ドレンチェリーを残さないでep21

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      「メモリを使い、七尾さんを襲った犯人であり、才谷選手に特訓をしていたカミサマと呼ばれるデジモンは、娘の重美さんであると……」

      猗鈴から聞いた結論を、天青はそう繰り返した。

      「いや、でもですよ。自分の父親ですよ? 幾らなんでも見間違えて襲ったりするでしょうかね?」

      「カミサマが重美さんなのは、姫芝も最初にカミサマに会った時からわかってると思ってた」

      そうこともなげに言う猗鈴に姫芝はえっと一歩引いた。

      「最初からって……」

      「『そうか、探偵か』、ディコットで乱入した時にそう言ってたし、依頼のことを知ってたのは私達を除けば七尾さんと重美さんだけ。ディコットと乱入者を結びつけられるのは、基本的にはその二人しかいない」

      「……あっ」

      「その時点では、依頼主の七尾さんがカミサマな可能性も考えていた。でも、凍傷を自分でつけるのは難しいし、才谷選手があまりに庇うことで重美さんだとわかった」

      「え? 才谷選手の反応で自演の可能性が消えるの? なんで?」

      「七尾さん自身がカミサマなら、庇う理由がないです。七尾さんが探偵を使って追ってるんですよ?」

      七尾さん自身がカミサマなのに探偵を雇ったならば、そこには意図がある。理由を知らなくとも、庇うことが逆に邪魔にもなるかもとは考えられる。

      「あー……うん」

      「いや、おかしくないですか。猗鈴の理屈だと、才谷選手はそもそもカミサマの正体を知ってないといけなくなりますよ」

      「デジモンは全身凶器同然で、その相手も知らずに特訓なんて普通からできるわけがないから……で、合ってる?」

      天青が猗鈴の代わりに答えると、猗鈴は深く頷いた。

      「はい」

      「……でも、彼女がプロボクサーのスタイルを変更させる程の特訓ができるんですか? 腕に障害だってあるんですよ?」

      「その前は優秀なボクサーだったんだよ、姫芝。トレーナーさんが彼女の怪我の話をした際、七尾さんが見た方向には中学生の女子ボクシング大会のトロフィーがあった」

      そして、と猗鈴はスマホの画面に映った中学生の重美と、女子中学生大会全国準優勝の文字を見せた。

      「ボクシングのことはわからないけど、才谷さんのことを支えてきてよく知る上に、素養も知識もある、そこにデジモンの身体能力が加われば、特訓相手になれておかしくないんじゃないかと」

      「特訓ができるかはともかく、発言を踏まえると七尾さんか重美さんだけ、七尾さんが被害に遭ってることを考えると有力なのは重美さん。これだけでも重美さんを疑うには十分ではある。この後はどうする?」

      「重美さんがもうメモリを使う気がなくなってるなら、あの時に提案したちゃんとお別れをしておしまいというのは、七尾さんを納得させる為のもの。それを終えたところでメモリを回収して終わりじゃダメなんですか?」

      「それができるならね」

      メモリの依存性は強い。重美はデメリットを知ったぐらいでメモリを手放せるのか、という話。

      「……でも、私は信じたいです」

      「戦闘の準備はしつつ、説得から。そういう順番にすればいい」

      天青の言葉に対し、猗鈴も杉菜も頷いた。

       

       

