てをしても、ただの格闘やプラズマブレイドでは仕留め切れる確信には至らない。

      根本的なリーチの問題もあるが、何より攻撃力が足りるかどうかが一番の問題だった。

      故に。

       

      「トール!!」

      「――解ってらぁ!!」

       

      今出せる手は、今全て出す。

      ユウキの呼び声を至近で聞いたトールが、その身から電気を放出し始める。

      一見すれば単なる仲間割れ、自殺行為。

      だが、彼等にとっては明確な協力行為。

       

      樹海の中を進んでいく中で、彼等は偶然にも同伴することになったドゥフトモンから、道中こんな事を聞いていたのだ。

       

      『君達、仲は良いのか悪いのかイマイチ掴めないけど、息は謎に合うね』

      『俺達のどこが仲良しに見えんだよ。こんな世間知らず馬鹿のギルモンと俺の何処が?』

      『あのなぁトール、単にお前のツンデレがドゥフトモンにもバレバレなぐらい解りやすいってだけの話じゃばばばばばば!!』

      『はいトール、ツッコミにいちいち電撃放たないでね。……というか、加減してるのか知らないけど案外平気そうだねユウキも』

      『はぁ。まぁいつもの事なので……』

      『いやうん平気とは言ったけど本当に何事も無かった風な振る舞いされると普通に怖いんだけども。……うーん、そこまで電気に体が慣れてる……というか馴染んでるなら、いっそそれも利用してみれば?』

      『あん? 利用って何の話だ』

      『だから、君の電気をユウキの必殺技に重ねるんだよ。必殺技と必殺技を重ねて、より強い一撃を放てるようにするんだ。都合良く、ユウキの方も電気の属性の技を使えるみたいだし、難しくはないと思うよ』

      『……そんな都合良くいくか? というか、必殺技同士が重なり合うとか、ちっともイメージ出来ないんだが』

      『そう珍しいことではないよ。相反する属性の技なら少し難しくもあるけど、同じ属性の技は簡単に混ざり合う。コンビで活動してるデジモンなんて、それをコンビとしての売り文句にしているぐらいだしね』

      『……ふーん? もしかして、ロイヤルナイツの中にもそういう事が出来るやつがいるのか?』

      『まぁね。そういう、連携を重んじるデジモン達は、その手の特別な必殺技のことを、こう呼ぶんだ――』

       

      エレキモンの電気が、人のカタチに留められたグラウモンの体に流れ込む。

      流れ込んだ電気が、両肘のプラズマブレイドに更なる力として重なっていく。

      青白かったプラズマは、赤色を帯びてより激しく鳴り響き、刃の大きさそのものを延長させる。

      これこそが、ユウキとトールが力を重ねた結果生まれた新たなる刃。

       

      「これが俺達の……」

      「連携技《クロスコンボ》だ!!」

       

      電気の力によって更に力強く跳躍し、肥大化した雷電の刃を構える。

      白き凶器の人型には、回避の術が無い。

      その身は確かに高速移動に適したもので、反応がやっとの速度を出す事など容易いが。

      転じて、一度出した速度を落とし、飛翔した方向とは真逆の方へ同じ速度で動くのには少し時間が掛かる。

      そして、その『少し』は近距離での戦闘において致命的な隙となる!!

      間合いは決定的に詰まり、そして言霊は紡がれた。

       

      『双電重襲斬《エレクトリックメガブレイド》!!!!!』

       

      空気が弾ける音が瞬きの間に連続する。

      赤と青のプラズマの巨刃が白き凶器の人型を捉え、その両腕の刃と僅かに拮抗するが、やがてプラズマの巨刃が刃の両腕を押し始め、

       

      「グ……くっ……!?」

      『斬りッ、裂けェェェェェェェッッッ!!』

       

      二人の叫びと共に、拮抗は終わる。

      プラズマの巨刃が敵対者の両腕の刃ごとその胴体を切り裂き、絶叫を吐き出させる。

      直後に爆発が起き、その姿は爆煙に覆われ見えなくなった。

       

