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これは、デジタルワールドで語られる勇者の伝説である。
希望の勇者は天使に似ていた。それはそれは美しいニンゲンの女であったという。
橙に燃える太陽を宿した竜と共に、魔王に蝕まれし世界を駆けた。魔王というのは、闇より出でし7つの罪、その内の強欲を宿した翁であった。
魔王はその業に従い目に映る全てを欲したが、とりわけ宝石の類をよく好んだ。
緑柱石の鐘
黄金の月長石
蠱毒の紅玉
橄欖石の実
火山竜の蒼玉
貝の火の社
異界帝の黄玉
瑠璃の絵画
天使の石榴石
酒神の紫水晶
生きた藍玉名だたる玉石は、皆々魔王の蒐集品。
これらが魔王の手に渡るまでに、大勢、デジモン達が死んだ。故に勇者は、天使に喚ばれた。魔王の暴虐を誅せんと。
髪はヤタガラモンの濡れ羽色。瞳はジュレイモンの皮の色。
しかしその顔立ちは天使に似て、誰しもに称えられたという。故に勇者は、希望となった。
故に勇者は、希望と、その名で呼ばれるようになった。数多の激しい戦の末、数多の哀しい犠牲の上。希望の勇者は魔王の城へと辿り着いた。
絵に描いたような豪華絢爛。目に痛いほど飾り立てられた城の最奥にまで。黄金の玉座にて希望の勇者を迎えた魔王は、初めに勇者を褒めそやした。
なんと美しいニンゲンの女。
なんと強いデジモンを連れた女。魔王は勇者を、永劫輝く金剛石に例えた。
即ちそれは、誘いであった。希望の勇者に、我が手に堕ちよと。希望の勇者は、唯一、魔王の望みには応えなかった。
故に勇者は、世界に希望の名を残すに至る。希望の名で称えられる通り。勇者は、見事魔王めを撃ち滅ぼした。
しかし恐るべきかな魔王の執念。
務めを果たした希望の勇者、寿ぐ天使に見送られ、元いた世界に帰らんとしていたまさにその時。
死に体の魔王、杖に寄りかかり、しかし天使の護りなどものともせず、勇者の下へと辿り着く。かくして魔王は、希望の勇者最後の奇跡、橙よりもなお熱い、白焔纏いし慈悲の騎士との死闘を演じ、そうして終いには相打った。
希望の勇者を称えるが良い。
永劫その名を語り継げ。永久に輝く金剛石のように。魔王は最期に、今一度。希望の勇者を褒め称えた。
しかして希望の勇者は悲しみに暮れた。
共に苦楽を共にした橙の竜は、魔王の手により死んだのだ。失意のままに、希望の勇者は世界を去った。
願わくば、橙の竜が最後の悲しみであるように、と。悲しい希望を天使に託して。希望の勇者の悲しみは、ヤタガラモンより黒い翼のオルディネモンとなり、しかし世界に羽根の1枚も残す事無く、何処か遠くへ飛び去っていったという。
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