      「そういうわけだからカミサマ、これで最後にしよう……」

      その日、カミサマと向き合った才谷の言葉は、どこか棒読み感があった。猗鈴と杉菜はは神社境内の茂みに隠れてテレビ通話で七尾にその様子を中継していた。

      「わかった……」

      青い盾のデジモンはそう頷きかけて、ふと、猗鈴の方を向くと何か思い付いたらしく、変身を解いた。

      メモリを使っていたのは猗鈴の推理通り重美で、そして今、正体を明らかにしたのも、猗鈴の推測の方が現実に合ってたことを意味した。

      「重美!? 何をして……」

      「ヒロちゃん、ヒロちゃんはカミサマの私のこと、必要だよね……?」

      重美はそう言うと、才谷の手を取って猗鈴達の方にずんずんと歩いてきて、カメラのレンズに顔を近づけた。

      「お父さん、ヒロちゃんの為にはメモリが必要なの。ヒロちゃんの相手できる人がうちのジムにいる? いないでしょ?だから私、私しかいない」

      そう言って、杉菜の手からスマホを取り上げる重美の肩を才谷が掴んだ。

      「やめろ、重美! 昨日はもうやめようって……」

      「ヒロちゃんのせいでしょッ!!」

      そう言って、重美は才谷の手を振り解き、怒りのままにスマホを投げつけた。

      「ヒロちゃんがさぁ! 私の夢を奪ったのに責任も取らないのが悪いんでしょッ!!」

      その言葉に、才谷の表情はサッと曇った。

      重美は曲がりきらない肘を見せつけた。高校時代に才谷を庇って、障害の残った肘。

      「……ヒロちゃんを取って、ボクシングを喪った。なのに、ヒロちゃんさ、前にチャンピオンへ挑戦するって時期とかさ、ファンの子とデートしてたでしょ」

      その言葉に、才谷は、でも付き合ってもないしと呟いた。

      「私はさ、元選手だとしても男じゃない。肘曲がらないからスパーリングパートナーもできない。栄養とかさそういうの調べて料理とかしててもさ、この肘のせいで手際が悪くなってる部分も感じて……でも、治らないんだよね」

      杉菜にはその不明瞭な物言いで、何でメモリを手放さないかがわかった。

      「……私よりヒロちゃんのトレーナーに向いてる人で、やりたい人がいっぱいいる。私よりヒロちゃんの体調管理に向いてる人もいっぱいいる」

      それがなければ生きていけない程依存してるし、

      「ヒロちゃんの女って立場にもおさまれないなら、私はただの重荷じゃん」

      副作用で死ぬことも緩慢な自殺として許容してしまっている。

      『ティアルドモン』

      片目から涙を流しながら、重美は肘にメモリを挿した。

      重美の体が変化していく。両腕に盾と爪、裏腹な二つをつけ、頭と胴体と二つの顔があるデジモンに。

      その姿に驚く理由もないのに才谷は声が出なくなっていた。

      「……姫芝」

      「わかってますけど、ひとつだけ聞きたいことがあります」

      そう杉菜は言うと、重美に向けて歩き出しながら口を開いた。

      「重美さん、あなたは七尾さんだとわかって襲ったんですよね?」

      その言葉に、猗鈴はちらりと杉菜の顔を見た。その顔は悲しげな確信に満ちていた。

      「……そう、わかってた。そうしたら、私がジムを乗っ取れるもの」

      「そして、ジムを畳むつもりだった」

      杉菜はわかっていたようにそう引き取り、重美はそれを否定しなかった。

      「……わけわからねぇ、なんで重美がオヤジさんを……」

      才谷の言葉に、重美は首を傾げた。

      「そうでもしなきゃヒロちゃんが私達親娘から解放されないじゃない……? でも、でもできなかったッ!!」

      そう声を上げて重美は爪を地面に向けて振り下ろした。

      「時代遅れの元チャンピオンの、古臭くてまともなスパーリングパートナーもいないところに所属してちゃ、ヒロちゃんがダメになる! まして、日常的に怪人が暴れて人が死ぬ街にあるんだよ!? ヒロちゃんのお父さんお母さんだってそうだし! 夜のランニングがここより怖い街が他にある!?」

      地面に深い爪跡を残しながら、重美は声を荒げ続ける。

      「……だから、お父さんもヒロちゃんに依存する私も置いて行って欲しいの」

      重美、才谷は思わず名前を呟いた。

      「でも」

      すると、重美はその両手を才谷に向けて伸ばした。

      「ヒロちゃんと一緒にいたいの」

      重美はゆっくりと才谷を両の手で包み込もうとする。

      「ヒロちゃんがチャンピオンになる時に一番そばにいるのは私であって欲しいし、私のことを思って欲しい、チャンピオンになれなくてもダメになっても、それこそ私の曲がらない肘なんて比じゃない、物を掴むことも難しいぐらいになっても私のそばにいて欲しい」

      その動きに、才谷はまた何も言えなくなって、重美と名前を呟くしかできなかった。

      「私の夢とか未来とかあげたんだから、ヒロちゃんも私に未来をちょうだい?」

      いいよねと、狂気を孕んだ目で重美は才谷に迫る。

      『ザッソーモン』

      「猗鈴、行きますよ」

      『サンフラウモン』

      「待ちすぎ」

      杉菜がベルトを腰に巻いてメモリを挿し込むと、猗鈴もそれに続く。

      「「変身」」

      猗鈴の肉体はその場でくしゃりと植木にもたれかかる様に倒れ、杉菜の肉体はディコットへと変わった。

      それを横目で見て、重美は才谷に伸ばしていた手を引くと、苛立ったように爪を構えた。

      「……探偵さん達、依頼料は払うからもうほっといてよ。邪魔しないで、私は人を殺してるわけでもなんでもない! ただ、ヒロちゃんを好きで仕方ないだけなの!!」

      「「お断りします」」

      ディコットの口から猗鈴と杉菜二人の声で同じ言葉が紡がれる。

       