       

       

       

       

       

       

       

      「はぁ……はぁ……」

       

      敵を仕留めた。

      そう確信、いや願いながら着地をした深紅の竜人は、息も絶え絶えといった様子だった。

      ただでさえ追い詰められた状況で、限界に近しい力を引き出したのだ――ここまでの道程も込みで、疲弊していない方が異常だと言える。

      半ば賭けに等しい選択から導き出した結果ではあるが、現実に上手くいった事に内心で安堵する。

      振り返り、敵を仕留めた証とも呼べる爆煙に念入りに視線を向けると、その背にしがみついているエレキモンのトールが声をかけてくる。

       

      「……おい、大丈夫かユウキ……?」

      「……なんとかな。まったく、アウェーな戦いにも慣れたものだけど、流石にしんどいって……」

      「ハッ、そんだけ言えるなら大丈夫だろ……ホント、ピンチの時だけは役に立つよな」

      「一言余計だって」

       

      こんな時だけはちゃんと褒めてくれるよな、という言葉を内心に隠しつつ、ユウキもまた言葉に応じる。

      とはいえ、そもそもこの戦いに勝つことが彼等の最優先すべきことではない。

      追撃から逃れられないその事実から強いられていただけで、二人がこの町に足を踏み入れた理由は別にあるのだから。

      故に、ユウキはトールの事を背負ったまま、近くに落ちていた鋼鉄の剣を改めて掴み取り、その場を後にしようとして、

       

      その声を聞いた。

       

       

       

      「――やってくれるな」

      「「――ッ!?」」

       

       

       

      ありえない。

      いや、ありえてはならない声があった。

      爆煙の中から、両腕と胴部を大きく損傷した様子の白き凶器の人型が立ち上がるのが見えた。

      まだ、生きている。

      動くことが、出来ている。

       

      (……嘘だろ。今のは全力だったつもりだぞ……!? どんだけ頑丈なんだ……!!)

      「ブレイドクワガーモンの、このクロンデジゾイドの装甲じゃなければ。そして機械の体じゃなければ、今ので死んでただろうな。まったく……」

       

      平気というわけではないのだろう。

      ダメージが無いというわけではないのだろう。

      だが、生きているという時点で二人にとっては絶望以外の何者でもなかった。

      既に体力も底をついている状態、そして竜人への変化があとどのぐらい継続するのかが解らない状態で、未だ底の見えない敵と戦わなければならない事実。

      事実を並べれば並べるだけ希望が見えない状況だ。

      身構え、次の手を必死にユウキが考えていると、しかし意外にも白き凶器の人型――もとい人型の形を成したブレイドクワガーモン(?)は仕掛けて来ようとはしなかった。

      彼はため息でも吐くような調子で、こんな事を言う。

       

      「同類という時点で、想定は高く見るべきだったか。まったく、予定通りとはいかないものだよホント」

      「……同類だと? おい、まさかお前……」

      「まぁいい、そろそろ潮時だ」

       

      重大な意味を含んだ言葉があった。

      だが、その真偽を確かめる間も無く、電気を体から発したブレイドクワガーモンの体が宙に浮く。

      その体の周囲に、ユウキと同様にノイズのような何かが生じたかと思えば、瞬きの間にその身は人型のそれではなくなっていた。

      一本のナイフに眼球とクワガタムシのハサミを取り付けたような、電気を脚代わりとする鋼鉄の蟲――ユウキの知るブレイドクワガーモンそのものの姿になったのだ。

      見る見る内に、ユウキとトールの手が届かない高度にまで上がりながら、人の形を成していたブレイドクワガーモンは言葉を紡ぐ。

       

      「狩れなかったのは残念だが、まぁ仕方無い。リベンジの機会を楽しみにさせてもらおう……次があればだが」

      「……!! おい、どうしてこんな事をしやがった!? この町のデジモン達に何か恨みでも……!!」

      「恨みなんか無いさ」

       