      二人の様子をベルトを通じて喫茶ユーノーでモニターしてた盛実は思わずペロッと舌を出した。

      「初回変身時のメモリ出力は初回想定より低い値に収まってたけど……今は不安定だけど、最高で最終目標ラインに近い出力が出てる」

      その言葉に、天青は助勢に行く為に取り出した銃をことりと机の上に置いた。そして、エンジェウーモンメモリをなんとなく掴み、つぶやいた。

      「敵を倒したいじゃなく、目の前の人を助けたいと思ったから二人の心が合ったのかな」

      今のセリフ、この後ディコットにカメラ戻って挿入歌か主題歌流れるやつじゃない? という盛実にかもねとだけ返して天青はショックを受けてるだろう七尾のフォローに向かう為、喫茶ユーノーを後にした。

       

      先に動いたのは重美だった。怒りに任せて無造作に爪を振り上げて殴りかかる。

      それに対して、ディコットは身体を半回転させながら爪の攻撃をかわすと、拳を胴体に叩き込んだ。

      「カ、ウンターしてくるなんて……ふざけたことを……」

      そう呟いて、重美はファイティングポーズを取った。

      両手の盾は触れれば凍りつく、爪は体格差もあってディコットの胸を貫くには十分な長さもある。格闘において体格差は簡単には覆らないのも重美は知っていた。

      「やめろ重美! 人を傷つける為にやってきたんじゃねぇだろ!」

      才谷の言葉に、一瞬ピクと反応するも、重美は構えを解かない。

      「猗鈴」

      「わかってる」

      ディコットは臆さず前に踏み出した。そして、思いっきり拳を振り上げた。

      あまりにもわかりやすくすきだらけの大振り、重美はカウンターを誘ってると判断して様子見の為に盾を前に出した。

      拳が盾に止められ、凍りつく刹那に、その拳から眩い光が漏れた。

      「この前のビーム……ッ」

      受け止めたその場所からさらに押し込まれるその威力に、重美はぎぎと歯ぎしりをする。

      以前は放たれていたビームは、炎のような淡い発光体となってディコットの両手を覆っていて、当然凍りついてもいなかった。

      「あなたの気持ちはわかるなんて言えない、でも、それじゃいけないのはそこにいる才谷選手の顔を見ればわかる」

      猗鈴はそう呟き、一度手にまとった光を消した。

      「重美、俺は負目があるからオヤジさんのジムにいるんじゃない。父さん母さん、オヤジさんにお前との楽しい思い出があるからいるんだ」

      才谷は。そうぐっと拳を握りながら話す。

      「この街なら、いろんなところに楽しい思い出がある。大好きなお前やオヤジさんが応援してくれるからボクシングも楽しいんだ……言いたいことがあるなら最初から言えよ!!」

      その叫びに、重美は涙を流しながら悲鳴のような雄叫びのような歓喜のような言葉にならない叫び声を上げた。

      そして、その激情を向ける為にディコットを見て、駆け出した。

      「だけどぉ! わたしはぁッ!!」

      その叫びを聴きながら、ディコットはメモリのボタンを押した。

      『スクイーズバイン』『サンフラウビーム』

      ディコットの左脚が伸びてバネ状になり、その場で急激に跳び上がる。

      振り下ろした爪をすかされ空を見上げた重美の首に、空から指が伸びて巻き付いた。

      「ぐっ!?」

      落下に加えて指の戻る勢いで加速しながら、ディコットは眩い光をまとった右脚を高々と掲げる。

      せめて受け止めようと向けられた両腕の盾を粉砕しながら踵は深々と突き刺さり、突き刺さった場所から蔦が伸びて重美を覆っていく。

      「……取り返しがつかないことになる前に、話し合う方がいいですよ」

      杉菜の言葉が終わると、ティアルドモンの身体は光と共に爆発。そのあとには重美と壊れたティアルドモンのメモリだけが残った。

      すぐに才谷が重美に駆け寄り、意識がないのを確認すると抱え上げた。

      それから盛実が連絡して才谷はタクシーで重美を警察病院に、猗鈴と杉菜はあえてディコットの姿のまま神社に残った。

      「……いるんでしょう、王果」

      杉菜の言葉に、社殿の裏からひょっこりと大きなキャリーバッグを持った王果が顔を出す。

      「見てたよ、つーちゃん達の新しい姿。なんて呼べばいい?」

      「ディコット」

      ディコット、なるほどねと口にした後、王果はキャリーバッグを開いて中に雑に詰められたデジメモリのメモリーカードの山を見せた。

      「つーちゃんが組織を抜けたのは、私を倒そうとする組織の人達から聞いてたから知ってたけど、その姿じゃ進化はできないの?」

      杉菜がメモリを進化させた、ということも謳歌は組織の人間から聞き出したらしかった。

      「……まだ、できない」

      「そっか、まだなんだ。なら、少なくとも今はディコットはやめた方がいいよ。それじゃまだ私に勝てない」

      そう言って、王果は赤いメモリをボタンを押さずに胸元に突き刺す。

      『シャ』『シャウ』『シャウトモ『シャウト』

      手を離したのにも関わらずメモリのボタンはカチカチと勝手に動き、そう電子音声が鳴り始める。

      「オメガシャウトモンの私に勝てないんじゃ、幹部には勝てないよ」

      そう呟くと、メモリの色が赤から金に変わっていく。

      『オメガシャウトモン』

      特徴的なV字形の頭を持ち、全身をなめらかな金色の金属で覆ったシャープな竜人へと王果の身体が変貌していく。

      「王果、何がしたいんですか? あの時みたいにおそろいだよって言いにきたんですか?」

      杉菜は、そう問いかけた。

      「何がしたいか? 何がは知ってるでしょ、つーちゃん。応援したいんだよつーちゃんを。私が負けたら自首する、私が勝ったら……とりあえず貸しにしとくね」

      ノコギリのような歯列を剥き出しにしながら、無邪気に王果は微笑んだ。

      「姫芝……」

      「大丈夫、猗鈴。大丈夫です」

      杉菜は、ディコットの変身を解いた。

      「そう、それでいいよ。見せてよ、今できる最強の姫芝杉菜を、なりたいものに今度こそなろうとしてるつーちゃんを……!」

      そう言われても、杉菜はディコットドライバーではないベルトに手をかけることもなく、ディコットドライバーさえ懐にしまってしまった。

      「どういうつもり?」

      「……王果を説得するなら、これが最強の私。私は、王果を止めたいんであって戦いたいんじゃない。私は、王果が誰かを傷つけずに生きていく道を探りたいんであって、何もできないように縛り付けたいわけでもない」

      そう言って王果に近づいていく杉菜を、猗鈴は止めるべきか一瞬迷ったが、止めないことにした。

      「話し合おう、王果」

      ついに王果の元に辿り着いた杉菜は、そう言って王果の金属で覆われた冷たい手を取った。

      「……私が思うより、ちゃんとヒーローしてたんだね。つーちゃん」

      王果はそう言うと人間の姿に戻り、キャリーバッグを閉じた。

      「私はつーちゃんがつーちゃんのやりたいことをやれてれば、その間は刑務所ででも大人しくしてるよ」

      まぁ死刑確実だから、ずっとは見てられないけどねと王果は笑った。

      「王果、付き添いは要りますか?」

      「いや、いいよ。一人でいく、一人で行きたいな。つーちゃんはもう猗鈴ちゃんに取られちゃったし……」

      「取ったつもりはないですが」

      「でも、ちょっと前までは私がつーちゃんの一番だったのに、今は何人もいる助けたい人の一人でしょ?」

      「……王果はずっと特別ですよ」

      「私にとってはもっとつーちゃんは特別だけどね」

      王果はそう言ってその場を去ろうとして、そうそうと振り返って、一本の金色のメモリを杉菜に投げ渡した。

      「織田とかいう組織の幹部、殺しといたよ。病み上がりのリハビリ中みたいだったから、多分大して影響ないけど」

      金のメモリにはブリッツグレイモンの文字があった。

      「それと、私にシャウトモンメモリを渡した女にも気をつけて」

      「組織の人間ですか?」

      「関係はあるんじゃないかな、でも素性は知らない。血の匂いがしたし、私なんかにメモリ渡して組織潰させようとする辺り何考えてるかわからないよ」

      猗鈴と杉菜の頭に浮かんだのは、吸血鬼王の姿だった。

      じゃあね、と王果は当たり前のようにすたすたと歩いてさっていき、杉菜はそれを追わなかった。

      「……本当に自首すると思う?」

      「しますよ、王果なら」

      杉菜は猗鈴の疑問をあっさりと切り捨てた。

       