      そうして彼は回答した。

      それがお前たちの勝利の戦利品代わりだとでも、言うように。

       

      「試し打ちと経験値稼ぎが出来る場所が欲しかっただけだ。じゃあなご同類、生き残れたなら仲間にするのを検討しておいてやるよ」

      「誰がお前みたいなヤツの……おい待てッ!! 同類って、攻略って、どういう意味だ!! 逃げるな答えろぉッ!!」

       

      それ以上の回答は無かった。

      鋼鉄の蟲は燃え盛る橋の惨状など無視し、閃光と化しながらその場を後にしていた。

      二人の力では、とても追い着けはしない。

      逃げられたと言うべきか、見逃されたと言うべきか。

      判断に困る決着と重大な事実を前に沈黙していたユウキに対し、トールは渇を入れるように耳元で怒鳴る。

       

      「おいユウキ!! 疑問は後回しにしとけ!! 今はベアモンのやつを……!!」

      「――くっ……あぁ、解ってる!!」

      (そうだ、今はあんなヤツのことで時間食ってる場合じゃない!!)

       

      先にも述べた通り。

      強敵を相手に生き延びたからと言って、彼等の目的が達せられたわけではない。

      ただでさえ、時間の経過と共に移動出来る経路が縮小しつつある状況なのだ。

      最優先すべき事案を見誤ってはいけない――そう思って視線を先の道へと向けると、その声は聞こえた。

       

      「――ユウキさん!! トールさん!!」

      「!! ホークモンに、ハヅキさん!?」

       

      依頼主であるレナモンが進化した銀毛のキュウビモンことハヅキと、その背に乗っている依頼の護衛対象であるホークモン。

      二人もまた先走ったアルスを、そしてそれを追う自分達を追ってきたのだと今更のように理解し、トールは一緒にいないもう一人について問いを出した。

       

      「アンタ等まで来たのか。……レッサーは?」

      「レッサー殿は敵の足止めをしてくれているのでござる。それよりも、アルス殿は?」

      「まだ先だと思う。死んではいないと信じたいが……」

      「急がなければならない。また件のミサイルが飛んできたら、どの道ここで全滅してしまうでござる」

      「……そういや、さっきのクソ野郎が潮時だとか何とか言ってたな。クソったれ、そういう意味かよ……!!」

       

      もう時間が無い。

      考えるまでもなく当たり前の事実を前に、ここまで来る事になったそもそもの理由である相手は何処にいるのか――そんな事を考えていると、

       

      「――みんなっ!!」

       

      その張本人が、予想外にも自分から踵を返してやってきた。

      いっそ、自分自身よりも仲間達の方を心配してきたとでも言わんばかりの声色で呼ばれ、思わず怒りを覚えそうになりながらも、ユウキは声の主――ベアモンのアルスへと言葉を返した。

       

      「ベアモン!! 無事だったのか!?」

      「今はそっちじゃないでしょ。他のみんなと一緒に早く脱出しないと!!」

      「……チッ、あぁそうだな!! だがお前この棚上げ野郎後で色々と説教は覚悟しとけよ!?」

      「はいはい解ってるから!! ……まぁ記憶に無いことになるだろうけど(ボソッ)」

      「何か言ったか?」

      「何も!!」

       

      いっそ、違和感さえ覚えるレベルでいつも通りな調子のやり取りの直後であった。

      警戒心と共に夜空へ目を向けていたホークモンが、叫んだ。

       

      「ッ!! 見えました!! 来ます!!」

      「走れッ!! 湖に向かって飛び込むんだ!!」

      「レッサーは!? 足止めしてるのなら、このままだと……!!」

      「あの方にも見えてはいるでござろう!! 今は無事に脱することを信じて、自分の身を最優先にすべきだ!!」

       

      走る、走る、走る。

      燃え盛る橋の上で、倒壊した建物に塞がれていないルートを急ぎ見つけ出し、通り抜けていく。

      橋という構造でありながら横幅は広く、故にこそ町として十分に機能していたのであろう残骸だらけの道を進み、

       