       

      久しぶりに手にかけられた冷たさを感じ、王果は警察署を歩きながらふふと笑った。

      「何がおかしい?」

      「……留置所でも取調室でもない部屋に向かってるのがまずおかしい」

      自分と繋がった女性警官に王果はそう答えた。

      「それに、小林公竜警視だか警部だかは来ないの? 私が暴れ出したら誰が止めるのか……」

      「もちろん私達が止める」

      そう言ってその警察官はデジメモリを見せた。

      「……そういう感じね。自首するのやめていい?」

      王果は心底つまらなそうな顔をして、足を止めた。

      「手錠かけられた身でなにを……」

      王果は口をモゴモゴさせたかと思うと、舌の上に乗せたデジメモリを女性警官に見せた。

      肉体が変形する過程の不安定な状態を利用して手錠から抜け出し、変身するとすぐに警官の手に持ったメモリを奪い、すねを蹴り砕く。

      「ぎゃッ!?」

      悲鳴を上げて思わずうずくまったその頭に王果はデコピンをして脳を揺らす。

      そして、素早く踵を返してもと来た道を戻ろうとし、ふと悪寒を覚えて振り向いた。

      役員用の会議室の扉が開き、何人かの警察官と一緒に出てきた明らかに警察官じゃない女、その女に背を向けたくないと謳歌は感じた。

      背を向けてはいけない、隙を見せてはいけない、そして何よりも先に頭に浮かんだのは、杉菜の顔だった。

      「……自首しにきたんじゃなかったの?」

      女の、吸血鬼王の言葉に王果は答えない。

      『ジークグレイモン』

      王果が手を開いて構えると、どこからともなく電子音声と共に金色のメモリが飛んできて手に収まる。

      そしてそれを即座に胸へと挿した。

      「考えが変わった、つーちゃんに何かする前に殺す」

      オメガシャウトモンの姿の上に同じ金色の重武装が重なっていく。

      「……でもね、あなたは既に私の目を見て、私の声を聞いた」

      その言葉の後、脳に襲ってきたものに王果は思わずその場に膝をついた。

       

       

       

       

       

       

      あとがき

      読んで頂きありがとうございました。ちょっと前から若干燃え尽き気味夏バテ気味のへりこです。というわけで解明編でございました。

       

      ではでは、また次回、次が一週後か二週後かはわかりませんが、どうぞよろしくお願いします。

    1件の返信を表示中 - 1 - 1件目 (全1件中)
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    • #4013

       他に比較する場所が無いぐらい夜出歩くのすら危ない街、住民に自覚あったんかいいいいいいい!!
       犬も歩けばメモリ犯罪に当たりそうな危険過ぎる街でしたが、ハードボイルドに「街を泣かせた……」とキメてくれる探偵がいない辺り風都よりヤバかったのかもしれません。住民までこの街ヤバいよ早く出て行った方がいいよ的な認識があるのを思うともう末期である。いや以前それっぽい前フリはされていましたが、人知れず実質ナレ死で退場していった織田さんも含めて悪も正義も最早逃げ場が無さ過ぎる。
       
       前回の時点で「むっ、これ何モンだ……?」と思っていましたがティアルドモンだった。盾のイメージが強くて全身刃という攻撃的な印象が無かったのでこれは意外なチョイス。重美さんは世が世ならあだち充漫画のヒロインになれそうな逸材ながら、メモリによって精神汚濁されているのか親身な幼馴染と危険な女ヤンデレを行ったり来たりしながら迫ってくる恐怖。しかし才谷さんは男であり漢だった……!
       
      >『ザッソーモン』
      >「猗鈴、行きますよ」
      >『サンフラウモン』
      >「待ちすぎ」
       蝶・オサレ。OPのアレンジBGMがかかる奴!
       そのまま王果サン乱入するもまたヤンデレか戦わないことで戦う覚悟を見せた姫芝によって撤退。浅倉威宜しく口の中にカードメモリ仕込んで拘束から逆転という最早人が信じられなくなる策で大立ち回りを演じるも、いや待て警察内部に普通にいるのかよとなる恐怖の展開で轟沈。
       もうこの街に安全な場所なんて無いんだ!!

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