      「間に合え……」

       

      そうして、その時はやって来た。

       

       

       

      『間に合えええええええええええええええええええええッ!!!!!』

       

       

       

      幾度かのミサイルが、天観の橋に着弾する。

      爆炎が撒き散らされ、残骸を吹き飛ばし、その一帯に存在していた全てのものを塵に還していく。

      絶滅の名を冠した凶器は、その名の通りに役割を果たした。

      真夜中、今この時をもって、一つの町は完全に崩壊し。

      そこに、デジモンは一匹たりともいなくなった。

       

      湖の水の冷たさを感じ、水面から一つの惨劇の終わりを見届け、自らの無力を思い知らされながら。

      暗雲広がる彼等の冒険の、一日目は終わった。

       

      ◆ ◆ ◆ ◆

       

      僕は暗がりの中にいた。

      橋の上に造られた街で、無様に何も出来ないままデビドラモンに倒されて、死んだはずの僕を待っていたのは、もうすっかり見慣れてしまった真っ暗闇。

      意識を失った時、眠りに就いた時、いつも僕の目前には最初にこれが広がっている。

      同じ暗がりでも、死んだデジモンのデータの行き先と言われている、ダークエリアのそれとは違う。

      死んだデジモンの意識がどうなるのかを、実際の体験として知ってるわけじゃないし、そんなことを知ってるデジモンがそもそも存在するのかも知らないけど、いつも見ているものと同じであるという時点で、僕はぼんやりと思うだけだった。

       

      あぁ、また僕は生き残ってるんだな、と。

      誰も守れなかった役立たずの分際で、自分だけ助かっているんだな、と。

       

      昔からそうだった。

      直前の状況から、どう考えたって自分は死んだと確信出来る状況になって、意識を失ってしまっても。

      夢から醒めて、現実に叩き起こされてみれば、降り掛かった死など最初から無かったかのように、僕は生き延びてしまっている。

      誰かに助けられたのか、死ぬ原因のほうが勝手に離れていったのか、無意識の内に僕自身が何かをしたのか、原因なんて解らない。

      解っていることは、少なくともそうなった経験が一回二回では済まないという時点で、僕の生存は奇跡でも偶然でもないということぐらい。

      この目で現実を直視しているはずなのに、どこか夢の中にいるかのように感じられて、たまに自分が視ているものが現実のものなのかどうか、わからなくなる。

      起きる事が既に決まっている完成済みの絵本や文を目にしているだけで、自分というデジモンが本当はそこにいないかのような、そんな仲間はずれのような錯覚。

       

      どの方向に進めば良いのか判るはずもないままじっとしていると、これまたいつも通りに景色が変わる。

      殆ど黒一色の暗闇の中に絵の具でもぶちまけるように、あるいは絵本のページをめくるかのように目いっぱいに広がる黒の色が取り払われて、代わりに見慣れた風景が目の前に広がっていく。

      どこでも変わらない青空の下、太く大きな白い樹木の生える丘の上に、レンガで造られた建物がいくつか建っている村。

      周辺が森になっている発芽の町よりも住まいとなる建物や住民の数は少ない代わりに、学校や教会といった『教育』のための施設が整っていて、活気は同じかそれ以上に沸き立っていたその村は、僕が産まれてそう経たない頃に住んでいた、いわゆる故郷というべき場所だった。

       

      『ワニャモン、おはよー!!』

      『あ、カプリモンおはよー』

      『おーい! 早く行こうよリーフモン!!』

      「わー!! まってまってよぉー!!」

       

      そこでの一日は、基本的に同じことの繰り返し。

      朝にはいつも決まった時間に起こされて、決まった時間に学校にみんなで集まって挨拶をして、その後には夕日が見えるぐらいまで勉強の時間を過ごして、夜にはそれぞれの住まいで寝る。

      その繰り返しの果てに、知識と正義感を培った住民が、やがて正義感を胸に外の世界に踏み出していく。

      僕も、そんな先輩のデジモン達を羨ましいと思ってたりしていた。

      自分もいつか、胸を張って旅立ってみたいなって。

       

      『いんべりあるどらもん、いちばんかこいよねー!!』

      『えー!! うぃざーもんがいちばんだったよー!!』

      『みんな「おこさま」ですねー!! おめがもんがいちばんだったにきまってるじゃないですかー!!』

       

      発芽の町では、主に成長期のデジモン達が経験を得て自立して仕事持ちになれるように、ある程度行動の自由が与えられている。

      誰かの許しを得ないまま外出して、帰りが遅くなっても、少し注意を受ける程度で、問題にはしない。

      こういうのを、ホーニンシュギって言うんだっけ? まぁ大怪我とかして帰った日にはめちゃくちゃ叱られた覚えもあるんだけども、これが発芽の町における『教育』の形なんだと僕は受け取っている。

      まぁとにかく、同じことを日々の中で繰り返すという点では、僕の故郷は現在住まわせてくれている発芽の町と似ているものだった。

      異なるのは地形と、そもそもの『教育』の方向性。

       

      『悪を倒し、世界を平和にする。それが選ばれし子供達の使命であり、そんな選ばれし子供達を守護し戦い抜いたのがパートナーデジモンなのです』

      『へぇー、せんせー!! ぼくたちもなれるかなー!! この、えほんのニンゲンやデジモンたちみたいな、カッコいいヒーローに!!』

      『えぇ。私達の言うことをちゃんと聞いて、良い子にして育っていけばきっと、あなた達も書物に名を残すほどの勇者になれるはずです』

       

      答えから述べてしまうと、どんな経緯があれこの村で育つことになった子供デジモンたちは、物語の中で語られるような『選ばれし子供』のためのデジモン――パートナーデジモンになれるような、立派なデジモンに育つことを求められる。

      世界のために戦えるように、自分よりも弱い者を守り抜けるように、悪を挫ける『良い子』であるように、と。

       

      そのために、学校ではニンゲンにまつわる伝説などが記された書物の中身を、聞いたり読んだりする。

      僕を含めた子供達は当時、誰もそれ等が記された書物が何処から見つけられたのかとか、そもそもそれに記された物語が事実なのかとか、そういうことをいちいち疑ったりはしなかった。

      だって、それが本当のことなら凄いことで、それと同じになれることはとても立派で名誉なことだって思えていたから。

      きっと、教える側のデジモン達からしても、それが真実か嘘かは大した問題じゃなかったのだと思う。

      あくまでも、物語は指標。

      こんな風になれればいいな、これが正しくてこれが悪いんだ、と少しでも思わせることが出来たのならそれで十分なんだろう。

      実際、当時の僕だって、物語に出てくるニンゲンやパートナーデジモン達の活躍を文字や絵で知って、こんな風になれたらいいなと羨ましく思っていながら、それが本当であるかどうかまでは重要視していなかった。

      弱くて、小さくて、脆くて、それでも不思議な力で進化をしたパートナーと共に悪者に立ち向かう。

      そういうことがあったという文字列が、臆病でしかいられない僕にとってはとても光り輝いて見えたんだ。

      勇気を貰った、と言い換えてもいい。

      だから、僕も含めた子供デジモン達は頑張った。

      厳しい勉強も鍛錬も、ただ「立派なパートナーデジモンになるため」という夢のためになら、頑張れた。

      顔も知らない誰かの勇気になれるように、友情を築けるように、愛情を向けられるように、知識を蓄えておくために、誠実に生きられるように、純真を忘れないように、希望であるように、光を灯せるように、優しく在れるように。

      折れた樹木や大きな岩を叩いたり押したり、本を読んだりその内容について考えたり、まぁ色々なことをした。

      今になって振り返ってみれば、しばらくは遊びと言えることをしたことはあまりしたことが無かった気がするが、そのことについて当時から不満などを覚えたことは無かった気がする。

      理由は単純で、鍛錬と勉強そのものが僕らにとって意識的に遊びと同じ位置づけになっていたからだ。

      物語の中のカッコいい主人公たちの活躍を読んで、凄いな憧れるなぁ――そんな感想を抱きながら、それに近付けるようにと没頭することに、僕らはどこか楽しさを覚えていた。

      それこそ、鍛錬の疲れが気にならないほどに。

       

      『すごいよね』

      『カッコいいよな〜』

      『あんな風に進化してみたいなぁ』

       

      そんな感想がちょくちょく口に出る事も珍しくなかった。

      そこにいるのが自分だったら、と夢想してしまう程に、僕を含めた子供達はこの村が集積していた物語に惹かれていた。

      幼年期のワニャモンから成長期のベアモンに進化して手足が生えてからは、村の先生をしているダルクモンっていう綺麗な格好のデジモンに読んでもらうだけじゃなくて、自分から空いた時間を作っては読書をしていた。

      そうしている内に、同じように人間の物語に惹かれていた子供――特に、手足が無くて本のページを捲れない幼年期の――デジモン達も、僕の読書に同席するようになったりもして、時には夜更かししちゃって叱られたりもしたんだ。

      ちゃんと決まりを守らないと悪い子になっちゃいますよ、と。

       

      『こらっ、貴方達。また夜更かしをして……いけませんよ!! そんな風にいつまでも続けては悪い子になってしまいます!!』

      『げっ!! ……ごめんなさ〜い』

      『……今げっ、とか言いやがりましたかベアモン?』

      『言ってませ〜ん!! もう少しでいい所が読み終わるからあとちょっとだけ……』

      『そーだよ!! いまきめらもんとのたたかいがいいところなの!! なんかよくわかんないけどまぐなもんがでてきて……』

      『はいはいそういうのはまた明日!! はい、全員ベッドの中にヘブンズ送還ーっ!!』

      『んゃーっ!?』

      『ベアモンーっ!!』

       

      で、毎回毎回、見回りのピッドモンやツチダルモンにバレては逃げ回ったりしてたんだ……逃げ切れた時なんて一度も無くて、いつも他の子達ともども抱えられて住まいに戻される。

       

      『いてててて!! 離してってばピッドモン!! 逆さに抱えるのやめてーっ!!』

      『少しは痛い目を見ないと反省しないでしょう。まったく、これで何度目ですか? 元気が有り余ってるのは結構ですが、こんな暗さになるまであそこで読み物だなんて、こんなことをいつまでも続けていては流石に成長を阻害してしまいますよ』

      『えへへ……ごめん。どうしても続きが気になっちゃってぇ……夢中になっちゃってぇ……』

      『……やれやれ。ここまで読み物に惹かれるとなると、もしかしたら貴方はウィザーモンかソーサリモン辺りに進化するのかもしれませんね』

      『悪者から大切な誰かを守って死ぬかもってこと?』

      『夢中になりすぎです』

       

      でも、そうして聞くことになる叱りの言葉は、どれも僕達のことを心配してのものであるように聞こえて、怒られていると解っていながら僕は嫌な気持ちにならなかった。

      むしろ、そういう反応見たさで、ちょっといけないことをしようとしていた側面もあったと思う。

      良い事をすれば褒められて、悪い事をしたら叱られる。

      当時の僕にとって、そして故郷の村にとってはそれが当たり前のことで、それが続いたからこそ楽しいまま時間は過ぎていったんだって今も思っている。

      ……そんな時間が終わりを告げたのは、ベアモンに進化して二十数回ぐらいの数、日が落ちた頃のことだった。

       

      『おや、寝不足常習犯のベアモンですね。いつも思いますが、眠くないのですか?』

       

      その日、鍛錬と授業の後に読書をして、そうしている内にいつも通りに日が落ちて夜になったから、いつも通りに自分の住まいに戻って眠りに就かないといけなくなった。

      夜空では黄金の満月が顔を覗かせていて、鍛錬と読書で疲れを覚えているはずなのに体中が元気なままという錯覚すら覚えながら、戻るために村の中を歩いて。

      そうして村の中を歩いて移動している途中、村の中の見回りを担当しているデジモンと鉢合わせになったんだ。

      そのデジモンの名前は、ダルクモン。

      微かに金色の帯びた白い翼と鉄の剣を備え、綺麗な衣装に身を包んだ、天使デジモン。

      村で、成長期にまで進化した子供デジモン達に向けて、主に戦闘技術に関する『教育』を担当しているデジモンだった。

       

      『えへへ、本を読んでるとそういう細かいの忘れちゃって……』

      『まぁ、私はピッドモンほど厳しくする気はありませんので、叱ったりはしません――二日前の時のように、学びの最中に眠りなどしない限りは』

      『あ、あはは……ピッドモンから聞いたのそれ……?』

       

      基本的に優しくて、落ち着いてて、村の成熟期デジモン達の中で一番の人気者。

      子供達にとっても当時の僕にとっても、そういう認識だった。

      少なくとも僕は、そういう風に振舞うダルクモンの姿しか知らなかった。

      その日も僕への注意が終わると、優しげな表情と共にその場を後にしようとしていたんだ。

       

      それまでの日々と変わらないやり取り。

      だけど、その日は――満月が照らすその日は、僕の知らないところで何かが違ったんだと思う。

      いつものようにその場を後にして、別の場所を確認しようとしたダルクモンは、ふと足を止めると、夜中でよく見えないはずの僕の顔を怪しげにじーっと見てきたんだ。

      突然のことに疑問を覚えながらも、僕も(特に意味も無く)ダルクモンの目をじーっと見返していた。

      そんな、奇妙としか言えない状態のまま数秒が過ぎた時、突然ダルクモンは表情を一変させて、

       

      『……!? ベアモン、その眼は……その色の異なる両目はなんなのですか?』

      『? なんなのですかって……?』

      『……その眼は、この覚えのある感覚は、まさか……っ!!』

       

      まるで。

      僕のことがベアモンとは違う別の――何か恐ろしいデジモンに見えているかのような、恐怖を帯びた顔で、叫んでいた。

       

      『――貴様ッッッ!!!!!』

       

      言葉の直後だった。

      最初、僕自身何が起きたのかを理解出来なかった。

      目の前が突然見えなくなってしまったのだから。

      けど、直後に駆け巡った目元の激痛で、嫌でも何が起きたのかを知ることになった。

       

      僕は、ダルクモンの剣で両方の目を切られた。

      それを知覚した途端にら痛みは更に強さを増して、僕は泣き出していた。

       

      『何故……何故!? 旧世界で消え果てたと聞いていたのに……よりにもよって、貴様が……何故ッ!?』

      『――ぅ、ああああああああ!? 痛い、痛いぃ……っう……!! ダ、ルクモン……なんで……っ!?』

      『……っ、その眼を――あの方を堕とした眼を私に向けるなッッッ!!!!!』

      『……ひっ……!?』

      『――どうしたんだダルクモン!? っ、ベアモンその目の傷は……!!』

       

      何も。

      わかる事なんて無かった。

      当時の僕には、どうしていきなりダルクモンが豹変して僕の眼を切り裂いたのか、その理由が少しも考えられなかった。

      異常に気付いたピッドモンがダルクモンと言い争いをしていたみたいだけど、その内容も激痛のせいでろくに頭に入ってこなかった。

      理解が出来た事は、一つ。

      痛みの中、血混じりの涙を流す僕の前で、僕達子供デジモンに色々なことを、教えていた背の高いデジモン達が慌てた様子で言葉を発しあって、そうして決まったこと。

       

      『……しばらくここに入ってもらう。呪われたその眼と声が、悪を増やさないように』

       

      僕は。

      その日から、村にとっての悪者になってしまった。

      いったいどこに作られていたのかのかも知れない、天井から少しの光が差し込むだけの場所に放り込まれた。

      ……そして、傷付けられた眼は、朝日が昇った頃にはすでに治っていた。

       

      『出してっ、ねぇ出してよっ!! ピッドモン……!! もう夜更かしなんてしないからっ、ずっと良い子のままでいるから……っ!!』

      『…………』

       

      お願いをしても、誰も返事さえ返してくれなかった。

      質問を飛ばしても、答えが聞けることは無かった。

      見張りとして誰かがいる、ということだけは気配とニオイで知覚出来たけど、殆ど一人ぼっちになったのと変わらない状況だった。

      誰も僕の声を聞いてくれないし、姿を見ようともしてくれない。

      出来たことは自問自答のみ。

       

      僕が悪い事をしていたからこうなったのか、と自分の中で答えを出すのに、時間はそう掛からなかった。

      頭の中で、ダルクモンに言われた言葉が繰り返されていた。

      その眼を向けるな、と。

       

      『……この、眼が……』

       

      水面のように、自分の今の顔を映すものが無かったから、具体的にどうなっているのかは解らないままだった。

      だから、何が悪いのかについて、その時は聞いた言葉から考えるしか無かった。

       

      『……この、眼が……ッ!!』

       

      潔白であるという証拠。

      何をすれば良い子だと信じてもらえるのか。

      幸いにも、それを実行出来るためのものが檻の中にはあった。

      少し丸みを帯びた、小石が。

      ……必然、感じることになると解りきっている痛みを前に恐怖を覚え、そして短くはない時間の後に僕は行動していた。

       

      『――あああああああッ!!』

       

      僕は、小石で自分自身の眼を抉り潰した。

      漏れ出る血に涙を混ぜながら、いっそ必死になって繰り返した。

      あまりの痛みに、意識が飛んだこともあったっけ。

      結論から言って、それは無意味な行為だった。

      小石を使って潰したはずの眼は、ある程度の時間が経つと勝手に治って、僕に閉じられた景色を見せるばかりで。

      寂しいだけの時間、目を潰した回数が左右共に十回に届いた頃になって、ようやく僕は気味の悪さと共にどうしようもない事実を思い知らされた。

       

      僕は、化け物。

      物語の中で語られる、悪者のような、おぞましい、何かであると。

      今も、毎晩毎晩、こうして夢の中で突きつけられる。

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    • #3935

       完璧に分断されていた話がやっと交差を始める。魔術と科学が交わる時物語は始まると言いつつ割と魔術サイドは魔術サイドで科学サイドは科学サイドで断絶している禁書を嘲笑うかのように……。なんか優しそうな天使が突然豹変して寝返って攻撃してくるのは世の摂理。アルスが至った姿に加えて“あの方を堕天させた”って口ぶりからして、まあ正体はつまりアレなんでしょうとは思いますが。
       それなら目が無限再生するのも納得ですがそれはそうと目潰し多すぎて眼窩がヒューヒュー寒気に見舞われるぜ。
       
       ちょうど三場面に分かれてレッサーどう見ても死んだろコレそれぞれの強敵と相対してバトル、結果的にですがギリギリ退けられるレベルの相手とぶつかり合ったことで彼らを育成してしまった。それはそうとエアーナイフ聞いて一発でブレイドクワガーモンと見抜くの実力者過ぎる。トールは見事にやられ役を演じつつも、最後に友情(?)の合体攻撃要員としてしっかり活躍、こういうところが憎いぜ。メガログラウモンを出さず敢えて人間に近い姿になる、というか元々人間だった頃を忘れかけていた頃にしっかりそれを活かしてくるのは不意を突かれました。
       敵の目的は飽く迄も試し斬りということなのでこの時点では不明なのか。とはいえ、雑賀サイドの方ももう一度見返してみれば何か見えてくるものがある気がしなくも無いです。
       
       デビドラモン死んだ! 何故だ!!

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